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- 2023/01/11 掲載
これからもっと服は売れなくなる?「ユニクロ・無印良品」以外はかなり厳しい理由
【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
薄利ビジネスから脱却できるのか?
薄利多売と言われ続けてきたアパレル業界でも、利益を出す仕組みを構築できている企業も存在する。その代表例が中国発の越境EC企業「SHEIN(シーイン)」だ。同社はSNSやAIによるデータ分析を駆使したデジタルマーケティングを実施している。SNSなどから消費者の購買動向を把握し、流行の服を短期間で開発するなど、デザイナーの感性によるデザインや企画を捨て、徹底したデータ分析に基づく商品企画を行っている。これがムダを作らない商品供給の仕組みとなり利益につながっている。
また、広州にある300社以上の製造工場と自社のサプライチェーンをデジタルでつなぐことによって、超多品種小ロット生産を最速3日間で製品化できるようになっている。これが、国境を越えて直接消費者に届けることができる同社の強みを支えている。
一方、アパレル業界最大手の企業と言えば、ZARAなどのブランドを抱える「インディテックス」だが、同社の取り組みも目を見張るものがある。
ZARAも従来のアパレル業界の常識である「見込み生産」から脱却し、「受注組立生産」に移行しており、市場が必要とする商品だけを2~4週間で供給できるサプライチェーンを構築している。また、店頭での販売実績だけでなく消費者の試着情報などを分析し、これを商品企画部門にいち早くを伝え、需要に合わせて商品を作り足し、商品を世界88カ国に48時間以内でのスピード輸送を行っている。
これら取り組みによって、日本のアパレル企業にありがちな「セールによる大量の値下げ販売」を減らし、プロバー消化率(定価で販売できた商品の割合)を高め、高い収益率を確保しているのだ。
ユニクロ(ファーストリテイリング)も製造小売業に「情報」という文字を付け加えた「情報製造小売業」へ転換することを掲げ、サプライチェーン全体の最適化を目指している。具体的には、店頭の販売数量や消費者動向などの情報を分析し、商品の企画・製造につなげる仕組み作りを行っている。その一環として、米グーグルとの提携も行っている。手法は異なるが、ZARAと考え方は同じである。
これらの企業に共通するのは、市場の変化に対応するために、デジタル化を事業戦略の柱にしていることである。そしてアパレルビジネスと親和性の高い人間の感性やセンスに頼る部分を捨て、データ分析を判断の軸にしたことがポイントにある。
【次ページ】環境問題で広がる「不買運動」、主要大手の対応とは?
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