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  • 2022/11/29 掲載

【緊急解説】ツイッター・メタ・アマゾンが「大規模リストラ」を進めるホントの理由

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米国のIT業界でリストラの嵐が吹き荒れている。各社が大規模な人員整理に踏み切ったのは、米国で景気悪化懸念が台頭したことだが、それだけが原因ではない。過去20年、ネット業界は社会のIT化と歩調を合わせ、破竹の勢いで業容を拡大してきた。ここに来て、一連の進化に陰りが見えてきたことも各社の判断に大きく影響している。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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ツイッター・メタ・アマゾンなど、米国IT業界でリストラが進んでいるが、その原因とは何か?
(写真:ロイター/アフロ)

ツイッターをはじめ各社が大幅な人員削減を決断

 今回のリストラで、多くの人に衝撃を与えたのは、やはり米ツイッターのドラスティックな人員削減だろう。著名実業家で電気自動車メーカー・テスラのCEO(最高経営責任者)を務めるイーロン・マスク氏は、2022年10月27日、約440億ドル(6兆1,000億円)の巨費を投じツイッターを買収した。マスク氏は11月4日にCEOに就任するや、全世界に7500人いた従業員の約半数をいきなり解雇してしまった。

 ツイッターは、現時点でも巨額の赤字を垂れ流している状態であり、企業経営のセオリーとしては、すぐにでもコスト削減に踏み切る必要があった。加えてマスク氏は過激な性格で知られており、言論空間としてツイッターが担う役割を変える方針も宣言していた。こうした点を考慮に入れると、この大胆な人員整理はレアケースに見える。

 たしかにそうかもしれないが、ほかの企業でも相次いで人員整理が行われており、大規模なリストラそのものはツイッターだけの話ではない。フェイスブックやインスタグラムを手がける米メタは、全体の約1割にあたる1万1000人の人員削減に踏み切っているし、すでに新規採用を凍結していた米アマゾンも人員削減を実施するとの報道が出ている。

 各社が人員整理を行っている背景には、ここ数カ月の間に急速に高まってきた米国の景気後退懸念がある。

 米国を中心に世界各国はオイルショック以来のインフレに悩まされており、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、インフレを抑制するため急ピッチで金利を引き上げている。金利の引き上げは、分かりやすく言ってしまうと、銀行からお金を借りにくくして、意図的に経済活動を縮小させる政策である。あえて景気を犠牲にすることで物価上昇を抑制するという考えなので、当然の結果として米国の景気は悪化する。世界経済は基本的に米国が牽引してきた現実を考えると、来年以降、世界経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性が高まってきた。

 景気悪化の逆風を受けるのはIT業界に限ったことではないが、ほかの業界と比較して、先端的なIT業界は特に影響が大きい。その理由は、先端的なIT企業の経営というものが、基本的に株高と広告収入に依存しているからである。

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米IT企業各社が人員整理を行っている背景には、ここ数カ月の間に急速に高まってきた米国の景気後退懸念がある
(Photo/Getty Images)

景気悪化懸念がIT企業の株価を直撃する理由

 GAFA(巨大IT企業 米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム)に代表される、先端的IT企業の株価は総じて高く推移してきた。金融工学上の解釈では、企業の株価(企業の時価総額)は、当該企業が得られる将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いた額になる(DCF法)。IT企業の時価総額が極めて大きかったのは、爆発的な成長が今後も続き、将来、大きなキャッシュフローを獲得できるという市場の期待値によるところが大きい。

 ちなみにDCF法によって企業の時価総額を計算する際、割引率をいくらに設定するのかによって、結果は大きく変わる。一般的に安全資産である国債の金利が割引率の基準値として使われることが多く、金利が低いと割引率が小さくなって時価総額が増え、逆に金利が高いと割引率が大きくなり、時価総額が小さくなる。言い換えれば、金利が下がると株価が上昇し、金利が上がると株価は逆に下落するという関係が成立する。

 GAFAのような企業の場合、将来の期待値が極めて大きいことから、金利に大きく左右される。

 たとえば、2022年初頭に約331ドルだったメタの株価は、11月中旬には111ドルまで落下した。同社の益利回り(利益で投資金額を回収する場合の利回り:株価収益率の逆数)を計算すると年初には4.2%だったが、11月中旬時点では12.4%まで上昇している。年初の益利回りは現時点での米国債の利回りに近い数字であり、ネット企業というリスクの高い投資であることを考慮に入れると、国債と同じ利回りでは到底、割が合わない。

 年初の段階から一部の投資家は、国債の利回り上昇(つまり米国のリセッション)とメタの業績悪化を織り込み始めており、株価はリーズナブルな水準を目指して下落が始まっていた。年末になって株価の動きに企業経営の現実が追い付き、同社は大規模な人員削減に追い込まれたという図式である。

 先端的なIT企業は、将来の期待値が高く、それによって株価が上昇し、圧倒的に有利な条件で資金調達が可能だった。だが、将来の期待値を最大限活用するためには、景気の見通しも明るくなければならない。金利は景気動向を示す指標のひとつであり、金利の上昇はIT企業の株価を直撃する結果となる。

【次ページ】どうなるGAFA? 景気悪化の影響とは

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