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- 2023/05/25 掲載
【独自】マッキンゼーに聞く「DXの成功レシピ」とは? 日本企業が取り組むべき4つの重点領域
日本企業のDXは成長も、大きな課題を内包している
日本能率協会の調査によると、DXに取り組んでいる日本企業の割合は、2020年の29%から2022年の56%へと、ここ3年で大きく前進しさまざまな事例が生まれました。たとえば製造業では、2019年に継続収益(リカーリング)が約5割になったソニーのケースです。ソフトウェア産業にシフトし、「モノからコトへ」の進化を遂げたのです。
小売でもファーストリテイリングのように「消費者の欲しいものをすぐ届ける」ような体制を整えた例や、銀行代理業に参入し「JRE BANK」の開始を予定しているJR東日本のように「サービス産業が金融業を始める例」もあります。金融ではデータを活用した防災・減災に取り組む東京海上ホールディングス、ヘルスケアではデータを活用して新薬創出のスピードを上げる中外製薬など、多様な業界で先進事例がみられます。
こうした動きは非常に良いことですが、課題もみえてきました。日米を比較すると、その差が顕著なのは、「DXへの取り組み方」です。米国は全社戦略に基づいて全社で取り組んでいる割合が最も多いのに対し、日本はその割合が低くなっています。部門単位での取り組みに留まり、全社的な取り組みになっていません。
その結果、日本企業のDXは「一部の業務のデジタル化」「一部の部署の生産性向上」に留まり、売上高(トップライン)の成長や新たなビジネス創出やモデルへの転換にはつながっていないケースが多いのです。
実際に、サービス、営業・マーケティングなどの領域別にデータ利活用による売上増加の実績を日米比較すると、5%以上の売上増加を達成した企業の割合は、米国のほうが圧倒的に多いという結果になっています。これが、日本企業のDXが現時点で抱える最大の課題であると考えています。
現状についてまとめると、現在の日本企業のDXは、デジタル化によるコスト削減や生産性向上といった「本業の足腰強化」に取り組んでいる段階です。したがって、今後は「本業の再定義・変革」「本業を超えたイノベーション」へと全社および事業戦略をシフトしていかなければなりません。このシフトに合わせて、組織能力やテクノロジーの強化を追随して進めるのが良いと考えています。
全社戦略が先に来て、それに合わせて組織、テクノロジーがついてくるという順番です。
世界が直面する危機と「千載一遇のチャンス」
トップライン(売り上げ)をどうやって上げるのか。この課題は全世界で共通です。グローバルで約1,000人のCEOにインタビューした結果によれば、84%のCEOがイノベーションによるトップラインの成長が経営課題であると回答しています。さらに、80%が自社のビジネスモデルがリスクにさらされていると回答し、自社の成長に向けた取り組みに満足しているCEOは、わずか6%でした。
実に8割のCEOが既存のビジネスモデルに問題があるとみており、自社のビジネスを変えないと新しい価値は生まれないし、トップラインも上がらないと言っているのです。
現在、世界はサプライチェーンの問題、急激なインフレ、人材不足、消費者行動の変容などさまざまな危機に直面しています。ただし、デジタルを活用することで、こうした危機を千載一遇のチャンスに変えられると考えています。
たとえば、デジタルサプライチェーン、AIを活用した投資判断、従業員のエンゲージメント向上などにしっかりと取り組むことで、企業価値を上げられると思います。実際に新しいビジネスモデルを備える企業価値指標のマルチプルは高いという分析結果が出ています。
これは、リーマンショックのころを振り返ると明白です。リーマンショック後の景気後退期にDXによる企業変革に取り組んだ企業とそうでない企業では、景気回復期において売上と収益の伸びに明らかな差があったことがわかっているのです。今をチャンスと捉えて、回復期に向けて投資をしながら、DXを実行に移すことが重要です。
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