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  • 2007/03/29 掲載

【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第2回:大企業と中小企業の目的の違い

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中小企業の成長に避けて通れないのが会計システムの構築である。日常的に必須とされる業務を経営戦略に生かすことができれば、その企業は一段と飛躍できる。会社の仕組みが見えてくる会計システムについて、インストラクション 代表取締役社長 神田祐治氏が解説する。

第1回【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第1回:会計の基本知識と日次決算の意義
第2回【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第2回:大企業と中小企業の目的の違い
第3回【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第3回:部分最適と全体最適を使い分ける

結果主義と経過主義

 「結果がすべてだ」という考え方がある。途中のプロセスは関係なく、得られる結果だけを評価のすべてとするものである。これを結果(リザルト)主義という。

 サッカーを例にとろう。良いシュートを打ってもなかなかゴールにつながらないとき、インタビューアーに「いいシュートでしたね」と言われても、スランプぎみの選手は「結果がすべてですから」と答える。また、“ごっつぁんゴール”といわれるようなラッキーなゴールであっても、解説者は「ゴールはゴールですよ。結果が出れば、調子もよくなるでしょう」と言う。プロの選手は結果がすべてであり、それによってスタメンが決まり、年俸が上下する厳しい世界だ。

 現代社会では常に結果が求められる。結果のよしあしで企業は勝ち組と負け組とに簡単に分類されてしまう。企業経営者がいくら良い経営をしたとしても、結果(利益)を出せないと第三者からの評価は得られない。このような外的な価値から導かれる結果主義は、企業の目的を「利益」という成果(モノ)の獲得と規定する。

 「雨あがる」という映画がある。人を押しのけてまで出世することができない心優しい武士と、そんな夫を理解し支える妻の絆がさわやかに描かれている。この作品は「何をしたかではなく、何のためにしたかが重要である」というメッセージを伝えている。リザルト(結果)ではなくプロセス(過程)を大事にする生き方のほうが美しいというのだ。

 このような考え方を経過(プロセス)主義と呼び、内的な価値観から導かれる。企業の存在目的は「継続する」という意義(コト)そのものにあるとする立場である。「利益」を目標とはするが、目的はあくまで「継続する」ことと規定する。

 結果主義であれ経過主義であれ、どちらが企業経営にとって優れているかという比較はあまり意味がない。目的を達成するために、モノやコトの何を得ようとするかで行動は変わる。目的そのものが違うのだから優劣を論じてみても得るものは何もないといえる。

 企業の最大の目標は「業績の最大化と継続的な成長」であることに異論はないだろう。しかし、これを達成するためには相反する価値のバランスをとらなければならない。なぜなら業績の最大化は結果であり、継続的な成長は経過であるからだ。この2つを同時に得ようとすると矛盾をきたすことが多くなるから注意が必要である。

PDCAサイクルの重要性

【会計】PDCAサイクル
 ところで、経営管理の有力な方法にマネージメントシステムがある。品質マネージメント、情報セキュリティマネージメント、財務マネージメントなどに代表される標準化された規格のことだ。マネージメントは「管理」と訳されるが「やりくり」といったほうがわかりやすい。

 これらでは必ずPDCAサイクルを回すことが必須とされる。それぞれの規格の要求事項が数百あったとしても、たった1つのPDCAサイクルをまず回すことが重要であるとされている。

 PDCAサイクルは、Plan→Do→Check→Actionという4つのプロセスを経ることで小さなリザルトを出し、徐々に大きな成果を得ようとする実際的なオペレーションだ。

 このPDCAサイクルでは結果と経過が矛盾しない。なぜなら、小さな結果の最終形が成果であり、小さな結果には必ずロジカルな経過サイクルが含まれているからである。

 管理会計制度のみならず業務プロセス全体の品質や業績の向上にもこのようなPDCAサイクルが重要になる。このような業務改善のPDCAサイクルをいかに継続的に回していくかが企業の知恵のだしどころだ。

 情報システムと業務改善は結果主義と経過主義との関係に似ている。例えばERPパッケージを導入すればとりあえず会計制度が整う結果を得られる。しかし、業務改善を継続しないと、情報システムの成果のみが突出し、ERPパッケージを維持するためだけの別の作業が増えることになる。結果、期待した導入目的は達せられず、むしろ日常業務を圧迫することになる。片や、業務改善を優先して情報システムの構築を先送りにすると、面倒な手作業ばかりが増え成果が見えにくくなる。

 結果がすべてであっても、やはりキチンとした経過を経なければならず、経過を重視するにしても結果が出なければ意味がないことになるのである。

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