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- 2007/07/13 掲載
開源節流(2) 資金調達の段取り
≫開源節流(1)資金調達成功のポイント
前回、資金調達の種類や使途や目的やその調達方法をご紹介しました。それがわかったとして、次にどのような行動を具体的にとればよいでしょうか? 今回は中小企業やベンチャー企業を対象に、その具体的な段取りの方法について図示してみました。下図に沿ってご説明していきましょう。
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図 資金調達の段取り
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ステップ1 最低限の資料の準備
資金提供をお願いするにあたって、下記のような資料を最低限そろえましょう。
・定款
・登記簿謄本
・株主名簿
・事業モデル説明資料(決済モデル・マーケティングプラン・マーケティング分析など)
・短期の月次損益計画資料
・短期の月次資金繰り計画資料
・年次損益・資産計画資料(P/L・B/S)
・直近3期分の決算資料や事業報告・計算書類(旧会社法での営業報告書)
・直近の月次試算諸表(注1)
・直近の予算実績管理表(注2)
・来月以降の継続受注中のリスト(顧客名・受注金額)、その基本契約内容
・資本政策や株価算定書類(新株発行の場合のみ)
最低限と申しましたが、これらが即時用意できる企業がどれほどいらっしゃるでしょうか。中堅・大企業であれば当然管理されているはずですが、ベンチャー企業ではなかなか難しいかと思います。
とはいえ、資金調達活動をする場合には、最低限上記資料が必要となります。また、上記の資料は、それぞれが有機的に連携しています。つまり、1つずつが連携して数値が構成されているのです。そのため、適当につくってしまうと、数字のつじつまがあわない資料となり、それこそ信用問題ともなりかねません。
私が手がけた具体的な事例としては、以下のようなケースがありました。
・事業モデル説明資料の記載のもの以外の売上が、実績の大半をしめている
・事業モデルのKPI(重要指標)が何なのか明記されていない、また、計画数値がKPI中心に構成されていない
・資金繰り計画に対しての、予実管理がなされていない
・会社案内の役員と登記簿謄本の役員が一致していない
・予算に対しての実績値が、達成率が著しく悪い(たとえば、達成率30%など)
上記の準備資料を1度作ってしまえばあらゆる情報が盛り込まれているので、これらをきちんと準備できていれば資金調達活動に限らずさまざまな活動が即座に実行できます。また、上記はベンチャー企業に限ったものではなく、大企業内においては大規模プロジェクトで予算を確保する際に同様の資料が必要となるはずです。
これらの資料は、調達活動をするから用意する、というものではなく、日々の経営マネジメントにおいて生成されていくものです。改めて日々のマネジメント方法をも見直しをしてみるのもよいかと思います。
ステップ2 取締役会での決議
資金調達方法に合わせた決議をしましょう。資金調達方法として、融資を受けるのか、新株の発行をするのか、どの方法を採用するにせよ、経営上は非常に重要な判断が求められます。取締役会での承認をとり、議事録を取ること、新株発行であれば株主総会の承認も必要となります。これらの決議の議事録はステップ1の準備資料に追加されるものとなります。
未来予想では取締役会や総会の議事録の雛形をご用意していますので、ご活用ください。
ステップ3 要請
ステップ3では、調達候補先へのアポ・提案・資金要請をしましょう。ステップ2まで準備できて、はじめて外部との接触をすることをお勧めします。何ら準備をせずに接触をしてしまうと、追加資料などを要求され、つじつまをあわせたいがために、計画数字を変更せざるをえなくなることもあります。その結果、現実味のない“ウソ”の計画書ができあがる、ないし、まったくもってつじつまのあわない数値計画ができあがってしまう可能性があります。もしその結果資金調達ができたとしても、後々自分の首をしめてしまう結果になる恐れがあるので注意してください。未来予想が運営する資金調達支援サイトもあるので、ぜひ参考にしてください。
ステップ4 契約の締結
融資・投資でも同様になりますが、調達候補先から色よい返事がきたら、何らかの契約書を締結することになります。契約書の内容については、確実に目を通してください。時として、資金提供先が無用に権利の主張(権利の乱用)、交換条件などの事業協力などを求める内容が記載されていることもあります。
原則として、融資は金利を支払うことで対価を支払うものであり、新株発行は新たに株主として割り当てることで株主権利を提供する、という意味合いを持ちます。それ以上に過度な要求条項があるときには納得いくまで調整することをお勧めします。合わせて着金日の確認も必ずしてください。
ステップ5 着金確認・事後処理
着金があった場合には、適正な事務処理をしてください。融資であれば、その融資金額に見合った金利が発生することになります。それを必ず事業計画資料の中に反映していくこと、新株発行であれば、資本金が増加することになりますので、登記を適正に処理することなどの事後処理があります。
(注1)月次試算諸表
通常は月末締め翌月10日前後に前月の実績値を試算表として経理出力する。本文では、月次の実績結果の経理資料を意味している。
(注2)予算実績管理表
計画値と実績値との対照表、ならびにその分析や対処法コメント記載のもの。
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