• 2008/02/04 掲載

マイクロソフトがヤフーに買収提案 グーグル追撃の一手を考察する

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
2月1日、マイクロソフトは、米ヤフーに買収提案を行った。買収額は446億ドル、日本円で約4兆7500億円。マイクロソフトは以前、米ヤフーに対して2度、買収交渉を行っているが、米ヤフーが難色を示し、実現には至っていない。今回が3度目の交渉になるが、過去2度の交渉時と比較して、両社が置かれている状況は明らかに異なる。要因は、ネット業界の雄グーグルの存在だ。しかし、買収が実現したら、グーグルの一極集中に歯止めをかけられる可能性が高い。

マイクロソフトと米ヤフー、共通の敵

 マイクロソフトは1975年に創業、2007年6月期の売上高は511億2000万ドル、純利益は140億6500万ドル、 時価総額は2633億ドル(出所:ブルームバーグ/07.8.21)で、時価総額 世界第4位の巨大企業だ。パソコンの基本OSをはじめ、ワード、エクセルなどのソフトで圧倒的なシェアを誇る。創業者は、カリスマ経営者のビル・ゲイツ氏で、現在、CEOはスティーブ・バルマー氏が就く。ゲイツ氏は会長を務めているが、今年、引退する。

 マイクロソフトは、昨今、最新OS「Windows Vista」を、2兆円を投じて開発し発売、売上を着実に伸ばし、07年10-12月期の業績も好調を維持している。一見順調そうだが、課題も存在する。

 ネット部門の「MSN」は大幅に出遅れ、赤字が続く。米検索市場シェアも、9.8%と低迷している(クアルコム調)。また、主力製品となるワードやエクセルといったソフト市場には、昨今インターネットを通じて、無償で提供するサービスが台頭、脅威となる。モバイル分野では、携帯用基本ソフト「WindowsMobile」を提供しているが、競合も増えている。

 米ヤフーは1995年に創業。長らくネット業界の代表企業と言われていたが、昨今、シェアは22.9%と低迷。07年12月期の売上高は69億6900万ドル、純利益は6億6000万ドル。純利益は、前年の7億5100万ドルから減少した。07年夏、業績不振から経営陣を再編し、米ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤン氏がトップに就いた。しかし、確固とした戦略を打ち出せておらず、苦戦を強いられている。一方、日本のヤフーは、検索シェアナンバー1を獲得しており、業績も増収、増益を続けている。米ヤフーが展開していないオークション事業を手がけるなど、経営戦略上、独自の戦略を展開している。

 マイクロソフトと米ヤフー、この両社を追い込んでいる最大の要因は、ネット業界の雄グーグルの存在だ。
グーグルの強さ

 グーグルは1998年に創業。07年12月期の売上高は165億9300万ドル、純利益は42億300万ドルで、検索 市場のシェアは、58.4%と圧倒的な強さを誇る。グーグルは、業界にパラダイムシフトを起こし、トレ ンドを創出、シェアを拡大させている。

 ネット広告は従来、Webページに貼り付けるバナー広告が主流だったが、グーグルは、検索技術と 広告を組み合わせた検索連動型広告を導入。売上を拡大させた。また、マイクロソフトの本丸であるワードやエクセルといったソフト市場には、インターネットを通じた無償提供を07年に開始している。携帯電話市場には、同じく07年に、無償で基本ソフトを提供すると発表。インターネットは、パソコンから携帯電話へと移行しつつあり、携帯電話でもネット検索のシェアナンバー1を狙う。これらの展開は、マイクロソフトや米ヤフーに脅威を与える。それを裏付けるように、マイクロソフトは、「競合は、IBMではなくグーグルだ」と公言する。

 では、グーグルの強さはどこにあるのか。
 まず挙げられるのは、チープ革命を推進し、ユーザー主導のサービスを無償で提供できる技術力だ。グーグルの高性能の検索エンジンは、ユーザーの趣味趣向を学習し、把握、分析していく能力を持つ。それを活かした検索連動型広告では、ユーザーに、自身に適した広告を配信し、広告主には、自社製品・サービスに関心を持ちそうなユーザーへの訴求を可能にする。グーグル・アース、Gメールなどもユーザーに無料で提供する。その他には、情報共有マネジメント、優秀な人材の採用、創造的で自由働きやすい環境、多額のシステム投資等が挙げられる。
ジレンマからの脱却

 現在、マイクロソフト、米ヤフー、グーグルの3社を取り巻くネット市場は、グーグルの強さばかりに注目が集まるが、一方で、マイクロソフト、米ヤフーのつまずきも指摘できる。ハーバード大のクレイトン・M・クリステンセン教授が説く「イノベーションのジレンマ」である。マイクロソフト、米ヤフーは共に成功モデルを持つため、それが逆に革新への遅れを生じさせ、変化の波に乗り遅れたともいえるのだ。成功している企業が陥るワナとして、同教授が論文を発表している。

 マイクロソフトと米ヤフー連合が誕生しても、ネット事業の売上、検索シェアはグーグルにはまだ及ば ない。しかし時価総額では、グーグルに2倍もの差をつける。また、マイクロソフトは、米ヤフー買収の目的に、規模の拡大、研究開発の効率化を挙げている。効率化については、年間で約10億ドルが削減できるとしている。チープ革命への更なる推進となる。

 巨人グーグルの一人勝ちが叫ばれているネット業界だが、今回の買収により、両陣営は、ジレンマからの脱却を図り、グーグル以上にユーザー主導のサービス提供ができる可能性を秘める。その動向に注目したい。

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます