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  • 2008/04/17 掲載

2008年度IT業界も注目のコンプライアンスリスクとは?--ジュリアーニ・コンプライアンス 片山龍太郎氏

【ITキーパーソンインタビュー(13)】

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経営危機に陥ったマルマングループの再建から産業再生機構におけるカネボウなどの難解な大型案件まで、「企業再生の請負人」として活躍してきた片山龍太郎氏。同氏は、NOVA第三者委員会委員、グッドウィル・グループ社外取締役(2007年秋から)などを務め、現在ジュリアーニ・パートナーズ(前ニューヨーク市長、ルドルフ・W・ジュリアーニ氏が創設)の日本法人「ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン」で陣頭指揮をとる。同氏に、日本の経営層が持つべき理念やコーポレート・ガバナンスなどについて聞いた。
コンプライアンスや内部統制の「実践」には、
トップのリーダーシップが不可欠

ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン 片山龍太郎氏
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
代表取締役会長兼社長 CEO
片山龍太郎氏
──このところ企業の不祥事が頻繁に起きています。

 企業の不祥事が絶対数として増えているのではなく、表面化、露見しやすくなってきたのだと思います。現在、80%以上の上場企業で内部通報制度が用意されているといいます。適切な内部通報をした人を守る「公益通報者保護法」もありますし、雇用や労働市場の流動化が起きて、社内でも不正を見て見ぬふりをすることが少なくなってきました。

 一方、何か問題が起き、企業の市場価値が技術やブランドによって培われていた内在価値を下回ると、敵対的または友好的な買収者が現れ、経営権が流動化することもあります。

 日本も事前規制から事後制裁の方向に大きく変わってきています。行政・司法当局の反応を見ても、経営者の責任に対して以前より厳しい目が向けられています。たとえばコンプライアンスや内部統制の仕組みづくりをしなかったこと自体が、経営者として善管注意義務違反であると、裁判の判例にも明確に記載されるようになってきました。

──内部統制などの体制づくりは以前から企業側で行われています。これらがうまく機能していなかったのでしょうか?

 仕組みや形を作っただけでは、必要条件を満たしても十分条件にはほど遠いのです。それをいかに実践・運用するのか、あるいは会社全体に浸透させるかが重要になります。形式的に内部監査をする、内部通報制度を設けるだけで良いということではないのです。

 コンプライアンスや内部統制を「実践」していくには、トップのリーダーシップが不可欠です。取り組みの姿勢として、たとえば「日本版SOX法を最低限パスするだけでよい」というのでは、社員のモチベーションも上がりません。さらに経営者だけの問題ではなく、企業の経営理念や風土、文化などのソフト・ヒューマンウェア、構造・制度、意思決定の仕方、業務のプロセス、物理的な環境に至るまで、さまざまな組織要素が複雑に関連しています。そのため、コンプライアンスや内部統制は、一部の部署だけが担当するのではなく、「組織の総力戦」で取り組まなければならないと思います。

組織全体で「人徳」を

──元ニューヨーク市長ジュリアー二氏は経営者に6つの基本理念を説いているそうですね。

 経営者に求められる基本理念として「Integrity」「Optimism」「Courage」「Preparedness」「Communication」「Accountability」を掲げています。これらのうち、コンプライアンスとの関係性で大事なものを1つ挙げるとすれば、たぶん「Integrity」でしょう。とはいえ、これほど訳しづらい言葉もありません。あえて日本人に分かりやすく意訳すると「人徳」「人格」でしょうか。最近、経営論で「あの人は徳がある、人格者だ」ということをあまり聞かれなくなりました。誤解されると困りますが、清濁併せ飲むという意味ではなく、倫理的に「公明正大」である、そういうことを含んだ人徳や人格がコンプライアンスの基礎になると考えています。もちろん制度的に担保していくことも重要ですが、コンプライアンス上で問題を起こさない組織は、個々人が高い「Integrity」を持っているのです。

 「Optimism」は単なる楽観論や希望的観測でなく「人事を尽くして天命を待つ」、やるべきことをしたらクヨクヨしないこと。「Courage」は腹を決める「度胸」という意味です。すべきことをした上で、いつまでも分析するのでなく、どこかで決断する、それを促す力であると解釈しています。また、「Communication」能力の不足は、不祥事が発覚したときに、ステークホルダーやメディア対応での失敗につながります。日常でも社内・社外に対して明快なイメージを、一貫性をもって主張し続けること、相手にどのように理解されているのかを確認し、他人の意見を聞く双方向性のものであるべきです。「Preparedness」は「すべきことを準備すること」に加え、普段から不断のリスク管理をきちっと行い、危機に対して対応策をしっかり準備しておくことです。「Accountability」は説明責任ですが、「人に説明できないことはしない」ということで、コンプライアンスの柱のひとつであると考えています。

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