• 2025/07/11 掲載

OpenAI vs アンソロピック vs アップル、AI検索でどこが「勝者」となるのか

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消費者の検索行動に地殻変動が起きている。2025年4月、Safari経由の検索数が史上初めて減少した一方で、AIツール経由のトラフィックが前年比1200%増を記録。この激変する市場で、OpenAIはChatGPT Searchにショッピング機能を追加し、週間8億人のユーザーを武器に攻勢を強める。アンソロピックも検索APIをリリースし、企業向け機能で差別化を図る。そして最大の衝撃は、年間200億ドルでグーグルと契約するアップルが、AI検索への全面移行を検討していることだ。20年以上続いたグーグル一強時代の終焉となるのか。AI検索市場の最新動向を探る。
執筆:細谷 元

細谷 元

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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アンソロピックは5月、Claude AI向けのWeb検索APIをリリース。AI検索競争に本格参入
(Photo:Koshiro K/Shutterstock.com)

AI検索の台頭と既存検索ビジネスへの影響

 消費者の検索行動に地殻変動が起きている。従来の「とりあえずググる」時代は終わりを告げ、AIを活用した新たな情報探索スタイルが急速に広がりつつある。

 象徴的なのが、アップルのサービス部門責任者エディ・キュー氏が連邦裁判所で明かした衝撃的な証言だ。2025年4月、Safari経由の検索数が史上初めて前月比で減少したという。この現象についてキュー氏は「AI利用の増加が原因」と分析する。検索エンジンの代わりにChatGPTやPerplexityといったAIツールを使う人々が急増していることを示唆した。

 実際の数字がその変化を物語る。アドビの調査によると、2025年2月時点で米国小売サイトへのAIソース経由のトラフィックは前年比1200%増という驚異的な成長を記録。特に2024年のホリデーシーズンには前年比1300%増、サイバーマンデーには1950%増と、まさに爆発的な伸びを見せている。

 この変化は単なる一時的なブームではない。デジタルマーケティング企業のSOCiが1000人以上の米国消費者を対象に実施した調査では、月1回以上AIツールを利用する人が全体の19%に達し、さらに73%がソーシャルメディアでブランドを発見するようになったことが判明。従来の検索トラフィックが過去1年で10%減少する一方で、消費者は平均3.6のプラットフォームを横断しながら情報を探すマルチチャネル型の行動パターンへと移行していることが明らかになった。

 AIを使った検索の特徴は、その「会話型」のアプローチにある。Los Angeles Timesが紹介した67歳のキャロリン・ベネット氏の事例が興味深い。ベネット氏はChatGPTを使って、キッチンリノベーションの業者探しからヒートポンプの比較まで、複雑な製品比較を効率的に行っているという。「複数の機能を持つ製品を比較する際、AIは非常に役立つ」とベネット氏は語る。

 Capgeminiの調査では、消費者の68%がAIの推奨に基づいて行動する準備があり、58%が従来の検索エンジンよりもAIツールからの商品推奨を好むと回答。このように複数の調査レポートにより、検索市場における力学が根本的に変化しつつある状況が浮き彫りとなった。

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変わるグーグル支配の検索市場
(Photo:Koshiro K/Shutterstock.com)

OpenAIが仕掛ける検索革命

 AI検索分野でリードするのは、ChatGPTを擁するOpenAIだろう。同社は検索機能の強化に積極的な投資を行い、グーグルの牙城に挑戦状を叩きつける。

 2025年5月、OpenAIは「ChatGPT Search」にショッピング機能を追加したことを発表した。ユーザーが「2匹の犬用のコスチュームを探している」といった購買意図を示す質問をすると、関連商品をカルーセル形式で表示し、商品の詳細情報や購入可能なWebサイトへのリンクも提供する機能だ。

 特筆すべきは、これらの商品レコメンドが広告ではなく、ChatGPTが独自に選定している点だ。選定基準には価格、顧客評価、使いやすさといった一般的な要因に加え、ユーザーが過去に示した好みや指定した条件も考慮される。たとえば、ユーザーが以前「ピエロが苦手」と伝えていれば、ピエロのコスチュームは除外されるという具合だ。

 商品情報の充実にも力を入れる。ChatGPTは第三者プロバイダーから提供される構造化メタデータ(価格、商品説明)やレビューなどを活用し、簡潔で読みやすい商品タイトルや説明文を生成。「予算に優しい」「最も人気」といったラベルも、利用可能な情報に基づいて付与される仕組みとなっている。

 OpenAIは独自のクローラー「OAI-SearchBot」を展開し、検索結果の質・量を高める取り組みも進めている。これは検索結果にWebサイトをリンク・表示するためのものであり、AI基盤モデルの訓練には使用されないことを明確にしている。サイト運営者はrobots.txtファイルでOAI-SearchBotのアクセスを許可することで、ChatGPT検索に自社コンテンツを表示させることが可能となる。

 組織体制の強化も進む。2025年5月、OpenAIはインスタカートのCEOであるフィジ・シモ氏をアプリケーション部門のトップに招へいした。シモ氏は2019年から2021年までメタ(旧フェイスブック)でFacebookアプリの責任者を務め、その後InstacartをIPOに導いた実績を持つ。アルトマンCEOは「アプリケーション部門は、我々の研究が世界にどのように届き、恩恵をもたらすかを担当する」と述べ、次なる成長フェーズに向けた体制強化の意図を明らかにした。

 OpenAIはまた、マーチャントが商品フィードを直接提供できる仕組みの構築も検討中だ。これにより、より正確で最新の商品情報をユーザーに提供できるようになる見込みだ。週間8億人というアクティブユーザー基盤を武器に、OpenAIが検索市場でどのようなインパクトを生み出すのかが注目される。 【次ページ】アンソロピックもAI検索APIリリースで対抗
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