- 2025/12/12 掲載
流行語「どこで流行った?」声続出が示す……SNS「2026年の勝者」とは?(2/3)
“分断”こそが「小さな企業」の追い風となるワケ
私事になるが、2025年は中小企業やスタートアップ企業関連の団体から、SNSマーケティングに関する講演依頼をいただく機会が多かった。さらに、その一部は地方からの依頼だった。この傾向は、上に挙げたこととも関係している。人々のマスメディア依存度が低下し、情報接触行動の細分化、パーソナル化が進展していくと、企業が顧客に効率的にアプローチすることが容易になっていくことを示しているのだ。これは、テレビや新聞といった“一斉配信”に頼らずとも、SNSや検索を通じて、関心のある層に情報が届きやすくなったためである。
筆者の実家の鳥取県では、母が小さな飲食店を経営していたが、筆者がホームページとSNSの運用をしていた。経営者である母親は、以下の点から自力でホームページやSNSを運用するに至らなかった。
・ネットに対するリテラシーが低い
・リアルな接客に時間を取られて、ネットで情報発信する余裕がない
・費用対効果が見えづらい
飲食店に限らず、多くの中小企業は同様の状況であったように思う。逆にいえば、中小企業がSNSに対して積極的になりはじめているのは、上記のような阻害要因が解消されはじめたということを示している。
この変化は、これまで「SNSは苦手」とされてきた地方の個人店や老舗、中小企業にとって、むしろ追い風になり得る要素がいくつも重なっている。大企業と比べると不利に見える存在であっても、SNSの特性といまの環境がかみ合うことで、思わぬ結果につながるケースが各地で見られるようになってきた。
愛知の老舗石材店に注文殺到……SNS人気→“爆売れ”の法則
現在では、世代交代が進んだり、中高齢の経営者のリテラシーが高まったりしてきており、効率的に情報発信することが可能になっている。さらに、「TikTok売れ」に象徴されるように、直接的にSNSが売上に貢献するようにもなっている。さらに2つ加えると、
・広告・宣伝の予算が限られる中、メディアにお金を払って広告を出稿するよりは、SNSで情報発信する方が効率的
・自分から情報発信しなくとも、SNSでさまざまな評価が飛び交う状況になっており、もはやSNSの影響を無視できなくなっている
という状況がある。
意図しない情報がSNS上で飛び交う状況にある中、自分で少しでも情報を発信した方が良い状況になっているのだ。
愛知県岡崎市で墓石の製造販売を行っている稲垣石材店の取り組みについて紹介したい。なお、この事例は老舗企業の新規事業の成功事例として、多くのメディアで取り上げられている。
同社は、4代目の社長の稲垣遼太さん(34歳)は、石材で高級食器やインテリア商品を製作し「INASE」というブランドで販売している。
これらの商品をInstagram経由で情報発信したところ、フランスやシンガポールから注文が来ているという。
この事例から、SNSは新規顧客を開拓したり、商圏を拡大したりする上で有用なツールであることが理解できる。市場が飽和している大企業と比べて、中小企業の方がチャンスは大きいといえるだろう。
ただし、新たな市場を開拓する上では、競合環境もこれまでとは変わってくるという点に注意する必要がある。SNSで情報発信するのは良いのだが、競合商品・サービスに埋もれてしまっては意味がない。自社の商品・サービスが他社にない特徴を持っており、それを顧客が魅力的だと思ってくれることが前提となる。
逆にいえば、SNSで情報発信することは、自社の商品やサービスを再定義し、価値の再発見、再創出を行うこととセットでもあるということだ。 【次ページ】ほっかほっか亭 取締役が明かした「3つのSNS戦略」
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