流行語「どこで流行った？」声続出が示す……SNS「2026年の勝者」とは？(3/3)

ほっかほっか亭 取締役が明かした「3つのSNS戦略」

　知名度やブランド力のない企業や商品は、人々の気を引きにくく、注目されづらいという現実がある。

　そうした際に有効なのが、世の中のトレンドやSNSで話題になっているネタに相乗りする方法だ。実は、この方法は意思決定に時間がかかる大企業よりは、中小企業の方が優位な点も多い。

　たとえば、スーパーマーケット「アキダイ」の秋葉弘道社長は、多くのメディアで目にする有名人だ。その背景には、ほかの大手スーパーマーケットチェーンよりも、迅速かつ柔軟にメディアの依頼に対応し、メディアが求めるような適切なコメントを行うことができるという点がある。

　「新語・流行語大賞」に話を戻すと、「エッホエッホ」が今年の流行語にノミネートされている。これは、メンフクロウの赤ちゃんが地面を走る写真がX（旧Twitter）上でシェアされ、その写真にこの言葉がキャプションとして付けられてさらに拡散したことで、「流行語」となったものだ。

　SNS上では「エッホエッホ、○○しなきゃ」といったように、「豆知識」や「情報」を伝える際の定型句として拡散している。

　これが話題になった直後の、2月25日、弁当チェーンの「ほっかほっか亭」は、から揚げのイラストがほっかほっか亭の店舗から走りだす画像に「ｴｯﾎｴｯﾎ あたたかいうちに届けなきゃ」というテキストを添えて、自社のXアカウントから投稿した。


　その翌日、アース製薬は、同社商品の「バスロマン」が風呂へ向けて走っていくイラストとともに「ｴｯﾎｴｯﾎ はやくあたためてあげなきゃ」というテキストを、自社の公式Xアカウントから投稿した。

　両者ともに多数のシェアと閲覧数を獲得できている。SNSのトレンドは、変化がはやく、タイミングを逸すると効果が激減する。ほっかほっか亭もアース製薬も大手企業ではあるが、迅速な行動と意思決定ができたため、こうした投稿ができたのだが、意外にこれができる企業は多くはない。

　2社の投稿を見ても、画像の作り込みは粗く、頑張れば画像加工に長（た）けていなくても作れそうなレベルだ。SNSの世界は、質よりもスピードの方が重要だ。その点で、中小企業が大企業に十分に対抗できる土壌が十分にあるといって良いだろう。

　筆者は、ほっかほっか亭総本部の取締役の方と対談する機会があったが、特に下記のようなことを語られていたのが印象に残っている。

・広告・宣伝戦略をSNS中心に組み替えた
・SNSを顧客とのコミュニケーションの延長線上に位置づける
・“ファンの育成”を重視している

土台は整った──2026年SNSで成果を出す“条件”

　「SNSマーケティング」といっても特別なものではなく、リアルな店舗での販売や接客、取引先のコミュニケーションの延長線上として考えるべきではないかと思う。

　経営者が顧客と直接に触れ合うことが多い中小企業であれば、顧客ニーズを把握することも容易であり、SNSでの情報発信もうまくできるはずだ。

　ただし、SNSの情報の受け手は、不特定多数の顔が見えない存在であることもまた事実だ。筆者は、SNSは「レバレッジ（てこの原理）のツールだ」といっている。無名の一般人や小さな組織でも大きな発信力、影響力を持つことが可能な一方で、リスクも伴ってくる。

　SNSで情報発信するかどうかはさておき、SNS時代において、十分な効果を上げるためには、リスクを十分に理解して、適正なリスクを取ることが重要となる。

　総括すると2025年は、中小企業がSNSで成果を出すための前提条件が整った年だった。2026年は、次のような変化が本格化するだろう。

・“速く動ける”企業が勝つ
・地方や老舗が全国・世界に進出しやすくなる
・広告費をかけずにファンを育てる動きが広がる
・SNSを「接客」「顧客理解」の場として扱う企業が伸びる