- 2025/12/26 掲載
AIゲーム開発はここまで来た…「Wizardry風」RPGを作ってみたら“激ヤバ”だった理由(3/3)
【実践編】Wizardry風RPGを開発してみた
筆者はWizardry風の一人称視点ダンジョン探検RPGの作成に挑戦した。Wizardryは1981年にApple II用に発売された世界初のコンピューターRPGで、1990年代にはファミコンに移植され、日本でも根強いファンがいる。現在もドリコムとイードから新作がリリースされている。Unityのアセットストアには、ファンタジーRPGに使えそうな3Dのダンジョンセットや各種モンスター、UI用のパーツ、特殊効果などが一通り無料で入手できる。これらを使えば一定クオリティのゲームを効率よく作れるのではないかと考えた。
テスト版の簡易なものとはいえ、冒険RPGを短いプロンプトだけで作ろうとするのは無謀だ。きちんとした仕様書や設計書を用意する必要がある。ダウンロードしたアセットも仕様を確認して設計に反映しなければならない。
この仕様書の作成にはClaudeのデスクトップアプリを使用した。UnityとCursorと同じフォルダにアクセスできるので、ダウンロードしたアセットの仕様を確認し、作成した仕様書を保存できる。さらにCursor向けの指示書や、複雑なCoplay-MCPのツールガイドも作成させた。
ダンジョン内を探索してモンスターと遭遇したら戦ってHPを削り合い、先に相手のHPが0になったら勝利、戦闘を続けてプレイヤーのHPが0になったらゲームオーバー。この基本的なRPGの仕様のプログラムはすぐに作成できた。モンスターや宝箱からアイテムを収集して武器やポーションを使用するロジックも追加で指示して作成した。
【実践編】最新AIでも苦戦…Wizardryの「あの部分」
苦戦したのはダンジョンの自動生成だ。ランダムな迷路ならAIは簡単に作成できる。しかし、複数の曲がり角や交差点、扉に閉ざされた部屋などWizardry風の迷宮を自動生成させるのは、最新のGPT-5.2やClaude Opus 4.5にも困難で、半日以上かけても満足なものはできなかった。結局は「通路を先に配置して、通路で区切られた空間を部屋にして扉を付ける」というシンプルな戦略を筆者が考え出してAIに指示した。専門家を凌駕するとされる最新のAIだが、基本戦略の良し悪しを見直すことや発想の転換をするのは、まだ苦手なようだ。こういう点が人間が強みを発揮できるところでもある。その後もダンジョンの細かい調整はAIと協力して行った。
Coplay-MCPのおかげで、Webアプリを作るのに近い自動運転感覚でUnityプログラム作成が可能になった。筆者のようにUnityの超基本しか知らなくても、必要なゲームシーンやオブジェクトの設定、プログラミングや複雑なデバッグも行ってもらえる。ゲームエンジンの複雑な設定を覚えることなく、便利なところだけを利用できる。これは画期的だ。
しかし、Coplay-MCPにはまだ問題も多い。作成中にゲームを再生して途中でスクリーンショットやオブジェクトのステータスを確認できるツールがあり、Coplay単体ではデバッグに絶大な威力を発揮するが、MCP経由だと動かないことが多い。また、ときどきCoplay-MCP全体が動かなくなってUnityの再起動が必要になった。なお、今回使用したUnityのバージョンはMac版の「2022.3 LTS」で、最新のUnity 6でCoplayは動かなかった。これは現在Coplay開発元が対応中だ。
無料のアセットも見た目はよくできていても、3Dオブジェクトとしての構造にズレがあり、AIがプログラムで自動配置するとさまざまな問題が起きて苦戦した。AIが試行錯誤しても解決できず、結局はアセットに付属しているデモシーンをAIに分析させて構造のズレを特定し解決したことが何度もあった。
いろいろ問題はあるが、それでもCoplay-MCPの威力は絶大だ。改良アップデートもひんぱんに行われている。また、Coplayには3D制作ツールのBlenderを操作するMCPもある。これを使ってバイブコーディングに適したアセットを作れるようになれば、さらに生産性は向上するかもしれない。誰でも3Dゲームを作れる時代がやってきたのだ。
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