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  • 2008/11/28

【特集:創る(2):黒須正明氏】ユーザビリティの本質を探る--メディア研究開発センター 黒須正明教授

企業内のシステムはなぜこんなにも「使いづらい」のだろうか。「使いやすい」システムを「創る」手がかりを得るため、黒須正明氏に、ユーザビリティの本質について話を伺った。黒須氏はユーザビリティについての一般的解釈や持論をベースに、ユーザビリティに優れたシステムを構築するために気を付けるべきことを数多く示唆してくれた。


ユーザビリティの本質とは何か

黒須正明氏

独立行政法人メディア研究開発センター
研究開発部 教授
国立大学法人総合研究大学院大学
文化科学研究科 研究科長
黒須正明氏

早稲田大学文学研究科で心理学を学んだ後、日立製作所に入社。中央研究所、デザイン研究所を経て、静 岡大学情報学部へ。その後、メディア教育開発センター教授として赴任。ユーザー工学や人工物発達学の 体系化を行う。現在、NPO人間中心設計推進機構の機構長等を務める。

─―これまで数多くのユーザビリティの向上に取り組まれてきたかと思いますが、そんな黒須さんの目から見てユーザビリティの本質はどこにあるとお考えでしょうか?

 まずユーザビリティの定義について、1993年にヤコブ・ニールセンが示したのは、ユーティリティとユーザビリティの区別です。ユーティリティは機能や性能といった魅力、どちらかといえば注目されやすい要素のことです。ユーザビリティはあって当然、気付かれないことも多い、どちらかといえば地味な要素が主体となっています。

 しかし本当の使いやすさを考えると、新しい機能や適切な機能を開発して、ユーザーがやりたいことができるようになること、これも広い意味でのユーザビリティではないかと思うのです。

 また国際的な定義としては、ISO 9241-11という規格もあります。そこでは有効さ、効率、満足度などが要件とされています。私はこれらの要件の独立性や従属関係に注目しています。有効さや効率というのは、物やサービスが持つ性質です。それに対して満足度というのは、それらの性質を持つものによって 人間が感じるものであり、有効さや効率とは違う性質のものだと思うのです。

 ですから、私の定義では敢えてユーザビリティは有効さと効率だけに限定しています。ただ誤解してほしくないのは、だからといって満足度を考えないということではないということです。ユーザビリティを向上させる、その最終目標はユーザーの満足度を上げることだからです。

─―満足度はユーザビリティの要素ではなく、ユーザビリティ向上の結果として得られるものだ ということですね。

 そう考えています。そして、その満足度は瞬間風速で計れるものではありません。使っているうちに新たな機能に気づいて使いやすくなったり、初めのうちは大したことがないと感じていた機能が手放せなくなるということは、誰しも経験したことがあると思います。長く使っていかなければならない製品ではそういう満足度も重要視すべきだと考え、ロングタームユーザビリティ(長期的なユーザビリティ)の研究も始めています。

 しかし、ユーザビリティは基本的に瞬間風速で評価されることが多い傾向があります。初めて見たインターフェイスをちゃんと使えるかどうかということのみを調べて、ユーザビリティと呼んでいるのです。確かにそれも大切ですが、長く利用するサービスを評価する場合などには最善とは思えません。

─―─長期間使用するサービスのユーザビリティは、これまでにない指標で評価すべきということでしょうか。

 単に使いやすいということではなく、いかに現場の要求を反映できるかということも重要になってくるでしょう。業務システムを開発する方々と一緒に行った研究では、システム開発において本当のユーザーの声が反映されていないということがわかりました。要件定義の前に方向性がずれてしまっているので、それに基づいて完成したシステムも使いにくいものになってしまいます。情報管理部門の方々は、自分たちの目から見た現場のイメージで要求を語ってしまいます。それによって齟齬が生まれてしまうという構造があるようです。

“実際に使う”ユーザーとの距離を縮めよ!

─―ユーザーの本当の要求を聞き出すというのは、実際にはなかなか難しいような気がします が?

 確かに簡単ではありません。色々な制約はあると思いますが、ベンダーさんにはぜひ、エンドユーザーとの接触頻度を高めて、本当のユーザーと直に語り合っていただきたいと思います。最近は「ビジネスエスノグラフィ」という言葉も聞かれます。エスノグラフとは民族誌のことで、観察や面接など現場でのフィールドワークを重視する考え方です。エスノグラフィを典型的に表すのは、「現場主義」と「当事者主義」というキーワードです。

 ユーザーの代表者としてベンダーとの橋渡しを行う情報システム管理部門は、現場で本当は何が大事なのか、本当に欲しいものは何かということがわかっていないことがあります。ユーザー自身でさえも、わずかな時間に質問されてその場で的確な要求をできる訳はありません。じっくり時間をかけて、1回だけで はなく翌週にも、翌月にも行って話を聞くと、ボロッと大切な情報が出てくるものです。もちろんビジネスではそんなに時間をかけていられないかもしれません。それでもユーザー自身に話を聞くという当事者主義は大事です。

 もう1つの現場主義も大切です。よく会議室を使ってインタビューを行いますが、それではその場ですぐに思い出せないことが数多くあります。普段使っている業務ソフトについて、使っているときにはいつも気になるけれど、聞かれるとその場では思い出せないものです。さらに実際の業務の中ではそのソフトだけを使っているのではなく、紙のドキュメントを併用していたり、複数のソフトを同時に使ったりしているかもしれません。ソフトウェアやハードウェアをどのような組み合わせで、どういうときに補助的に使用しているのかといった実情を見るためには、やはり現場へ行かなければなりません。当事者主義と現場主義という2つのキーワードを忘れないようにしていただきたいですね。


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