• 2026/04/10 掲載

安いのは今だけ?なぜコメ価格は再び上がるのか、JA全農も読めない“異常事態”の正体(2/2)

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JA全農が語る異常事態、それでも日本で騒がれない2つの理由

 世界で取引される肥料の3分の1がホルムズ海峡を通っていただけに、相場への影響は大きい。封鎖により、その国際価格はうなぎ登り。

 特に影響を被っているのが、人口が多く、資源に乏しいアジアだ。

 化学肥料をほとんど輸入に頼っている日本も、例外ではない。その割には騒ぎになっていない。

 理由は2つある。第1に中東からの輸入量が少ないこと。第2に、価格を改定する6月までまだ時間があり、調達コストの膨張が表面化していないからだ。

 肥料のプライスリーダーは、流通の55%を握るJA全農である。全農が価格を変えるのは、6月の秋肥から。秋肥とは6~10月に販売される肥料のことだ。当面、肥料価格が据え置かれたままなので、農家や消費者は値上げと無縁である。

 とはいえ、肥料を扱う商社や全農、メーカーは既にホルムズ海峡封鎖と紅海の危機の影響をかぶっている。原料の調達コストの上昇は、価格に転嫁するしかない。値上げはすでに織り込み済みだ。

 全農は例年なら3月に秋肥価格を取引先に示してきた。今年はそれができない異常事態に陥っている。

 「一度価格を出すと、半年は変えられない。先が読めないこの状況では、出すに出せない」とある事情通はこう解説する。

 イラン情勢の今後がまったく読めないだけに、長期に渡って価格を据え置くのはリスクが高い。「今年に関しては、途中で価格を変えないと無理ではないか」(事情通)との声も上がる。

 全農の尾本英樹専務は「今後、値上げは避けられない」と3月30日に発言した。上げ幅を巡って調整が続く。

余っているのに苦しい…コメ農家を追い詰める“二重苦の構造”

 肥料の値上げで深刻な打撃を被るのが、コメ農家だ。

 使う量でいうと、野菜や柑橘の方が「肥料食い」の作物である。それなのにコメに影響が大きく出るのは、価格とコストの間で板挟みになるからだ。米価は下落の圧力が高まっている。

 2024年の「令和のコメ騒動」で価格が高騰した結果、コメ離れが進むとともに、大量の外米の輸入がなされた。コメの在庫はかつてなく積み上がっている。農水省によると2月末時点の民間在庫量は300万トンで、過去10年で最高の水準にある。

 今後の米価を占う基準にDI(動向指数)がある。これは、米穀安定供給確保支援機構がコメ取引の関係者にアンケート調査して出している。直近の2月の調査結果は、需給が緩んでいて、今後価格は下がる――というものだった。

 在庫も指数もともに、ふつうに行けば米価が下がることを示している。


 さらにここ2年、高い米価の陰で見過ごされてきた課題がある。生産コストが、物価や人件費の上昇により高い水準で推移しているのだ。

 日本のコメは他国に比べて生産コストが高いと長年指摘されてきた。米価が高かったことで、この課題が放置され、悪い方に拍車がかかった。

 コメ農家は、販売価格が下がる一方、コストが上がるという構造的な問題に直面している。生産コストの増大でいうと、燃料代の高騰も見過ごせない。

 農業は、エネルギーに依存した産業でもある。これから始まる田植えを前に、苗を育てる育苗用ハウスで温度を上げるために重油や灯油を焚く。トラクターや田植え機、コンバインといった農機は軽油を、収穫後の乾燥調製作業は灯油を使う。原油価格の上昇は、コストの増加に直結する。

 全農総合エネルギー部石油課の松浦武史課長はいう。

「燃料価格の上昇が生産コストに影響を及ぼすリスクはある。国の緊急的激変緩和措置次第ではあるが、足元や今後の燃料価格上昇が、どのくらいコメの価格に転嫁できるかは、市場の動向もあるので今のところ不透明です」

余っているのに上がる?米価を狂わせる“離農連鎖”

 燃料代の高値が続き、肥料代まで上がり、米価が低迷したらどうなるか。答えは、「離農の激化」である。

 今後の米価は、短期から長期でみて、次のように変化する。

短期:在庫の増加 → 価格の下落圧力の高まり

中期:離農の激化 → 供給の減少

長期:コメ不足が当たり前の時代

 ここに、不確定要素として「価格維持の政治判断」が加わる。

 コメ不足の時代はすでに始まりつつある。生産能力の低下が進行していて、「令和のコメ騒動」もその結果だった。

 今年に関してはこれだけ在庫があるので、一足飛びにコメ不足に陥る可能性は少ない。そうではあるが、短期の予測に反して価格が上がる可能性はある。4月に施行された「食料システム法」がコストの価格転嫁を後押しするからだ。

 コメほど価格の読めない作物はない。価格の決定には、JAはもちろん、農水大臣や自民党農林族の意向まで絡む。新法を盾に、コストを価格に反映させるよう、国や生産者団体が流通業者や実需者に圧力をかける可能性はある。

 今秋も米価が下がらない。そんな消費者泣かせの番狂わせは十分あり得る。

(取材は2026年3月31日に行った。)

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