• 2026/07/09 掲載

Gemma4やQwen3.6だけじゃない…ローカルLLM「爆速進化」実現した“4つの技術”を解説(2/3)

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【理由その1】量子化:賢さを保って小さくする

 LLMの正体は、膨大な数値の集まりだ。この数値1個を「重み」と呼ぶ。重みは通常、FP16やBF16という16bitの形式で、細かく記録する。モデルが大きいほど重みの数は増え、容量も増える。

 量子化は、この重みを粗い精度に置き換える圧縮技術だ。16bitの値を、4bit(16段階)の目盛りに丸め直す。数値は粗くなるが、1個あたりの容量は4分の1になる。

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16bitの細かい数値を4bitの粗い目盛りに丸めるのが量子化だ。30Bモデルなら約60GBが約15GBに縮む
(画像:筆者作成)

 効果は大きい。30B(300億パラメータ)クラスのモデルは、16bitなら約60GBある。4bitに落とせば約15GBだ。これでVRAM 24GBのGPUや、メモリ64GBのMacに載る。量子化がなければ、ローカルLLMは今ほど普及していない。

 ただしトレードオフがある。粗く丸めるほど、賢さは少しずつ削れる。8bitはほぼ無害、4bitが実用の境界線、2bitは用途を選ぶ、という感覚だ。

【理由その2】QAT:4bitを「妥協版」から「正式版」へ

 ここで問題になるのが、4bitまで落としたときの賢さの低下だ。モデルは本来16bitで訓練されているので、後から無理に4bitへ丸めると、ズレが目立つ。これまでの軽量版は、有志が完成後のモデルを圧縮した、いわば非公式の妥協版だった。

 QAT(量子化を織り込んだ訓練)は、この順番を変える。「最終的に4bitへ丸められる」ことを訓練の最中にあらかじめ想定し、丸めで生じるズレをモデルに吸収させながら学習する。結果として、4bitでも賢さが落ちにくい重みの並びができあがる。

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PTQは完成後に圧縮するため劣化が出やすい。QATは圧縮を織り込んで訓練するため、4bitでも賢さを保ちやすい
(画像:筆者作成)

 Gemma 4 QATがこの好例だ。Googleが公式に配ったこの版では、12Bモデルが16bitの22.8GBから4bitの8.3GBへ、31Bモデルが59GBから19.8GBへ縮む。容量は約3分の1だが、品質の低下は小さい。スマホ向けのE2Bは、11.4GBが最小1.1GBまで落ちる。

 これまで4bit版は「とりあえず動かすための妥協」だった。それがQATによって、モデルの作り手が「最初から4bitで動く前提の正式版」を配るようになった。ローカルで使える賢さの底が、一段上がったということだ。

【理由その3】:必要な専門家だけを動かす

 モデルを賢くする近道は、大きくすることだ。しかし大きくすると、1文字(正確にはトークンと呼ぶ単位)を生成するたびに全部の重みを計算するので、遅く、重くなる。この矛盾を解くのがMoE(混合エキスパート)だ。

 MoEは、モデルの内部を多数の「専門家」に分ける。そして入力ごとに「ルーター」と呼ばれる振り分け役が、必要な専門家だけを選んで動かす。会社にたとえると、全社員を毎回集める代わりに、案件ごとに担当社員だけを呼ぶようなものだ。

 Qwen3.6-35B-A3Bは、35Bと同等の専門家を抱えながら、1文字の生成で実際に動くのは3B相当の専門家だけだ。DeepSeek-V3にいたっては、671B中37Bしか動かさない。賢さの容量は巨大なまま、計算量は中型モデル並みに抑えられる。

 ここに1つ、誤解しやすい落とし穴がある。「実際に動くのは3B」は計算量の話であって、メモリの話ではない。専門家は全員、いつ呼ばれてもいいようにメモリへ置いておく必要がある。だから35Bモデルは、実働が3Bでも35B分のメモリを食う。「実働が小さい=省メモリ」ではない。ただ、GPUのVRAMが24GBや16GBに限られているときに、VRAMに乗り切らない専門家をCPUのメインメモリに逃がすことで、RTX 5060 Tiや4060 Tiのような一般向けGPUでも、本格的なLLMを動かせるようになった。

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ルーターが入力ごとに一部の専門家だけを選んで動かす。総量35Bはメモリに常駐し、毎回動くのは3B分だけだ
(画像:筆者作成)

【理由その4】エージェント向けの高速化

 4つ目は、AIエージェントの使い方に合わせた高速化だ。バイブコーディングに使われるClaude Codeなどの開発用AIエージェントは、短い推論を何度も繰り返す。そこで毎回読み込む長い共通のプロンプトやデータ(役割の設定、使える道具の一覧、これまでの履歴)のデータ量が、LLMの実行速度に影響する。

 vLLMという実行基盤は、この共通部分を一度処理したら再利用し、読み直しを省く(Prefix Caching)。ただし速くなるのは「読み込み」の部分で、答えを書き出す速度は別だ。

 もう1つの高速化の仕組みがMTPだ。通常、LLMはトークンを1つずつ順番に生成する。MTPは先の数トークンを同時に予測し、当たっていればまとめて確定する。GLM-5.2は5トークン先まで先読みする設計だ。これらが組み合わさり、ローカルでもエージェントを現実的な速度で回せるようになった。

 圧縮し、賢さを保ち、必要な部分だけ動かし、エージェント向けに整える。この4つがそろったことが、この1カ月の急速なローカルLLMの進化につながっている。 【次ページ】【理由その4】エージェント向けの高速化
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