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  • 2009/07/15 掲載

KPOとは?知的生産活動のアウトソーシングは日本企業に根付くか--野村総合研究所 山口隆夫氏

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業務のアウトソーシング形態のひとつとして、欧米企業を中心にKPO(Knowledge Process Outsourcing:知的生産活動のアウトソーシング)と呼ばれる形態が広がっている。このKPOの世界市場規模は2010年には170億ドル(約1兆5,800億円)に達するとみられ、サービスの提供企業も増加している。だが、現在、日本企業がKPOを活用する事例はほとんどない。その背景と日本企業が今後、KPOを活用する際の課題と解決方法について、野村総合研究所 経営革新コンサルティング部 上級コンサルタント 山口隆夫氏に伺った。

丸山隆平

丸山隆平

経済ジャーナリスト。1972年日刊工業新聞社入社、以降88年まで第一線の経済・産業記者として活躍。経団連、NTT、通産省、郵政省、労働省、東京商工会議所、各記者クラブ所属、米国特派員を経験。情報通信、コンピューター・ソフトウエア産業草創期から取材。コンピューター・OA、情報通信、経営問題関連の執筆・著作多数。1989年から投資家向け広報(IR)コンサルタントとして内外の企業IR・PRをサポートしている。

KPO市場は、2010年には世界で170億ドル規模に成長

──KPOとは何でしょうか?

山口 情報の分析を中心とした知的業務処理を、社外に委託することです。データの収集・加工(データギャザリング)とデータの分析・示唆提供(データアナリシス)が主な機能となります。企業内の業務は「判断する部分が多いか少ないか」、「顧客と対面することが多いか少ないか」の2つの要素から、(1)マニュアル化されない企画業務、(2)マニュアル化された事務、汎用度の高い業務、(3)交渉要素の高い営業的業務、(4)マニュアル化しやすい窓口やフロントの接客業務、の4種類に分類できます。従来のBPO(Business Process Outsourcing)が、マニュアル化できる単純業務のアウトソーシングであるのに対して((2)の領域)、KPOは判断が求められる部分が多い非対面業務のアウトソーシングを指します(図1)。

(Source:野村総合研究所,2009)

図1 KPOに適した業務領域


──KPOの対象となる業務には具体的にはどのようなものがありますか?

山口 KPOはITO(Information Technology Outsourcing)とBPOが発展したもので、たとえば証券業務では、ITOがトレーディングシステムの開発・管理、BPOはカストディアン(証券の保管業務)や会計業務、KPOは株式リサーチやクォンツ(金融商品の取引手法・リスク管理手法の開発)などが該当することになります。

──KPOの市場規模はどの程度でしょうか?

山口 主要KPOサービス提供企業によれば、2010年に世界で170億ドルに上ると推定されています。NRIではそのうち120億ドルは欧米企業からインド1国への発注と見ています。すでに欧米ではフォーチュン上位500社のうち、5社に1社はKPOサービスを利用しています。

──KPOサービスを提供している企業についてお教えください。

山口 元GEキャピタルの社内BPO部門が独立した「ジェンパクト(GENPACT)」、IBMとマッキンゼーのインド拠点責任者が創業した「イバリュウサーブ(EVALUESERVE)」、元英国航空のBPO先であった「ウィンズ(WIN)」、マッキンゼー、GEキャピタルなどの出身者が創業した「コパル(COPAL)」、東京・六本木に拠点を持ち日本ではITOサービスを展開している「インフォシス(Infosys)」など、1990年代後半以降にKPOサービスを開始した企業がほとんどです。

──KPOのサービス拠点は、どこにあるのでしょうか?

山口 KPOのサービス拠点を、中国、チリなどに置くケースも出てきていますが、インドが圧倒的に多いですね。インドのKPOサービスは非常に盛んで、海外向けサービスの90%を占めており、サービス従事者は25万人に達すると推定しています(図2)。

(Source:Aggarwal, Alok. "India's Knowledge Process Outsourcing (KPO) Sector: Origin, Current State, and Future Directions." July 5, 2007)

図2 インドにおけるKPO輸出額と従業員数


 その理由は、1人当たりの収入が低い一方、高い教育を受けた人材が一定程度存在することです。また、たとえば、KPOサービス提供の素地として国民の識字率と1人当たりGDPを勘案すると、今後、インドネシア、ブラジル、ルーマニア、中国、タイなど、インド以外にKPO市場が拡大することが予測されます(図3)。

(Source:WDI Online、UNESCO国別識字率よりNRIが作成,2009)

図3 1人あたりGDPと識字率の関係


──これらの企業が成功した要因は何でしょうか?

山口 KPOサービスで成功している企業に共通して指摘できる点として、まず、発展途上国を中心に、全世界をカバーする拠点を配置し、1日24時間、世界のどこからの要望にも時差なしに対応できる体制を敷いていることです。次に英語を中心に、多言語でのサービスが可能なことです。たとえばイバリュウサーブ社では約50カ国語に対応できるように人材を採用しています。また、オフショアを中心として低価格で、会計士、税理士、弁護士、弁理士、コンサルタントなどの専門サービスを提供できることです。実際に日本や先進国の人材が提供するサービスと比較して総じて5分の1程度の価格でサービスが利用できると考えられます。

 さらに、あらゆる業種における専門家を擁して顧客の要望に全方位で対応できることが成功の要因です。

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