IT産業の発展に人材が追いつかない
技術は信じられないほど早く進歩しています。私たちの携帯電話、コンピューターなどの多くのデバイスに、毎日のように技術的革新や劇的な改善、新機能などが搭載されています。日常のさまざまなアクティビティやビジネスプロセスにも、あらゆるテクノロジーが採用されています。
当然のことながら、IT業界は成長しています。
GlobalEdgeによると、世界で最も急成長している5つのセクターのうち、3つがIT分野に属しているそうです。その3つは人工知能、サイバーセキュリティと電子商取引です。
面白いことに、このIT産業の発展に対し、多くの国々でIT人材の供給が追いついていません。たとえば、日本は深刻なIT人材不足に直面しています。
Hays Recruitmentによると、日本の雇用主の98%は、雇用者のスキル不足がビジネスに悪影響を及ぼし得ると心配しています。同時に、64%は実際に雇用者のスキル不足に直面しているそうです。IT業界は、雇用主にとって「専門家を雇うことが最も難しい」業界のトップにランク付けされています。
その結果、日本企業はスキル不足に対処するために、アウトソーシングやアウトスタッフィングなどのさまざまなビジネスモデルに頼ることになります。
本記事では、日本におけるITスキル不足の状況、その対策となっているアウトソーシングやアウトスタッフィングの文化、およびアウトスタッフィングやプロフェッショナルスタッフィングサービスの効率的な活用方法などを説明します。
日本での外国人材採用の現状
日経アジアレビューによると、近年の日本労働市場におけるITスキルの不足により、IT専門家の採用コストは大幅に上昇しています。たとえばNTTデータでは、AIやIoTのトップ技術者に対し、年収2000万円から3000万円の待遇を用意しています。これは、ほかの国のトップマネージャとほぼ同じです。ほとんどの日本企業はそれほどの余裕がないのに、一部の一流人材には年間8400万円(80万ドル)以上でオファーせざるを得ないケースもあります。
その結果、日本ではIT人材不足に対する対策として、海外の労働者を採用する企業が増えてきました。
NHKワールドジャパンによると、過去6年間で、日本企業の海外労働者数は最大33倍増加しました。さらに、
Hays Recruitmentによると、73%の日本企業がIT人材不足に対処するため、海外でプログラマーを採用しようとしています。
外部に仕事を依頼する4つの方法とそれぞれの違い
こうした人材不足に対処するためには、直接雇用することも大切ですが、外部のリソースを上手に活用することが重要となります。その際、日本ではこれまで「外注・請負」や「労働者派遣」、「アウトソーシング」を利用する企業が大半でした。そこに近年、「アウトスタッフィング」という形態も登場しています。
それぞれの違いを、以下の表にまとめました。
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アウトスタッフィング |
アウトソーシング |
外注・請負 |
労働者派遣 |
クライアント企業と実行企業との法的関係 |
専門チームアウトスタッフィング契約 (サービスレベル契約) |
アウトソーシング契約 (サービスレベル契約) |
請負契約、業務委託契約 |
労働者派遣契約 |
クライアント企業と労働者との法的関係 |
クライアント企業と労働者との契約はない |
クライアント企業と労働者との契約はない |
クライアント企業と労働者との契約はない |
クライアント企業と労働者との契約はない |
作業現場 |
アウトスタッフィング会社の事務所 |
アウトソーシング会社の事務所 |
第三者の事務所またはアウトソーシング会社の事務所 |
クライアントのオフィス |
労働者を管理する側 |
クライアント企業 |
アウトソーシング会社 |
第三者企業 |
労働派遣会社 |
クライアント企業の資金の受取先 |
アウトスタッフィング会社 |
アウトソーシング会社 |
アウトソーシング会社 |
労働派遣会社 |
長所 |
- ・プロジェクトやチームのフルコントロール
- ・プロジェクトの優先順位はいつでも変更可能
- ・チームサイズは簡単に拡張可能
- ・低価格
- ・より早いオンボーディング
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- ・安価な開発サービス(選んだアウトソーシング国によって異なる)
- ・プロジェクトがアウトソーシング会社に管理されている
- ・管理チームと技術チームを採用する必要がない
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- ・人件費の削減
- ・プロジェクトのより迅速な完了
- ・従業員の採用や解雇の柔軟性が向上
- ・会社のスキルセットが向上する
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- ・非常に安い労働力
- ・より迅速な雇用と解雇のプロセス
- ・労働者のコントロール
- ・採用およびスタッフ管理プロセスを管理する必要がない
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短所 |
- ・コミュニケーションにはギャップと誤解が起こりうる
- ・リモートでのチームを管理する必要がある
- ・時差
- ・言葉の壁
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- ・プロジェクトとチームメンバーに対する限られたコントロール
- ・コミュニケーションにはギャップと誤解が起こりうる
- ・時差
- ・言葉の壁
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- ・スタッフを管理できない
- ・業務品質低下の恐れ
- ・品質保証には特別な注意が必要
- ・社内スキルは上達しない
- ・別の会社からの依存
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- ・スキルの低い、またはスキルのない労働者
- ・品質が低下する可能性がある
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(出典:筆者作成、一部筆者による解釈も含まれる)
こちらを踏まえて、IT人材不足にもっとも効果的な方法を解説しましょう。
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