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  • 2009/07/23 掲載

【連載】工事進行基準対策の第一人者に聞く(4):工事進行基準適用のための3つのポイント<3>(2/2)

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進捗度を合理的に見積もるには

 前述のとおり、「工事契約に関する会計基準」では、進捗度の見積もり方法として、「原価比例法」や「直接作業時間比例」、「施工面積比率」などが挙げられている。これらの方法は大きく2つに分類することができる。

 1つが、インプット、すなわち費用サイドに着目して進捗度を求める方法である。この代表的な方法が、実務上も用いられることの多い「原価比例法」である。 そしてもう1つがアウトプット、すなわち出来高に着目して進捗度を測定する方法であり、代表的な方法に「Earned Value Management」(EVM)がある。

 原価比例法とは、分母に前回取り上げた工事原価総額を用い、分子に決算日までの原価実績の累計額を用いて、全体における原価の費消割合で工事進捗度を見積もる方法である。弊社のアンケート調査によると、具体的な適用方法として、原価比例法を用いて工事進捗度を見積もっていると回答した企業が過半数であった。原価比例法は、進捗度を簡単な計算式で見積もることができ、恣意性が介入しづらいというメリットがある。

 ところが、この方法を用いることを前提に寄せられる個別の相談も非常に多い。たとえば、分子となる原価実績集計方法についての単価の設定や製造間接費の配賦方法などだ。この計算ロジックを誤ってしまうと、そこから算出される工事進捗度自体についても不適切なものとなってしまうリスクがある。自己流の原価集計では原価比例法の適用は認められないことに注意したい。

 EVMをはじめとするアウトプットをベースに進捗度を見積もると、開発プロジェクトの進捗度合いを出来高でとらえる、実態を反映しやすいというメリットがある一方で、開発プロジェクトの出来高を全体に対する進捗の割合で把握することになるため、その定量化ルールや統一的な運用体制の構築が求められる。

 以上、工事進捗度の見積もりのための2つの主な方法について見てきた。どの方法を選択するかは、企業ごとに委ねられているが、進捗の実態を適切に反映する方法をもって見積もる必要がある。アンケート調査の結果を見ると、工事進捗度の見積もり方法について、「決まっていない」と答えた企業を除けば、70%以上の企業が「原価比例法を採用する」と回答しており、原価比例法が主流であることがわかる。もちろん、工事進行基準適用における工事進捗度の見積もりに原価比例法を採用した場合にも、開発現場でEVMなどの開発管理手法を用いて開発作業を管理することは自由に行うことができる。ただし、開発プロジェクトをインプット(費用)とアウトプット(出来高)の両面から並行して管理する場合には、これらが大きく乖離していないことが、原価比例法を用いて工事進捗度を見積もるための前提になる。

 このような工事進捗度を見積もるために用いた方法は、注記事項として開示することが求められる。投資家をはじめとする利害関係者(ステークホルダー)から見れば、どの方法を用いて進捗を見積もり収益を認識しているのかは、財務諸表を理解し意思決定を行ううえで重要な情報であるからだ。 一方で、どのようなプロジェクトに対してどのような方法で工事進行基準を適用するかという開示内容については、各社の情報開示方針に委ねられている部分もある。


 今回は、3つの要件の最後のポイントである「工事進捗度」の見積もりの方法や留意点について見てきた。前回前々回の「工事収益総額」、「工事原価総額」と合わせ、これらすべてが実際に工事進行基準を適用する際に求められる「成果の確実性」を満たすための要件となる。

 弊社でのアンケート調査の結果や、弊社での支援事例をふまえて各社の現状を見てみると、制度対応としての工事進行基準の準備を進めている企業がある一方で、工事進行基準の適用を前提にしたプロジェクト管理体制の強化を進めている企業も非常に多い。ご存知のとおり、工事進行基準とは、ソフトウェア開発業などのプロジェクト型企業にとって、経営課題と直結するテーマであるからだ。決算期やビジネスモデルの関係で、直近では工事進行基準の対応が結果的に不要な企業も、経営管理という視点から、これを契機に工事進行基準の適用を見据えたプロジェクト管理体制の構築について進められてはいかがだろうか。

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