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  • 2019/06/06 掲載

ファクトリーIoTの導入、そのPoCが問題かも? 3つのケース別に解説

第2回:現場から見たPoCの理想と現実

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我々SIerも場数を踏んで勘が働くようになり、本格導入にたどり着きにくいタイプのPoCをだんだん回避するようになってきました。その結果、PoCから本格導入に進む確度を高める一方で、せっかくお客さまからご相談されても、机上検討の過程で打ち切るケースも増えており、これはこれで健全な姿だと思っています。そこで今回はPoCを有効なものとするための考え方を述べます。

執筆:三菱電機インフォメーションシステムズ 小林 敦

執筆:三菱電機インフォメーションシステムズ 小林 敦

三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)産業・サービス事業本部。
三菱電機に入社し、コンピュータシステム製作所、情報通信システム開発センターなどのSEを経て現在、分社化された三菱電機インフォメーションシステムズの営業部長。
国際海底ケーブル網監視システム、携帯電話向け映像ストリーミング配信システム、グローバルWebプラットフォームなど通信・放送・Webメディア分野を担当する中で、オープンソースソフトウェアの導入促進に取り組み、最近はIoT/ビッグデータ/AI領域で新たなビジネス創出に挑む。
OSSコンソーシアムでは副会長(分散コンピューティング部会担当)を務める。

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陥りやすい“残念PoC”をケース別に解説
(Photo/Getty Images)

既存業務の延長線上にイノベーションを求める

 SIer各社はROI(投資利益率)の議論に縛られないイノベーティブな案件、すなわち新しいビジネスモデル、新しいサービスの創出を目指して、デザインアプローチなども積極的に取り入れながら、異業種(リアルのビジネスを営んでいる企業)との共創を指向しています。

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 しかしながら、そうした新事業のヒット率は決して高くないため、他方で既存のお客さまとともに、既存の業務課題に対応しつつ、その先の価値創造を模索しているのが現実です。

 お客さまとの持続的な関係性の中で、まずは第一歩を踏み出すと見えてくる新しい世界を共有し、これを共創して発展させていこうというものであり、IoTの名目のもとで、お客さまとともにモノと情報の関わりを考え続けることが、新たなビジネスやサービスを生み出すきっかけに繋がると期待しています。

 既存業務の領域においても、導入効果がハッキリしないチャレンジングな案件があり、PoC(と呼んでよいかどうかの議論はありますが)を実施する意義はあります。製造ライン(QC領域)は品質コストで、レガシーな基幹業務(PSI領域)は省力工数で、本格導入への採否を見極めます。

 ここで、PoCの在り方に問題があるために、有効な採否判断(本格導入に進めるか否か)に繋がらないケース、もしくはPoCでは相応の結果も出ているのに本格導入に進まないケースについて、ビッグデータ分析を例に述べていきます(図1)。

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図1 PoCの在り方が良くないため、本格導入に進みにくいケース
(出典:筆者作成)

ケース1:目的不在のPoC

 1つ目はよく言われることですが、目的不在のまま、とりあえずPoCを実施してしまうケースです。会社の経営層から「わが社もIoT/ビッグデータ/AIの活用で何かできないか」のような指示があり、その「何か」を見つけるためにPoCを実施してしまう場合などが当てはまります。

 この場合、PoCの成否の基準がはっきり定まらないため、PoCが終結せずにいつまでも検証を繰り返してしまったりします。また、手元にデータがあることを拠り所に始めるケースが多いですが、たまたま手元にあった既存データでPoCを実施すると、たとえ有効な結果が得られたとしても、あとから「そもそも入力データが妥当でなく信憑性に欠ける」と指摘が入り、データ収集からやり直しになることもあります。本格導入する場合に、定常的に入力データを得られる仕組みが実は存在せず、現実的ではないPoCであることもあります。

 このような目的不在のPoCを防ぐのは「解決すべき課題と、得られるデータとの間の論理が埋まるか否かをPoCで見極める」という考え方です。データの中から新発見を得ようとするのではなく、途中の論理を繋ぐことを考えるのです(図2)。

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図2 PoCで論理を埋める
(出典:筆者作成)

 我々SIerも以前は、データ活用の目処が立っていないお客さまの現場に対して「まずは、繋いでみませんか?」「データを溜めてみませんか?」「業務を見える化してみませんか?」と働きかけていました。しかし、これらが誤ったPoCを生み出してしまった恐れがあります。最近は、業務上で解決すべき課題を真っ先にお伺いするようにしています(当たり前のことなのですが)。

【次ページ】残り2つのケースは?気を付けたいポイント

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