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- 2019/06/06 掲載
ファクトリーIoTの導入、そのPoCが問題かも? 3つのケース別に解説
第2回:現場から見たPoCの理想と現実
既存業務の延長線上にイノベーションを求める
SIer各社はROI(投資利益率)の議論に縛られないイノベーティブな案件、すなわち新しいビジネスモデル、新しいサービスの創出を目指して、デザインアプローチなども積極的に取り入れながら、異業種(リアルのビジネスを営んでいる企業)との共創を指向しています。お客さまとの持続的な関係性の中で、まずは第一歩を踏み出すと見えてくる新しい世界を共有し、これを共創して発展させていこうというものであり、IoTの名目のもとで、お客さまとともにモノと情報の関わりを考え続けることが、新たなビジネスやサービスを生み出すきっかけに繋がると期待しています。
既存業務の領域においても、導入効果がハッキリしないチャレンジングな案件があり、PoC(と呼んでよいかどうかの議論はありますが)を実施する意義はあります。製造ライン(QC領域)は品質コストで、レガシーな基幹業務(PSI領域)は省力工数で、本格導入への採否を見極めます。
ここで、PoCの在り方に問題があるために、有効な採否判断(本格導入に進めるか否か)に繋がらないケース、もしくはPoCでは相応の結果も出ているのに本格導入に進まないケースについて、ビッグデータ分析を例に述べていきます(図1)。
ケース1:目的不在のPoC
1つ目はよく言われることですが、目的不在のまま、とりあえずPoCを実施してしまうケースです。会社の経営層から「わが社もIoT/ビッグデータ/AIの活用で何かできないか」のような指示があり、その「何か」を見つけるためにPoCを実施してしまう場合などが当てはまります。この場合、PoCの成否の基準がはっきり定まらないため、PoCが終結せずにいつまでも検証を繰り返してしまったりします。また、手元にデータがあることを拠り所に始めるケースが多いですが、たまたま手元にあった既存データでPoCを実施すると、たとえ有効な結果が得られたとしても、あとから「そもそも入力データが妥当でなく信憑性に欠ける」と指摘が入り、データ収集からやり直しになることもあります。本格導入する場合に、定常的に入力データを得られる仕組みが実は存在せず、現実的ではないPoCであることもあります。
このような目的不在のPoCを防ぐのは「解決すべき課題と、得られるデータとの間の論理が埋まるか否かをPoCで見極める」という考え方です。データの中から新発見を得ようとするのではなく、途中の論理を繋ぐことを考えるのです(図2)。
我々SIerも以前は、データ活用の目処が立っていないお客さまの現場に対して「まずは、繋いでみませんか?」「データを溜めてみませんか?」「業務を見える化してみませんか?」と働きかけていました。しかし、これらが誤ったPoCを生み出してしまった恐れがあります。最近は、業務上で解決すべき課題を真っ先にお伺いするようにしています(当たり前のことなのですが)。
【次ページ】残り2つのケースは?気を付けたいポイント
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