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  • 2010/01/18 掲載

投資の効果を測るEVAとは:CIOへのステップアップ財務・戦略講座(5)

トレンドマイクロとソースネクストから読み解く

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企業にとって「投資」は欠くことができないものです。たとえば、工場が古くなれば、新しく設備投資が必要ですし、あるいは、M&Aのように企業の株式を取得するのも投資の一つです。しかし、当然ながら「投資」をやみくもに実施していては、またたくまに資金は尽きてしまいます。今回は、米スターン・スチュワート社が開発したEVA(Economic Value Added:経済的付加価値)という指標の基本をご紹介し、投資とリターンの関係を考えてみましょう。(EVA算定のExcelファイルもご提供します)

フューチャーブリッジパートナーズ 長橋賢吾 編集:編集部 松尾慎司

フューチャーブリッジパートナーズ 長橋賢吾 編集:編集部 松尾慎司

2005年東京大学大学院情報理工学研究科修了。博士(情報理工学)。英国ケンブリッジ大学コンピュータ研究所訪問研究員を経て、2006年日興シティグループ証券にてITサービス・ソフトウェア担当の証券アナリストとして従事したのち、2009年3月にフューチャーブリッジパートナーズ(株)を設立。経営コンサルタントとして、経営の視点から、企業分析、情報システム評価、IR支援等に携わる。アプリックスIPホールディングス(株) 取締役 チーフエコノミスト。共著に『使って学ぶIPv6』(アスキー02年4月初版)、著書に『これならわかるネットワーク』(講談社ブルーバックス、08年5月)、『ネット企業の新技術と戦略がよーくわかる本』(秀和システム、11年9月)。『ビックデータ戦略』(秀和システム、12年3月)、『図解:スマートフォンビジネスモデル』(秀和システム、12年11月)。
ホームページ: http://www.futurebridge.jp

ROEとEVA:投資とリターンの関係

 企業が投資をする目的は明快です。それは投資をすることによって、投資以上のリターン(利益)を得ることです。この投資とリターンとの関係を表しているわかりやすい例がROE(Return on Equity:自己資本利益率)です。自己資本利益率とは、株主からの出資(自己資本)に対して、どれだけ当期純利益をあげたか、その割合を示す割合のことです。たとえば、1株10万円で出資したとして、1株当たりの当期純利益(これをEPSと呼びます)が5,000円だとすれば、ROEは5%となります。

 このように投資とリターンの関係を自己資本利益率という形でわかりやすく具体化する「ROE」は、収益性を図る指標として現在広い範囲で利用されています。ただし、ROEは万能ではありません。たとえば、ある事業部における設備投資の効果を測定するという用途にはROEには向いていません。そこで登場するのがEVAです。まずはEVAを求める方程式からみてみましょう。

EVA = 税引後営業利益(NOPAT)-資本費用


 ぱっと見るだけでは戸惑われるかもしれません。後ほど実際の企業例を用いて個別に解説しますが、まずは結論から先にご説明しておきます。税引後営業利益(NOPAT:Net Operating Profit After Tax)とは、企業が生み出した利益を指します。一方、資本費用とはNOPATを生み出すために使用したコストです。すなわち、利益(NOPAT)から費用(資本費用)を引いた残りがEVA(経済的付加価値)となり、その額が大きければ大きいほど付加価値を生んでいる、投資に対して高いリターンを上げていることを意味します。EVAを増やすには、NOPATを増やすか、資本費用を減らすかのいずれかが必要になります。資本費用の詳細については後述するので、まずはEVAは利益から費用を引いたもの、くらいに思っておいてください。

トレンドマイクロとソースネクストの比較

 概要を説明したところではピンと来なかった方もいらっしゃるかと思いますので、実際のEVAを比較しながら考えてみましょう。今回は、PC向けソフトウェアなどを手がけるトレンドマイクロとソースネクストを取り上げてみます。

 EVAの前に、両社の収益構造について簡単に触れておきましょう。共通するポイントは、両社ともWindows PC用ソフトウェアをビジネスの中心に掲げている点です。

 両社の相違点としては、下記の表のようになります。

トレンドマイクロソースネクスト
販売地域北米・欧州・アジアなどの海外売上比率が6割で国内は4割ほとんどが国内向け
商品/サービス企業向けセキュリティソリューション個人向けPCソフト
商品のジャンルセキュリティ分野(ライセンス提供)が中心セキュリティのみならず学習用や日用ソフトも取り扱うなど広範
ビジネスモデルソフトウェアの開発も手がける他社製品のOEM販売が中心

 ビジネスモデルの差は、両社の営業利益率にも反映されています。トレンドマイクロのここ数年の営業利益率は30~40%程度と高い一方で、実質販売だけを行っているソースネクストのここ数年の営業利益率は3%程度です。

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