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  • 2011/11/08 掲載

地域経済の活性化を目指せ!(前編):広島県が採用したNRIの地域産業成長モデル

県をまたいだ広域ブランドを確立するには?

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現在の日本では、首都圏や東海圏に富が集中する一方、地域の経済は縮小していくという二極化の構造が顕著になってきている。特に本年は東日本大震災が発生し、被災地域の復興も大きな課題だ。日本経済全体を底上げするためには、やはり地域経済の活性化が何よりも重要となる。そのために地方は何を考え、具体的にどんな取り組みを進めていけばいいのか。ここに1つのヒントがある。広島県が展開する「瀬戸内 海の道構想」とそれを支える地域金融機関の役割だ。前編では、同構想にも用いられる野村総合研究所の提唱する地域産業モデルについて見ていこう。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

地域経済の活性化は、従来の資金循環構造では難しい

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野村総合研究所
コーポレートファイナンスコンサルティング部
上級コンサルタント
中村直之氏
 今年3月に発生した東日本大震災は、日本経済全体に大きな打撃を与えた。しかし鉱工業の生産指数で見ればそのインパクトはリーマンショックよりも小さく、また実質GDPの対前年比の落ち幅を見ても、東日本大震災の影響はリーマンショックと比べて軽微だったという。

「日本全体では現在回復基調にあるといえる。ただし問題となるのは、被災地域の今後の復興だ」(野村総合研究所 コーポレートファイナンスコンサルティング部 上級コンサルタント 中村直之氏)

 1995年1月に発生した阪神淡路大震災後、兵庫県の県民総生産はずっと最下位に低迷し続けている。それを示す象徴的な事例が、神戸港の外貨コンテナ数の大幅な減少だ。日本にはグローバル港湾として、東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港があるが、震災前まで神戸港は外貨からのコンテナ数がトップで、そのまま伸びていくはずだった。それが震災を機に大きく落ち込み、現在でも震災前の約7割程度の数に留まっている。

「震災後、企業が一時避難的に物流機能を他の港に移し、それがそのまま定着してしまった。ここから得られる教訓としては、やはり早期にインフラを回復する必要があるということだ」(中村氏)

 そのためにはいち早く、被災地域に対して資金を投入していかなければならない。しかし現在の日本の資金循環構造ではそれが難しいという。

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広島県 知事
湯崎英彦氏
 現在、設備投資の低迷で民間企業は資金余り状態にある。家計も将来への不安などから預貯金が外に流れず、資金超過主体となっている。これらのお金は金融機関に集中し、さらにはその後、主に国債に流れる。つまりは国にお金がどんどん集まる構造になっている。この構造は約10年にわたって変わっていない。

「本来なら集まった資金を国が再配分して、被災地域の復興支援を行うのが当然だ。しかし現状では縦割り行政の資金がうまく連携せず、必要なお金が必要なインフラにタイミングよく回っていかない。神戸港の低迷がその顕著な例だ」(中村氏)

 一方で官民の住み分けも重要だ。広島県知事の湯崎英彦氏は次のように語る。

「地域資源への投資は公共的な性格を持つものだ。個々の事業者が行うものではない。地域の皆様が集まって行う、あるいは自治体や地域金融機関などが関与して公共的に進めていくことが必要だ」(湯崎氏)

(※湯崎知事が語る広島県での取り組みは後編で詳細を紹介する

官民が主体となった新たな仕組み作りが求められる

 では実際にどうやって、劣化する地域資産に事業機能を追加し、よりスムーズに資金を投下していけばいいのか。野村総合研究所は、地域資源を核にした新しい需要を生み出すために広島県も採用した具体的なモデル例を提示する。

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図1:地域の自立型成長モデル例
(出典:野村総合研究所,2011/10)

 自治体、地域金融機関、地場企業が協力してファンドを設立し、そのファンドがさらにマーケティング機能、コンサルティング機能、リスク管理機能を有する実行組織に投資や貸付をして業務委託を行う。委託を受けた実行組織は地域資源に投資すると同時に、新たな需要を生む事業活動にも貸付や投資、業務支援を行い、そこで生み出されたお金は逆の道筋を辿ってファンドへと戻り、次の投資に使われることになる。

「事業主体となるべきは、やはり自治体や地域金融機関。そして不良化したインフラや地域再生のためにお金をしっかりと回していく仕組みを作っていく必要がある」(中村氏)

 図の左、「産業ベースで新たな需要を生む事業活動」と「地域資源」の部分を、「地域の産業インフラ全般」に置き換えれば、阪神淡路大震災や東日本大震災後の地域復興支援のモデルと読み取ることができる。

「このモデルは、復興支援の観点からはストック(=資産)の劣化を防止するためのスキームとなるが、適用範囲はそれだけに留まらない。地域経済の成長をもたらすフロー(=新たな需要)を創出するための仕組みとしても機能するものだ」(中村氏)

【次ページ】成長モデルの明らかな違いを示した三重県と沖縄県

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