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  • 2013/11/11 掲載

スマート・マシンとは何か?アマゾンも活用する自律型マシンがもたらす5つの影響

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人間しかできないと思われていたことを自律的に成し遂げる「スマート・マシン」が既に社会を変えつつある。アマゾンが自社の物流倉庫で利用しているマシンのほか、グーグルやトヨタなどが開発する自律走行車などもその一端と言える。そもそもスマート・マシンとは一体何なのか、企業にどのような影響をもたらすものなのか、そこにどのようなビジネスチャンスとリスクがあるのか、そしてCIOは今、何をなすべきなのか。米ガートナー リサーチ部門のトム・オースティン氏が語った。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

スマート・マシンとは何か?“4つの力”が牽引力

 Gartner Symposium/ITxpo 2013に登壇した米ガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント兼ガートナーフェローのトム・オースティン氏はまず、スマート・マシンとは何かについて説明した。

「スマート・マシンとは、“自律型”で行動し、人間の行動領域に対して侵入するもので、これまで人間にしかできないと思っていたことを実行するマシンだ」

 具体的には、自己学習を行い、結果から学んで独自のルールを生成し、データを基に仮説検証を行い、さらにはまだ予測されていなかった状況を検知していく。それは人間の行動を単に模倣するということではなく、またあらゆる場面で完璧なものというわけでもない。ある1つの特定領域でのみ秀でていればよく、特異性や普遍性も不要だが、「自律的でなければスマートとはいえない」。

 こうしたスマート・マシンを実現するためには、人工知能や自然言語処理など、さまざまな分野の技術が利用されることになる。

「我々は1960年代からスマート・マシンが出てくるのを待ち望んでいた。そして60年が経ち、今4つの力が組み合わさることで、ようやくスマート・マシンが現実のものとなった」

 その4つの力とは、1つめが高性能なハードウェア、2つめがハイパフォーマンスなネットワーク、3つめがディープ・ラーニングやNLP(=Neuro-Linguistic Programming:神経言語プログラミング)などの新しいアルゴリズム、そして4つめが膨大な数のコンテンツだ。「この4つの力が牽引力となり、ようやくスマート・マシンが構築できるようになった」のである。

photo
スマート・マシンを実現する4つの新しい力
(出典:ガートナー)


スマート・マシンの3つのカテゴリ

 現在実現されているスマート・マシンのカテゴリは、大きく3つに分けられる。

 1つめが“移動するもの(=Movers)”で、自律走行車などが該当する。2つめが“賢者(=Sages)”で、詳細は後述するが情報ベースのヘルパーになるようなものだ。そして3つめが“行動するもの(=Doers)”で、マシン・フォーカスのヘルパーだ。

 まずMoversについては、米Kiva Systems(2012年に米アマゾンが買収)が提供する倉庫の中で品物を運ぶロボットが挙げられる。広い倉庫内でお互いにぶつかることなく走行するもので、アマゾンの物流センターでは、この自律型ロボットが何百台も稼働しているという。



 実際にはコンピュータシステムから発注情報を受け取ると、このロボットが注文品が収納されているラックを探し出してその下に潜り込み、ラックごと、荷詰め作業をしているスタッフのところまで運び、また元の場所に戻す、という動きをする。

 次に、Sagesには、いくつかのタイプがあるという。その1つが、仮想パーソナル・アシスタントだ。

 その一例が米アップルの「Knowledge Navigator」で、人間がディスプレイ上に表示された仮想的なアシスタントとやり取りをするものだ。数年前のコンセプトだが、たとえばユーザーが大学教授なら、その日のスケジュールを教えてくれたり、あるいはその教授の研究に関係のありそうな文献を提示したりしてくれる。

 また2つめのタイプとして挙げられるのが、スマート・アドバイザーで、これには米IBMのWatsonがある。実際にWatsonは臨床医に対するがんのアドバイザーとして活躍しており、数億ページにも及ぶ医療文献を2~3分で理解し、そこから意味を抽出してくる。さらに患者の電子カルテも理解して、最適な治療法を医者に推奨するということを行う。

 「先の仮想パーソナル・アシスタントと、このスマート・アドバイザーは表裏一体だ。前者は、人間が作業していることや話していること、つまりユーザーのコンテキストを理解して親密さを構築し、コンテンツの意味を理解する。一方後者は、膨大なコンテンツの理解が先にあり、その上で前回この医者が患者に対して何を言ったのか、どんな治療を施したのか、といったコンテキストを理解する」

 この他にも、賢者に相当するスマート・マシンとしては、財務データなどを読み取って分析し、業務部門のユーザーに対してコメントやアドバイスを提供したり、大学レベルの論文試験を採点したりするものも出てきているという。

 そして3つめのDoersの例としては、人間の作業を代行もしくは支援するようなロボットが挙げられる。

 米Rethink RoboticsのBaxterは、人と並んで働くことができるロボットで、周りに作業範囲を決める囲いを作る必要はなく、だからといって人とぶつかることもない。また教育を施すことができ、どういう作業をすればいいのかを繰り返し見せることで学習していく。いわば非常にローレベルなスマート・マシンだが、こうしたものが実現されるようになってきている。



【次ページ】スマート・マシンが世の中にもたらす5つの影響

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