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  • 2014/07/28 掲載

航空業界の革命児トニー・フェルナンデス氏が語る、新規ビジネス成功の秘訣

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Air AsiaグループCEOのトニー・フェルナンデス氏といえば、「誰もが手軽に空の旅を楽しめるように」という理念のもと、常識を打ち破るLCC(Low Cost Carrier)として、価格破壊を巻き起こした航空業界の革命児として知られている。同氏は、もともと音楽関係の出身で、ワーナーミュージックで東南アジア地域のマネージャーや副社長を務めた経験をもつ。日本文化にも造詣が深く、中森明菜やX Japanなど日本のアーティストをアジアにプロモートした。まったく航空業界に無縁だった同氏が、いかに参入障壁の高い航空業界の壁を破ってきたか、とても興味深いところだ。この革命児がアジアの航空業界にもたらしたものは一体何か?先ごろ開催された新経済サミット2014に登場した同氏は、自らの口から成功の秘訣について語りはじめた。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

新規参入での成功の秘訣その1~意表を突くブランディングとマーケティング戦略

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新経済連盟に登場した航空業界の革命児、トニー・フェルナンデス氏(左)と、司会を務めたCNBC東京支局長 円城寺香氏(右)
 13年前の2011年9月9日、フェルナンデス氏はパートナーとともにAir Asiaを買収したが、その額は僅か25セントというタダ同然のような価格だった。当時、Air Asiaは1000万ドルもの債務を抱えていたからだ。「音楽業界はインターネットのイノベーションが遅すぎると感じていた。それで航空業界に乗り混んだ。この業界のことは何も知らなかったが、アイデアだけはあった。知り合いにはクレイジーと言われたが、年をとって後悔するのは嫌だった。人生は後戻りできないから」と当時の心境について語った。

 新会社をスタートさせたのは、あの忌まわしい9.11が起きる直前だった。以降、SARS、鳥インフルエンザ、地震、津波など、あらゆる問題が起きた。政府によって新規参入を阻止されることもあった。さまざまな危機に直面したが、それらを1つずつ乗り越えてきた。赤字続きの経営だったが、業界の価格破壊を目指しながら、新しいテクノロジーとサービスを導入し、徹底的なコスト削減を実現。現在の姿までに会社を成長させた。航空機は2台から150台まで増えた。乗客数は20万人から約5200万人まで膨れ上がり、5年連続でLCCナンバー1の座を守り続けている。

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AirAsia グループ を率いるCEOのトニー・フェルナンデス氏。もとは音楽業界に身を置いていたという
 では、このように同社が成長した秘訣とは何だろうか? フェルナンデス氏は、いくつかの成功要因について説明した。まず新しい航空ビジネスに、かつての音楽業界での経験を活かしているという点だ。同氏は何千というアーティストのプロモーションをしてきた。航空業界の中でも、そういったブランディングやマーケティングの重要性について認識していたそうだ。

「Air Asiaのロゴを赤くして、すぐに企業イメージが頭に浮かぶようにブランディングを考えた。問題に直面することがあっても、どこかで必ず道は開ける。たとえばSARSが発生したときは、誰もが飛行機に乗ろうとしなかった。フライト数も乗客も激減した。しかし私は、逆にチャンスだからマーケティング費用を3倍に増やすように命じた。気が変になったのでは? と疑われたが、いまこそブランドを構築しておくべきだと思ったからだ。これまでもフットボールチームやF11などにもスポンサードしてお金をかけてきた」(フェルナンデス氏)。

 話題性という意味では、イギリスの実業家であるリチャード・ブランソン氏との賭けも有名だ。ヴァージン・グループの創設者であり、会長を務める同氏は、音楽業界や航空業界、金融業界など多方面で大成功を収めてきた人物だ。日本ではF1ドライバーの佐藤琢磨のスポンサーになったことでも知られる。そんな彼が、フェルナンデス氏との賭け負け、Air Asiaのスチュワーデスの制服を着ることになったのだ。しかも同氏は、支給された制服を着るだけなく、女装までして搭乗し、大きな話題を振りまいた。

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フェルナンデス氏との賭け負けたイギリスの実業家、リチャード・ブランソン氏。支給された制服を着て女装までしたため、大きな話題になった

「他社と異なることをやってブランドを高めようとしている。今回のサミットのテーマは“破壊”だ。我々も航空業界を破壊してきた。Air Asiaが登場する前はLCCのようなものはなかった。業界に格安料金を持ち込むことで、市場全体が伸びた。すでに2億2000万人がAir Asiaを利用しているが、そのうち6割が生まれて初めて飛行機に乗った人たちだ。破壊は、新しいビジネスモデルをつくることでもあるが、一方ではマーケティングや人に対する考え方も破壊的であるということを意味する。競合他社と差別化を図り、そこから価値を見出すことが重要だ」(同氏)。

【次ページ】新規参入での成功の秘訣その2~人材育成と職場環境の改善

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