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  • 2014/12/24

リストラの前に読むべきグリム童話:人を動かす極意

むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意

コピー機大手のリコー(東京)が希望退職に応じなかった社員約100人に対する出向・配転命令を取り消したニュースは記憶に新しい。これは出向命令を無効とする地裁判決が控訴審(2年前に2人の社員が会社を提訴した裁判)でも変わらない見通しになり、和解することになったためだとされる。経営側としては痛恨の極みだが、今回はリストラ策として、一人作業を強いる「追い出し部屋」に異動させた手法が行き過ぎで、人事権の乱用であると裁判所が認めた形となった。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

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 一方で裁判所は経営環境が悪化したリコーの人員削減の合理性は否定せず、全部署で「一律6%の人員削減」や「人選の不透明さ」について慎重さや緻密さに欠けたリストラだと指摘をした。

 今回の訴訟事例は決して他人事ではない。未だ景気の動向は安定せず、いつ自社でリストラを敢行しなければならなくなるかもしれないからだ。

 その時に何を基準として判断をするのか、どのようなリストラ策をとるのか。経営者としては悩ましいところである。

リストラを戒めるグリム童話

 社員を辞めさせれば一時的には人件費の削減になり、業績悪化の緩衝材にはなる。しかし、ここで忘れてはいけないのは辞めさせる社員に対して投資をしてきた採用に要した費用や教育費、福利厚生費なども同時に失ってしまうということだ。

 さらに人材流出はその投資をしてきたコストや時間を他社に無償で与えてしまうことにもなる。これがライバル社であれば、損失はさらに拡大するだろう。 日本と同じく工業国で高い技術力を持つドイツのグリム童話「ブレーメンの音楽隊」でも、無策なリストラに対して警鐘を鳴らしている。

 この物語の主人公たちをモチーフにしたブレーメン市庁舎の像が町のシンボルとなっているのでご存知の方も多いかもしれない。ここで物語のあらすじを紹介したい。主人公であるロバは長年、飼い主に尽くし働き者だった。しかし、年を取り、仕事ができなくなってしまったことから、「もっと働け」と虐待されるようになった。いわゆるパワハラである。

 この理不尽な扱いに耐えられなくなったことからロバは農場を脱走し、ドイツの大都市であるブレーメンに行って音楽隊に入ろうと旅に出る。旅の途中で、狩りで獲物が取れなくなった犬、粉屋のネズミ退治ができなくなった猫、スープのダシにされそうになった鶏に出会い、彼らを音楽隊に勧誘。ブレーメンへと意気揚々に向かう。いわゆるリストラメンバー4匹の挑戦である。

 しかし、ブレーメンへの道のりは長く、日も暮れてきたことから4匹は森の中で眠ることにした。すると木の上で寝ようとした鶏が、灯がともる家を見つける。その家に近づいてみると、中では沢山のごちそうを前に酒宴をする泥棒たちいて、盗んだ金貨を分けているではないか。ここでロバが一計を案じ、3匹に提案をする。ロバは窓に足をかけ、その上に犬が乗り、その上に猫が乗り、鶏が一番上に乗ったのだ。そして、一斉に大声で鳴いた。泥棒たちはその声に驚き、窓に映った4匹の姿を大きな化け物と錯覚。「化け物だ!」と散り散りに逃げだした。空になった家に入った4匹はごちそうにありつき、満足げに眠りについた。

 一旦逃げた泥棒たちだが、仲間の一人が家の明かりが落ちていることを確認し、様子を探るために侵入。それに気が付き起きだした猫の目をランプと間違え持ち上げたことから乱闘が勃発。猫は泥棒をひっかき、ロバは蹴とばし、イヌは噛みつき、鶏は突っつく。闇の中で散々な目にあった泥棒は隠れていた仲間に「あの家にはとんでもない化け物が住み着いているから別のアジトを探そう」と家を諦めて退散した。4匹はその家がすっかり気に入り、音楽を奏でながら仲よく暮らしたというお話。

 これを現代風に解釈すれば飼い主は会社で4匹は社員。社内で仕事ができなくなった従業員に対してリストラを行ったのだが、彼らは「自分たちはまだできる」と、ブレーメンの音楽隊に転職を希望。その転職活動の際に泥棒の隠れ家という新たな会社を見つけ、能力が開花。一気に取締役になったというところだろう。このようにドイツでは古くから優秀な人材流出を戒めた童話が語り継がれており、結果として高い技術力を保持し続けているのである。

【次ページ】リストラの代償に直面せよ

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