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  • 2015/04/23 掲載

ミドリムシのベンチャー、ユーグレナ 出雲 充氏が語る「成功のために459回繰り返す」

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ミドリムシという言葉を聞いて、どのような姿かたちを思い浮かべるだろうか。ミドリムシは「ムシ」ではなく、ワカメやコンブと同じ「藻」の仲間だ。このミドリムシの学名を名に冠したベンチャー企業、ユーグレナの出雲 充氏は、ミドリムシという動植物の可能性に魅せられて研究に邁進し、世界で初めてミドリムシの大量培養に成功した。日本の中流家庭に育った出雲氏は、成功するために何を考え、実行してきたかを語った。

バイオ燃料、高栄養食品にもなる「ミドリムシ」とは何か?

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ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充氏
「『ミドリムシ』は致命的に名前が悪い。ミドリムシというと誰もが蝶の幼虫を思い浮かべる。ミドリムシで人々を救うと言っても、蝶々の幼虫をすりつぶして、という感じでは誰も相手にしてくれない」

 Life is Tech !が主催する教育とテクノロジーの祭典「Edu x Tech Fes 2015」に登壇してそう語ったのは、バイオベンチャー企業ユーグレナ 代表取締役社長の出雲 充氏だ。

 ミドリムシは、植物と動物の両方の性質を持った不思議な生物である。栄養素が豊富に含まれており、梅干10個に含まれるベータカロチンは、ミドリムシ1g(10億匹)、ミドリムシ錠剤ならば5粒に匹敵する。牛レバー50gに含まれるビタミン12と、ミドリムシ1g(10億匹)に含まれるビタミン12は同量だ。イワシ一匹の葉酸と、錠剤5粒の葉酸も同量だ。ウナギのかば焼き1枚のDHAと、ミドリムシ錠剤5粒のDHAも同量だ。アサリ50gの亜鉛とミドリムシ1gの亜鉛も同量だ。

 ほかにも、ミドリムシは我々の生活に非常に役立つ働きがある。それは燃料としての油だ。産業革命以降、膨大な化石燃料を使ってCO2が排出され、温室効果ガス効果により地球温暖化や気候変動の問題がクローズアップされている。

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ミドリムシ(学名:ユーグレナ)はる動物的性質を持つと同時に、植物として葉緑体を持ち光合成を行う微生物だ
「2000年代以降、バイオ燃料の利用が進んでいるが、従来のバイオ燃料が本当に我々の生活を良くしているのか検証されていない。昨年は膨大な量のトウモロコシが米国でつくられたが、そのうち4億人分が燃料として消費された。南米で普段からトウモロコシを食べている人からすれば、4億人分の食糧が失われたことになる」(出雲氏)

 出雲氏は「次世代のバイオ燃料は、ミドリムシのようなもので生産される油に切り替えなければいけない」と力説する。いま地球上で最も貴重な資源は農地だからだ。つまり、農地は食べ物をつくる場所でああり、バイオ燃料をつくる場所ではないということだ。ミドリムシであれば、砂漠でも海でも増産して、絞れば油が出てくる。農地を使うか使わないことが第一世代と第二世代のバイオ燃料の一番の違いなのだ。

 出雲氏は「我々は、その第二世代のバイオ燃料でも最も難しいとされるジェット燃料をミドリムシの油でつくることにチャレンジしている。2020年の東京オリンピックまでに、ミドリムシでつくった国産バイオ燃料でジェット機に乗ってもらいたい。私は必ず実現できると思っている。その日まで楽しみにお待ちいただきたい」と自信をみせた。

ユーグレナ出雲氏の転機となった、バングラデシュ訪問

 「多摩ニュータウンで育ち、日本の中流家庭に育った」という出雲氏。平凡な人生を過ごすのだろうと、高校生ぐらいまではぼんやりと考えていた同氏の転機は大学1年生の頃、NGOのインターンシップでバングラデシュを訪れた時だ。世界で一番貧困で、最も人口密度が高い国。生まれて初めての海外がそんな国だった。しかし、出雲は実際にバングラデシュに入って、自分の考えがまったく間違っていたことを学んだという。

「お腹を空かしている飢えた子どもは一人もいなかった。どんなに貧しい村でも必ずカレーが出る。食べ物に困っているわけではなかった。彼らは困っていたのは栄養失調だった。お米、パン、トウモロコシ、芋、豆といった炭水化物ではなく、それ以外の果物や、野菜、肉、魚、牛乳、卵といった栄養素が不足して、病気気味だったり、不健康な状態にいる人々がほとんどだった」(出雲氏)

 一番の問題はスターベーション(飢餓)でなく、マルニュートリション(栄養失調)だということを悟った出雲氏は、日本に戻り、どうしたら栄養失調の問題を解決できるのか考えた。「解決のためには、栄養満点の食糧が必要だ。何が一番栄養が高いのか調べ始め、大学3年になって、ようやくミドリムシと出会った。ミドリムシは、光合成をする植物だが、動物でもある。そして人間が必要とする栄養素をミドリムシがすべてつくり出してくれる万能の生物だ」

 栄養価が高いミドリムシで栄養問題を解決できるのでは――。出雲氏はバングラデシュにミドリムシを持っていこうと思ったが、このアイデアは誰もやろうとしていなかった。ミドリムシを低コストで培養させる技術がなかったのだ。栄養価が高いミドリムシを育てようとすると、いろいろな雑菌やバクテリア、カビなどが食べてしまうのだ。

【次ページ】2年間で500社に営業して、1社にも採用されなかった
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