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  • 2016/03/07

ノーベル賞受賞の大隅 良典教授に聞く、大きな仕事への挑戦と基礎科学の課題

日本が誇るフェロー・CTOに学ぶノウハウ定義書 第18回

フェロー、CTOの高い業績の背景には、独自の考え方、思考・行動の原則=ノウハウがある。これらのノウハウには、企業の創造力、イノベーション力を高めるパワーがある。そして、日本を元気にするヒントがある。本連載では、フェロー、CTO自身に、自らのノウハウを語っていただく。第18回は、東京工業大学 フロンティア研究機構 大隅 良典栄誉教授に聞いた。大隅氏は、細胞内のタンパク質を分解する自食作用「オートファジー」に関して、その分子機構や多様な生理的意義を解明し、ガードナー国際賞をはじめ、数々の国際的な賞を受賞されている。2016年10月3日には、ノーベル医学・生理学賞を受賞した。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

大きな仕事を成し遂げるために 人がやっていないことに挑戦する

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東京工業大学 フロンティア研究機構
大隅 良典栄誉教授

──この連載インタビューでは、研究開発で高い業績をあげるための考え方をお聞きしています。本日はその前に、日本の基礎科学の問題を整理する必要があると言うことですが。

大隅氏:ええ。日本の基礎科学は、現在深刻な問題を抱えています。このままでは、危機的な状況になるのではないかと懸念しています。

 かつて理科系の優秀な学生は、少なくとも東京大学では理学部を目指していたと思います。物理など、最難関でした。生命科学では生物化学科があこがれの学科だった。しかし現在は、例えば生命科学の場合、医学部でも農、薬学部でも学べる。すると、余り企業との関係が薄い理学部でやろうという学生は少なくなっていると思います。就職をするための大学院という意識が強く、何をやりたいという意欲が薄くなっていて、このような状況では、大学の研究のアクティビティーも下がってきています。就職活動もあるマスターの院生だけでは限界があって、優秀なドクターの院生がいないと、研究は進みません。このことが、最近、論文の質や量にも現れていると思います。

──優秀な学生は、工学部へ行って、いい企業に就職したり、医学部に行って安定した生活をしたいと思っているのでしょうか。

大隅氏:そういう傾向はあると思います。博士課程に進学する学生が減少しているのは深刻です。少子化などが背景にあって、大事に育てられ、安定志向になっているのでしょう。しかし、基礎科学では、大きな仕事を成し遂げようと思ったら、人がやっていないことに挑戦する以外に道は無いと思います。これには、安定と真逆の考え方が必要です。

──まさに大隅先生は、人がやっていないことをやられた。細胞が自分自身の細胞成分を分解し再利用する「オートファジー現象」を出芽酵母の液胞について遺伝学的手法を用いて解析して、世界に先駆けてオートファジーに不可欠な遺伝子群を同定し、それらの機能と生物学的意義について明らかにされました。しかし、人がやっていないことは、成功する確率も小さいでしょうから、覚悟が必要ですね。

大隅氏:まず、自分自身が心底面白いと思えることをやることです。研究には苦しさが伴います。しかしながら、その研究テーマが自分にとって魅力的で面白いものならば、苦しさは必ず乗り越えられます。そしてなにより安心して挑戦できる環境を整えることが必要だと思います。

──安心して挑戦できるとは、どういうことでしょうか。

大隅氏:昔は、研究費に関し、その申請や実績報告で事細かくいろいろな報告を求められることはなかった。社会にも余裕があった、おおらかな時代だったとも言えます。しかし今は、昔に比べると、細かな説明を求められ、性急に社会に対する波及効果などが求められます。基礎科学は、数年で成果を出すようなものではありません。数年で出す成果など、その多くは数年で追い越されてしまいます。出口を早い段階で追求することや、直ぐに成果を求められることで、芽が摘まれてしまいます。

──オートファジーの研究を始めた時に、今のような展開、つまり出口は予測できていなかったのですか。

大隅氏:研究を始めた当時、液胞は、世の中ではごみ溜め程度の認知でした。しかし液胞には実は日常的にも花の色、生薬や大豆のタンパク質などが貯められています。一方で、さまざまな分解酵素を含んでいることは分かっていましたが、液胞の内部で、何をどのように分解しているのかについては全くの謎だった。私は、これを知りたいと思いました。

 最初から、現在のようなガン細胞や老化の抑制、病原体の排除や細胞内の浄化などさまざまな生理機能に関与しているところまで見通していた訳ではありません。しかし、「合成」と同じように「分解」も重要なはずだ。そう考えると、広大な領域が先に広がっているという直観は有りました。

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