- 会員限定
- 2016/10/05 掲載
MIT、ヤフー、MS、経産省らが語る、ブロックチェーンはなぜ67兆円市場になるのか
ブロックチェーンの定義はいまだに曖昧
ブロックチェーンには「非中央集権ネットワーク基盤」「高セキュリティ」「プライバシーの確保」「拡張性」といった特性がある。松尾氏は、「こうした特性は、適用されるユースケースによって要件レベルが異なる」と指摘する。つまり、仮想通貨や土地登記といった適用目的と、スマートグリッドやIoTといった分野で適用されるブロックチェーンでは、重視する特性変わってくるというのだ。
「すべての要件を満たす“解”は存在しない。ブロックチェーンはユースケースによって、その分野に要求される特性をチューニングすることが、本当の使い方だ。『どの分野で』『どの特性が』『どのくらい必要なのか』といった議論が、今後は必要になる」(松尾氏)
もう1つ、松尾氏が課題として挙げるのは、ブロックチェーンで用いられる暗号技術の信用性だ。同氏によると暗号プロトコルを数学的に証明することは難しく、ブロックチェーンの暗号化プロトコルも、その安全性の証明が困難であるという。
ブロックチェーンはこれまでの情報システムとは異なる
また楠氏は、「業務とデータの関係性で見ると、ブロックチェーンはこれまでの情報システムとは異なる」と指摘する。
これまでの情報システムは、業務を稼働させる基盤として構築されていた。しかし、ブロックチェーンは、データ構造とそれに連携する情報システムが先行して存在する。そして、そのデータ構造をどのように活用していくかを考え、業務の適用範囲を決める。つまり、システムの設計順序が既存のものとは逆なのだ。楠氏は、「ビットコインのようなシステムの設計順序は、テスト工数の削減や信頼性向上に役立つはずだ。ブロックチェーンがこれからの情報システムに与える影響は大きいと考える」と述べ、その可能性の大きさを示唆した。
これに対し松尾氏は、「(スマートコントラクトを書く時の)プログラム言語のあり方は、きちんと議論すべきであったという指摘されていた。しかし、現在は(プログラム言語の)研究改良がされているし、スクリプトをチェックするツールも存在する」と現状を説明する。
むしろ松尾氏が課題として指摘するのは、ブロックチェーンのプロジェクトに携わる人材のスキルだ。「(金融分野適用のブロックチェーンのプロジェクトで)実際の金融システムを“触った”ことがない人材が担当している場合がある」(同氏)
【次ページ】スマートコントラクトの「難解さ」は大いなる課題
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR