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  • 2017/03/02 掲載

三井住友海上がロボットに注力の理由、ビルメンテ事例で見えた人との住み分け

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現場へのロボット導入といえば、イメージしやすいのは工場にずらりと並ぶアームロボットだろう。しかし、今は次世代型ロボットと呼ばれる小型で多機能なロボットが数多く登場し、あらゆる業界に普及し始めている。この普及過程において重要なのが、ニーズを持つユーザーとロボットメーカーのマッチングだ。多くの業界を知っており、なおかつロボットの重要性を知っていなければならないため、効果的なマッチングを進められるプレイヤーは限られる。そのひとつが三井住友海上火災保険であり、連携しているのが合同会社ビジネス実践研究所による「RobiZyプロジェクト」だ。

フリーライター 重森 大

フリーライター 重森 大

メインの活動フィールドはエンタープライズ向けITだが、ケータイからADCまでネットワークにつながるものならなんでも好きなITライター。現場を見ることにこだわり、毎年100件近い導入事例取材を行ってきた。地方創生の機運とともにITを使って地方を元気にするための活動を実践、これまでの人脈をたどって各地への取材を敢行中。モットーは、自分のアシで現場に行き、相手のフィールドで話を聞くこと。相棒はアメリカンなキャンピングカー。

三井住友海上はなぜロボットに注力するのか

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三井住友海上火災保険 公務開発部 開発室 北河 博康氏
 三井住友海上火災保険の主力商品は、自動車保険だ。その他にも保険商品を取り扱ってはいるが、ロボットとの接点は急には思いつかない。なぜ保険会社がロボットの普及推進に一役買っているのか。

 HCJ 2017のセミナーに登壇した三井住友海上火災保険 公務開発部 開発室の北河 康弘氏は「外食・中食産業イノベーションに向けたロボットの活用事例と実用化のヒント」と題した講演の中で次のように語る。

「自動運転技術の開発が進み、自動車の事故はこれから減っていくでしょう。それ自体はいいことです。しかし、安全性が高まれば保険という商品の魅力は低下します。逆にこれから保険が求められるのはどこかといえば、それはロボットが導入される職場です。ロボットの普及は、新たな保険ビジネスを生み出すと考えているのです」(北河氏)

 三井住友海上火災保険だけではない。保険業界各社が共同で、ロボットと人間がともにはたらく現場を調査し、その危険性について検討を重ねている。北河氏らの元に、業界や業種を超えてロボットの情報が集まるようになったのはその結果だった。ロボットを製造する企業からも、ユーザーからも意見を聞いていくうちに、両者のマッチングを進める立場へと歩みを進めたのも、当然の流れだったという。ロボットビジネスの確立を目指すRobiZyとの連携も、その過程でスタートした。

農業、介護などで深刻化する労働力不足

 そもそも日本には、ロボットを開発する高い技術力があるだけではなく、世界に先んじてロボット導入を進めていく素地がある。そのひとつの要因は、言うまでもなく少子高齢化による労働力の減少だ。

「特に農業、介護などの業界では労働力不足が深刻です。それを補うのがロボットであり、ロボットを使った作業の効率化が、ビジネスとしての強みにもなっていくと思います。保険ビジネスの観点から見れば、労災防止も進むでしょう」(北河氏)

 労災の7割近くを占めるのは、実は腰痛関連の怪我だという。重いものを持ち上げたり運んだりする業種で多く、これらはロボットでアシストできる分野でもある。

 中でも普及がいち早く進んでいるのが、北河氏も触れた介護業界だ。人を抱きかかえてベッドから車椅子へ移したり、大勢の食事を運んだりと、重労働が多い。

 介護用ロボットが普及すれば、便利になるだけではなく職場の安全性向上につながるというわけだ。ロボットの使用が一般的になれば、導入が遅れている企業は職員に対する安全配慮義無違反に問われる、そんな将来さえ見えてきていると北河氏は言う。事故防止や安全性向上を啓蒙していくのも、保険会社の重要な役割のひとつ。だからこそ、ロボットの普及に関わるのだ。

トマト収穫ロボットは「7割」を目指す

 メーカーとユーザーのマッチングだけではなく、そこで生じたフィードバックをもとにした次世代ロボットの開発にも三井住友海上火災保険は積極的に手を貸している。その一例が、トマト収穫ロボットだ。人が働かない深夜にハウス栽培の農園を動き回り、収穫期のトマトを見分けて収穫する。

「深夜に収穫するという点が、ポイントです。日光は時間帯によって色が変わるので、光の加減で赤く見えるのか、トマト自体が熟しているのかを見分けるのはロボットには難しいのです。これが深夜なら自分の光源だけなので、熟したトマトを見分けるのは容易になります。それでも7割くらいしか収穫できないのですが、実は、この7割でよしとするところがロボット導入成功のポイントでもあるのです」(北河氏)

 次世代ロボットと聞くと鉄腕アトムを想像する人がいるが、アトムに到達するにはまだ100年近くかかると北河氏は考えているようだ。

 それよりも、7割を収穫できるロボットをどのように活かすか。いま実現可能なロボットが得意な分野と人が得意な分野とを組み合わせて、トータルで効率化を図ることが大切だ。

 トマト収穫ロボットの場合、確かに7割しか収穫できないかもしれない。しかし、従来は人が作業をしていなかった深夜に作業をするため、人間の収穫作業を邪魔することはない。人間は残りの3割を日中に収穫すればいいので作業が減り、より高品質なトマトづくりに時間をかけられるようになる。

【次ページ】ビルメンテナンスでのロボット導入で表れた成果

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