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  • 2017/06/05 掲載

「ロックイン」と「サブブランド確立」で他社の参入リスクに備えよ

連載:イノベーションのすゝめ(9)

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イノベーションとは何だろうか? 普段何気なく使っているが、それがどういう定義なのか、なぜ必要なのか、どうすれば上手くいくのかは曖昧だ。本連載では、IT業界一年生の柏木亜依と共にイノベーションを一から学んでいこう。前回までに製品改良を終え、量産体制に入る準備が整った。これからは持続的イノベーションのネタとして、髭剃りモデルによるリピータの囲い込み(ロックイン)と、サブブランドにより、高級感を出すとともに、ブランドロイヤリティ(忠誠心・愛着信)を高め、他社の参入リスクに備え、参入障壁を強化する。

浅井 治

浅井 治

ソフトバンク勤務。愛知県生まれ。日立製作所系ソフトハウスにてオープン系ソフトウエア開発全般に携わり、その後、ジェイフォンに転職。以降、通信事業社でシステム企画に従事する傍ら、社内教育、大学講師を経て、現在、観光ビジネス、地方創生に関わるサービス企画に携わる。また、ITコーディネータ協会の各種のWGを通じて、イノベーション系の研修や人材育成に取り組んでいる。
Blog: http://asai.atso-net.jp
Facebook: https://www.facebook.com/innovation.susume/

photo
イノベーションのすゝめ(イラスト:のはらあこ)


前回までのお話
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量産体制の準備が整った

製品改良の試作ができて、ケアハウスで使ってもらった。ご意見をいただいた方々からも、「いいね、友達に紹介しますね」との声もいただいた。



はい。



そのお友達の伝手で、新しいケアハウスへの手がかりもできた。お年寄りネットワークとのおつきあいにも慣れてきた。



はい。



また、製品改良により、乾燥肌としっとり肌は、ペンの上下で使い分ける、太さはペン先を取り換えることで、ペン先だけ、中身だけの販売もできるようにした、ネットでの通販も開始した。



はい。



だんだん、知名度が上がってきたよね。



はい。



ケアハウスの延長で、老人ホームや病院チャネルも開拓しようとしている。



はい。



営業のシニアビジネスのチャネルを活用したり、R&D経由でも病院やクリニックにアプローチしている。



はい、そうです。



そうそう、先日もR&Dのメンバーが言ってたけど、皮膚科の開業医を紹介いただき、クリニックの売店に置いていただいたところ、好評だったので、先生が若い頃勤めていた総合病院を紹介いただく運びとなったらしいよ。



やったぁ~!



他の病院には、これまで、衛生用品でのお取引の延長線で「てからーず」も扱ってもらえそうだ。



いいですね~。



また、R&Dセンターの所長が執筆された論文も学会で話題になってて、皮膚科の先生にも、「てからーず」を知ってもらうことができた。



これまで、先輩と一緒に仕込んだ仕掛けのすべてが上手く回り始めたって感じですね。



そうだね、心配だったけど上手くいってよかった。やっと、量産体制に移行できる準備が整った。



あ! そういう作戦だったのですね?



気が付いた? いくらいい製品でも、売れなきゃしょうがない。



そうですよ~。



売るためには、製品を磨き、地道にチャネルを拡大すること。もう少し説明すると、マーケティングの4Pなんだ。



Product(製品)、Place(チャネル)、Price(価格)、Promotion(プロモーション)ですよね。



正解! この中で、これまで「テコ入れ」したのは、Price(価格)以外だよね。



そういえば~。



製品(Product)の改良をした、病院などのチャネル(Place)を開拓した、また、説明会などのプロモーション(Promotion)を開催した。



はい、教科書通りですね。



競合に備え、参入障壁を築いておく

ここで、質問。なぜ、価格(Price)の施策をしなかったと思う?



う~ん? 適正な価格だから?



適正かどうかは、わからない。でも、3,000円で購入いただいているということは、その設定で間違っていなかったということ。



それで?



まだ、幸いにも、競合がいないよね。ということは、我々が市場を創造し、その市場で、我々が、適正価格を設定したことになるんだ。



なるほど。



なので、売れているということは、価格を下げる理由にはならないし、価格を下げれば、自分で首を絞める事になりかねない。



そうか。



ただ、今後、競合が参入してきた場合、価格も見直さなければいけないかもしれない。いや、悪戯に価格を下げて、価格競争にならないようにしなければいけないね。



そうですよね~。



有名になり、有望な市場だと分かると、きっと他社が参入してくる。どうやって対処しようか。



じゃあ、参入してこないようにする。



どうやって?



う~ん?



これを「参入障壁」って、言うんだ。



「参入障壁」かぁ。



これまで、商標を登録したり、特許を出願した。これも、参入障壁を築くための施策。



なるほど。



さらに、ケアハウスのチャネルや、「てからーず」というブランド。これらも少なからず、「参入障壁」になっているはずだ。



そうですね。



でも、少し弱いな~?



やっぱり、CM?



CMは知名度UPに繋がるけど、参入障壁にはならない。知名度が上がれば、他者の参入してくるリスクも増えて、逆効果かも知れない。



そうか、じゃあ?



このタイミングでは、チャネルの強化とブランドの強化が有効だろう。



なるほど。



チャネルの強化とは、今回の場合は、口コミを活用することだね。



そうですね、高齢者の口コミって凄いですからね。



ネットでの口コミと違って、リアルな口コミなので、信憑性が格段に違う。うちは、ケアハウスを主要チャネルとして始めたのが正解だったね。この流れはキープしたい。 せっかく開拓したチャネルなので、他社から、同じチャネルで参入してほしくない。チャネルのブランド忠誠度をあげたいね。



そうですよ。売店の販売員やケアハウスのみなさん方…。お世話になった皆様への恩返しとして、謝恩旅行に招待するとか?



いいね。それ、きっと、今後も売ってくれるし、買ってくれるよ。



お世話するスタッフの方々にもゆっくりしてもらいたいですね。



そうだよ、それそれ。スタッフのみなさんって、休みがとり辛く、なかなか旅行なんていけないんだよ。



だったら、みんなで温泉にでも出かけたらいいじゃない、仕事とは別に仲間として。



まず、1回やってみるか? 他社が動く前にやるんだ。早速、ケアハウス側に打診してみよう。もちろん、会社からの補助もとりつけて。



はい。謝恩旅行はさておき、他にやらなきゃいけないことは?



【次ページ】剃刀の「柄」と「刃」のようなロックイン戦略

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