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- 2018/07/05 掲載
なぜアマゾンは「音声」や「決済」に注力するのか 裏側にある狙いとは
Eコマースからモバイルコマース、そしてボイスコマースへ
九州エリアおよび西日本には、製造・商社・卸・小売の歴史とともに、BtoC/BtoB問わず地域経済を支えてきた多くの老舗企業が存在する。また、ユーザーの利用スタイルも地方都市ならではの特徴がある。テレビ・ラジオ・新聞・チラシ・カタログなどを見て、電話・FAX・ハガキで注文するスタイルにも根強い顧客が存在し、ある意味オールドスクールな通販文化により売上を支えられているロングセラー商品もあるが、事業継続性を考えるにあたり、国内・越境を含め新たな顧客開拓における決済・流通メンテナンスは課題として確実にある。
インターネットに接続されたデバイス、いわゆる「コネクテッド・デバイス」は、この10年ほどで爆発的に広がった。スマートフォンやタブレットなどは当たり前となり、今や誰でも手元から気軽にインターネットへつながる環境が整っている。それ以前のEC市場を振り返ると、モバイル(ケータイ)ユーザーはPCを日常的に扱わない層も多く(主に女性や若い世代)、デスクトップデバイス(PC)ユーザーとは傾向も特徴も少なからず異なるものとして、すみ分けも行われているものだった。
それが今や、多くのユーザーがモバイルあるいはクロスデバイス環境となり、テレビなどを加えると情報のタッチポイントは非常に複雑な往来を重ねる。さらにテクノロジーの進化はコネクテッド・デバイスをオフスクリーン環境へと派生させつつある。キーボードやマウス、フリックやタップではなく、誰かと対話をするように「ボイス」が意思決定を伝えるものになりつつある。
Amazon Alexa(AIアシスタント)を搭載したスマートスピーカー「Amazon Echo」の登場は、これからの消費体験をどのように変えていくのだろうか。ゴティエ氏はプレゼンテーションの中で何度も繰り返し「ボイスコマース」というキーワードを用い、ボイスコミュニケーションを用いた消費行動においてキーになるのは、目の前に人がいるリアル店舗での消費体験と同じく「対話」と「決済」のシームレスな関係だと強調した。
今、起きている消費体験の変化、商品購入の決め手は「信頼」
「個々の顧客とつながること」は対話そのものであり、そこに立ち返る必要があるとゴティエ氏は述べる。今、起きている消費体験の変化は、これまでのように画一的なスペック表示や、有象無象に書き込まれた大量レビューから欲しいものを探り当てるようなものでもなく、データセグメントをかけたターゲティングアドやサジェストだけで刈り取れるようなものでもない。一歩踏み込み、これまでの小売がそうであったように、接する顧客それぞれの個人的な状況を読み取り、個々の欲望に即した「接客」を細やかに行うことに肝がある。
「会話を始める段階で、話しかけてくる相手が何をしたいのか理解することが大切になります。消費者は普段、自分が何をしたいのかが分からないわけです。Alexaは何度も何度も繰り返しボイスコミュニケーションのデータ学習を行い、非常に自然な会話の流れが可能となりました」(ゴティエ氏)
「これが欲しい」と思ったときに障壁となるものは少ない方がいい。判断する材料を瞬時に用意し、支払いまでをコンパクトに済ませる。欲しいと思った気持ちの熱量をいかに削がずに、逸らさずに、遂行に移せるかが重要だ。
それには、コネクテッド・デバイスやスマートスピーカーだけでなく、シームレスな決済システムがポイントになる。Amazon Payのような決済システムを自社ECサイトに導入すれば、顧客はお店の仕様に合わせた情報入力を行わなくてもAmazonアカウントで決済できる。
アマゾンのある試算によると、顧客への個別対応が欠落していることにより、年間7560億ドルもの機会損失があるとゴティエ氏は述べる。多くの顧客が購入の意思決定の際に「信用」を重視している。顧客はさまざまなタッチポイントおいて、対象への信用を判断している。新たな商品や店舗に出会ったとき「いつもの方法で決済できる」ことも1つの信用になりうる。
きれいにあしらわれた画像や動画、用意周到に組み立てられたテキストや、スクリーンいっぱいに(あるいはVRゴーグルやARフィルター越しに)広がるリッチで刺激的なビジュアルも、信用がうかがえなければ、必ずしも顧客にとって満足度の高い消費体験になるわけでも、高単価でリピートする得意客の獲得につながるわけでもないのだ。
【次ページ】コネクテッド・コマース時代に重視される「信用」、その構築に不可欠な「対話」
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