• 2018/11/01 掲載

キッコーマンはいかにしてアメリカNo.1にのし上がったのか、茂木友三郎名誉会長語る

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名古屋で誕生したシンクタンク「The International Academic Forum」(以下、IAFOR)は2018年10月、「IAFOR グローバルイノベーション&バリューサミット2018東京」を開催。キッコーマン 取締役名誉会長 茂木友三郎氏が登壇し、同社におけるイノベーティブな海外マーケティング事例と、それによって導き出された経営者としての「結論」を語った。
photo
キッコーマン
取締役名誉会長
茂木友三郎氏

キッコーマンにとってのイノベーションとは

 キッコーマンは創業100年を超える日本の食品メーカーで、主要な商品の一つが「しょうゆ」だ。日本のしょうゆメーカーとしては最も早い段階に工業化を進めた。同社はまた海外進出も早く、今や100カ国以上でしょうゆを販売し、営業利益の6割は海外市場で上げている。

 茂木氏がイノベーションの概念を強く認識したのは、著名な経営学者であるピーター・ドラッカーの著書『現代の経営』を読んだときのことだった。同氏はこう語る。

「イノベーションとは需要を創造するカギだと信じていますが、ドラッカーの著書の中に『潜在需要を顕在需要に転換できたときにのみ、顧客や市場は存在する』と書かれており、私は深く感動しました」

しょうゆの需要を創造した海外マーケティング戦略

 キッコーマンは、この60年間に米国および欧州でまさに「しょうゆの需要創造」に精力を傾けてきた。最初のステップは1957年、米国カリフォルニア州サンフランシスコに販売およびマーケティング拠点を設けたことだった。

 しかし、それ以前の第二次世界大戦直後から下準備はもう始まっていたという。戦後、米国からビジネスマン、外交官、教師、ジャーナリスト、軍人などが日本にやってきて、同社の自然醸造しょうゆを発見し、自分たちの料理にそれらを使い始めた。

 彼らの前向きな反応に、米国人にもしょうゆが受けられると考えた同社は“しょうゆは肉に合う”というマーケティングメッセージのもと、米国でしょうゆを売り始めた。当時、茂木氏はコロンビア大学経営大学院の学生で、同氏自身スーパーマーケットでの実演販売に参加した経験がある。まだ米国人にとってエキゾチックな調味料だったしょうゆを、そうした実演販売で身近な存在にしたと振り返る。

 当時のもう一つ重要な活動として「しょうゆを使ったレシピの開発」がある。販売拠点にテストキッチンを設け、提供する商品やサービスをどう利用すれば効果的かを考えるホームエコノミストを雇用。米国の家庭料理に合うしょうゆ料理レシピ開発に知恵を絞った。そうして生み出されたレシピは、ブックレットにまとめて商品サンプル付きで配布したほか、料理書を専門する出版社にも送付した。

経営者は需要創造のためのイノベーションに全力を傾けよ

 次のビッグステップは、1973年の米国ウィスコンシン州でのしょうゆ工場建設だった。1998年にはカリフォルニア州にも増設した。

 こうした着実な海外活動は、上陸当初3番手だったキッコーマンのブランド地位を徐々に押し上げ、自然醸造という製品品質の良さもあって、1980年代にナンバーワンを奪取した。「今もなおその地位を守り続けている」と茂木氏は胸を張る。そして、同様の海外マーケティング手法を欧州においても展開。さらにアジア、オセアニア、南米へと広げていった。

「個々の市場に合ったマーケティングによって、当社は今でも需要を創造する取り組みを続けています。イノベーションこそ需要創造のカギで、経営者は需要創造のためにイノベーションを生み出すことに全力を傾けるべきです。これこそが、私がビジネスキャリアで到達した結論です」。茂木氏はそう語り、講演を締めくくった。

(※本記事は「IAFOR グローバルイノベーション&バリューサミット」の講演内容をもとに再構成したものです。)

(執筆:吉田育代)


■修正履歴
[2018/11/02 13:10]
一部内容に誤りがありました。本文は修正済みです。


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