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- 2018/03/15 掲載
「日本では営業とマーケティングの融合が進んでいない」営業改革にABMが最適な理由
ガートナー川辺謙介氏ら提言
日本企業はマーケティングと営業の融合が進んでいない
ガートナーの調査では、日本企業においてCRMシステムに投資している部門の平均6割(59%)が営業部門だ。2位は顧客サポート部門で22.5%、3位はマーケティング部門で10.5%だ。日本でCRMシステムに投資している部門は、圧倒的に営業部門なのである。一方、グローバルの調査では、1位は顧客サポート部門で36%、2位が営業部門で24%、3位がマーケティング部門で22%となっており、営業部門とマーケティング部門の投資額はほぼ同じだった。日本企業と比べると、営業部門の比率が低く、マーケティング部門の比率が大きいということになる。
川辺氏によれば、日本企業におけるマーケティング部門の歴史は浅い。CMO(最高マーケティング責任者)を置いている率は、2013年から2017年にかけて9.7%、14.1%、17.5%、20.0%、14.8%と推移した。2016年の20.0%で頭打ちとなり、CMOの設置をやめてしまった会社もある。
一方、タッド氏によると、米国ではマーケティング部門が重要な機能だと位置づけられており、大企業のほとんどがCMOを置いている。米国には、500人以上の社員を抱える企業は約1万9000社あるが、このうち約1万7000社にCMOが置かれている。
CRMシステムを使う日本企業の約4割がカスタム利用
日本の場合、パッケージソフトをそのまま使う企業や、SaaS型のクラウドアプリケーションを使う企業は、CRMを利用する企業全体の57.2%しかない。川辺氏によれば、3年前まではカスタム開発が5~6割を占めていたので、トレンドとしてはパッケージやSaaSへの移行が進んでいる。
注目度の高いCRMベンダー(利用中あるいは利用したい製品またはベンダー)を日本で調査したところ、上位から順に、Salesforce.com(27.4%)、マイクロソフト(19.1%)、富士通(15.1%)、サイボウズ(13.5%)、SAP(10.8%)、NEC(8.9%)、オラクル(8.0%)、IBM(7.1%)、日立製作所(5.8%)、Sansan(5.8%)となっている。
一方、米国におけるCRMベンダーのシェアは、Salesforce.com、SAP、オラクルがトップ3だ。
CRM利用の障壁には、コストのほかに組織の機能面の課題が
1位は「費用対効果が不鮮明」で42.2%、2位は「現場が機能を使いこなせない」(35.9%)、3位は「導入コストが高い」(27.8%)、4位は「社内体制が不十分で現場が利用しない」(23.3%)、5位は「リーダーシップの欠如」(21.0%)だ。
米国も日本と同様の課題を抱えるが、大きな違いが2つあるとタッド氏。米国では、85%が「データの質を高めること」が大きな課題として挙げられる。データの質の低さが、効果的な営業を阻害する要因となっているからだ。
また、55%が「ツールを使ってセールスの実行に役立てること」を挙げる。このように、米国ではツールを導入して活用することが前提となっており、いかにツールを効果的に使うかが課題となっている。
SFAの導入効果は「営業プロセスの標準化」が基本
しかし、日本企業も投資への意欲はある。事実、今後3年間で重点投資すべきと考えるアプリケーション分野を、20個の選択肢から複数回答させたところ、SFA(営業支援)がトップで39.1%だった。タッド氏によると、米国においてSFAは基本だ。顧客(アカウント)の管理や取引の管理に使うために、まずは最初にSFAアプリケーションを購入する。そして、SFAアプリケーションを土台に、必要なツールを追加導入する。
SFAを導入する理由をグローバルで調査したところ、1位から順に「顧客関係/サービス改善」(69%)、「業務効率改善」(68%)、「ビジネス・プロセスの成果向上」(67%)、「ビジネス・プロセスの俊敏性向上」(60%)、「売上の増加」(55%)となった。
グローバルでは、多くの企業が、SFAを導入してセールスのプロセスを標準化する。ただし、SFAは社内の営業プロセスを改善するが、必ずしも売上には直結しない。
【次ページ】日本の営業の課題はどこにあるのか?
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