• 会員限定
  • 2019/01/31 掲載

人工知能(AI)開発の基本、データの準備からシステムへの組み込みはこう進めればいい

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
現在、人工知能(AI)は3回目のブームを迎えています。今回のブームでは、AIのビジネス利用も急速に拡大し、社会に対して大きな影響を与え始めています。ではそのAIを活用したシステム開発はどのように行えばよいのでしょうか。『図解 人工知能大全』の著者である野村総合研究所 古明地 正俊氏と長谷 佳明氏に「AI開発の流れ」を解説してもらいました。

野村総合研究所 古明地 正俊、長谷 佳明

野村総合研究所 古明地 正俊、長谷 佳明

古明地 正俊 野村総合研究所上席研究員。東京工業大学修士課程修了後、大手メーカーの研究部門においてパターン認識の研究などに従事。2001年野村総合研究所入社。現在はITアナリストとして先端テクノロジーの動向調査および技術戦略の立案などを行っている 長谷 佳明 野村総合研究所上席研究員。同志社大学大学院工学研究科修士課程修了後、外資系ソフトウェアベンダーのコンサルタントを経て、2014年、野村総合研究所入社。現在は、ITアナリストとして先進的なIT技術や萌芽事例の調査、コンサルティングを中心に活動中。専門分野はAI、ロボティクス、開発技術/開発方法論など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

photo
人工知能開発の基礎を紹介する
(©blueman171 - Fotolia)

そもそもAIとは何か

 人工知能(AI)とは、その名の通り人間の有しているような知性・知能を人工的に実現する技術を指します。現在のところ、人間の知能と同等の仕組みを実現する技術は存在していません。

 AlphaGoを開発したディープマインドの創業者であるデミス・ハサビスは機械学習と脳神経科学を融合させることにより、人間と同じようにさまざまな課題に対して知的な判断をする、汎用人工知能(Artificial General Intelligence:AGI)を実現しようとしています。

 しかし、現在AIと呼ばれているものは、自動運転や碁を打つといった特定の目的に対しては人間と同等以上の知的能力を発揮しますが、汎用性がありません。こうした目的に特化したAIは特化型人工知能と呼ばれています。

 そして多くの特化型人工知能は、ディープラーニングをはじめとする過去から現在にいたるAIブームで培われたさまざまな技術を利用しています。

 AIという言葉の定義が曖昧となっているのは、AIが単一の技術ではなく、複数の技術の集合体であることに起因していると考えられます。

 本来、汎用人工知能と特化型人工知能、さらには、その他の自動化技術は分けるべきだという考え方があります。しかし、従来では単なる自動化やビッグデータ分析の範疇であった技術が、AIブームに便乗する形で製品やサービスにAIという冠をつけることが多くなっているのが昨今の実状になっています。

 ではこのAIを実際に活用するにはどうすればよいのでしょうか。以下では、画像分類向けなどのAIに使われる教師あり機械学習を例に、AIの開発の流れについて紹介します。

学習データの準備

 機械学習における最初の作業は、学習データの準備です。教師あり学習の場合、入力と正解データをペアにしたものが学習データとなります。たとえば、画像を入力し、犬や猫といった、あらかじめ定められたいくつかのクラスに分類するためには、1枚1枚の画像に正解ラベルを付与したデータが必要です。

 学習データの量は必要とする精度や利用するモデルなどによって異なりますが、単純な画像の分類の場合、クラスごとに1,000~10,000程度用意します。従来の機械学習では、データの量を増やしても精度が頭打ちになってしまいましたが、ディープラーニングではデータ量を増やしただけ性能が向上することが知られています。

 そのため、性能向上のためにはデータ量は非常に大切な要件となります。しかしデータ量の増大はモデルの学習時間の増加に直結するため、ビシネス利用の場合は、性能と工数のバランスを検討することも重要です。

 学習処理をするためには、準備した学習データを以下の3つに分割します。

(1)トレーニングデータ…モデルを学習させるためのデータ
(2)開発データ…学習プロセスにおいてモデルやデータを改善するための指標を得るためのデータ
(3)テストデータ…完成したモデルの性能を評価するためのデータ

 このように学習データを分割する理由は、モデルが未知データに対して適切な出力ができるような汎化能力を獲得できているかを評価するためです。

 学習データの分割割合は学習データの量によって異なります。数万程度の学習データの場合、開発データやテストデータには学習データ全体の20%程度を割り当てることが一般的でした。しかし、学習データが数100万の場合、開発データやテストデータへの割り当ては数%程度で十分となります(図1)。

画像
図1:学習データの分割

 これはトレーニングデータの量はモデルの性能向上に寄与するのに対して、アルゴリズム改善や性能を評価するために必要となるデータの絶対量はあまり増やす必要がないためです。各データの割合は、最終的に構築されるモデルの性能が最大になるように決める必要があります。

【次ページ】モデル構築と学習

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

Slack AI Day

Slack AI の日本語ローンチを祝し、革新の軌跡を振り返り、未来への一歩を踏み出す特別なイベントを開催します。 「コミュニケーションの先の未来を再定義する」というテーマのもと、Slack はメッセージングツールから AI を活用した強力なプラットフォームへと進化しました。 私たちの働き方を根本から変えるこのプラットフォームでは、CRM やアプリケーションの複数同時活用が可能で、 あらゆるデジタル業務が Slack を通じて円滑に進行します。 また、AI の強化により、過去の会話や見落としていた情報を活用して、ワンクリックで最適なコミュニケーションを実現することができます。 この記念すべきイベントでは、「新しい働き方」と業務における生成 AI の活用に焦点を当てます。 Slack AI を通じて、私たちは日常の業務プロセスを根本から変革し、生産性の飛躍的な向上を目指します。 AI とオートメーションの融合が、時間を要する従来のプロセスを一新。 Salesforce の Customer 360 と連携した Slack で働き方が劇的に変わります。 Slack を愛用し続けてくださる皆さま、そしてこれから Slack をご利用してくださる皆さまと共に、AI による業務効率化の新時代を創ります。 進化を遂げた Slackと一緒に、未来の働き方を再定義し、その可能性を探求しませんか? 【このような方におすすめです】 ・業務における生成 AI の活用を模索している方 ・より効率的な働き方・チームコミュニケーションを模索している方 ・Slack でできることを知りたい方、Slack の利用を検討している方 ・Slack を使っているけど、"コミュニケーション" 以外の新しい利用価値を知りたい方 ・部門・プロジェクトごとの部分的な Slack 利用から組織全体へ広げていきたい方 ・Slack 無償版から有償版へ切り替えたい方

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます