有名なオープンソースプロジェクトであるほど、そうした多くの意見やコメントを受け止めつつ開発は進んでいくわけですが、そうした状況は一方でさまざまな気苦労を生むであろうことは容易に想像が付きます。
人気のあるプログラミング言語として知られるPythonの生みの親であるGuido van Rossum氏は2018年7月、Pythonを開発する過程で生ずるさまざまな意思決定の気苦労から離れたいとの理由で、Pythonにおける「優しい終身の独裁者」からの
引退を発表しました。
ちょうど新バージョン
「Ruby 2.6」が登場したばかりのRubyに対しても、米国の掲示板redditで「
[whining] Ruby evolution is taking TOO long」([悲報]Rubyの進歩はあまりにも遅すぎる)といった書き込みが行われました。
この書き込みをきっかけにして、Rubyのパパであるまつもとゆきひろ氏は一連のツイートを投稿。もっと建設的な意見交換をすべきではないかと呼びかけます。
オープンソースをリードする立場のまつもと氏からの投げかけは、コミュニティを健全に保ち、その運営の苦労の犠牲になるような人がこれ以上出ないためにどうすべきか、重要なメッセージを含んでいるのではないでしょうか。
(英語でポストされたまつもと氏のツイートに、わざわざ日本語訳を付けるのは大変僭越ではありますが、読者に分かりやすく読んでもらえるようにあえてPublickeyが日本語訳を付けました)
20年以上前、私の意見に賛成できなかった人がRubyのリポジトリをコピーし、著者名を自分の名前に書き換えたことがあった。彼は自分の言語が作りたかったのだろう。これは明らかにライセンス違反ではあったが、成り行きを見守ることにした。彼が何をするか興味があったからだ。しかし何カ月も動きはなく、リポジトリは消えた。
それ以来彼に会ってない。しかし彼は、あらゆる変更に対する全責任を自分が負う立場になって初めて、プログラミング言語がいかに複雑な制約下にあるのかが分かったに違いない。彼のフォークの名前から、私はこれをxrubyシンドロームと名付けた。
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