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  • 2019/03/29 掲載

少数派ではない「インターネットは国が管理すべき」論、分断の先にあるものは?

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国際電気通信連合(ITU)では、ずいぶん前から「インターネットは国が管理すべきか」という問題が議論されている。中国・ロシアを筆頭に国による積極的な管理統制を肯定する勢力と、自由なインターネットを尊重するため、国の介入は最低限にすべきという勢力がある。国連の場では、サイバー空間の軍事利用は避けられないとして、せめて社会を破壊するような攻撃はしないよう「サイバー規範」に関する議論がされている。
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社会インフラとなったインターネット、国による統治で分断が進むのか
(Photo/Getty Images)

ネットとリアルの融合はセキュリティ問題から始まっていた

 もともとがアカデミックな研究から生まれたインターネットは、商用利用さえ禁止されていた実験ネットワークだった(インターネットとは呼ばなかった時代)。参加する大学や研究機関、企業は、ネットワークやコンピューターサイエンスといういわば狭い業界でコミュニティを形成していた。そのため、セキュリティやプライバシーの問題は、総じて制御され、機能的な制約なしに秩序が保たれていた。

 当時から、いたずら、いやがらせレベルの問題、技術や接続ポリシーの相違によるいざこざ(コントロールメッセージをサーバ管理者が勝手に運用するなど)は存在していたものの、接続している人間はエンジニアであり科学者であり、技術的なガバナンスが効いていた。

 1990年代半ば、インターネットの商用利用が解禁され、すべての企業、組織、個人が自由に使える空間となった。その後の社会・経済への浸透は説明するまでもないだろう。人々は、インターネットを基盤とするテクノロジーによって、国境や時間の制約を低減し、新しいメディア(コミュニケーション媒体)、新しい価値、新しい生活を手に入れた。

 しかし、それらはなんの代償もなし手に入れられたわけではない。多くの科学技術と同様に、テクノロジーの恩恵には必ず“影”の部分が存在する。インターネットの場合、そのひとつがサイバー攻撃だろう。

 初期の頃、サイバー攻撃はスパムやウイルスなど、コンピューターやネットワークを直接利用するものだった。いわば新しいテクノロジーが生んだ技術的な問題だったのだが、より複雑なことができるようになり、社会や生活と深くつながるようになると、リアル世界の犯罪や不正行為、いじめやヘイト、ハラスメントなどの社会問題が、サイバー空間に展開されるようになった。

 デジタルツイン、ネットとリアルの融合などという言葉があるが、サイバーセキュリティにおいては、とっくにネットとリアルが結びつき、ネット上のインシデントが実社会、実経済に影響を与えるようになっていたわけである。

社会インフラとなったネットの統治は必要か

 犯罪組織による直接的な非合法活動だけではない。民間企業による不正も広がっている。大手プラットフォーマ―は、いまだに個人情報やプライバシー情報の扱いで自らを制御しきれていない。広告や製品販売も同様だ。一部とはいえ、詐欺的行為に頼るビジネスモデルとの決別にはまだ時間がかかりそうだ。

 もちろんこれらは、インターネットだから発生している問題というわけではない。プライバシーの侵害、詐欺、差別やヘイトクライムは、本質的には、人間や社会がかかえる問題である。ネットがそれらを拡散しやすくしたり、活動を増幅したりする側面はあるかもしれないが、別の視点では、単に以前からあった問題が、ネットによって可視化されただけという見方も可能だ。

 いままでサイバー空間は、“仮想的な空間”であり、実社会ではないとして、既存の法の枠組みやルールとは別の存在として見られていたが、ここまで社会や生活に浸透すると、実社会と同様な規制、管理が必要だという議論に合理性をもたらしている。

 企業や市民の好きに使わせていては、社会の秩序が保たれない。国が責任をもって統治して、国民の生活を守らなければならないという考え方だ。

 インターネットは国が管理すべきと主張する国は、決して少数派というわけではない。理由は犯罪や治安維持だけではない。弱小国にとっては、国内市場や産業を守るという意味もある。体制主義国家にとっては、体制維持のために「ネットだから」という例外はあり得ない。

【次ページ】国によるネットの統治が進むと、ダークウェブが今のネットの役割を担う?

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