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  • 2020/08/03 掲載

『発想する会社!』から学ぶ、デザイン思考のIDEOが「ブレスト」で大切にしていること

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多くの企業がイノベーションを起こそうと試行錯誤しているにも関わらず、なかなか新しいアイデアは生まれないのが実態だ。幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行ってきた永井 孝尚氏は、その理由について「方法論が大きく変わっているからです。かつての方法論にはすでに時代遅れになっているものも多いです」と語る。今回は“世界最高のデザインファーム”として知られるIDEOのゼネラルマネージャー、トム・ケリーが著した『発想する会社!』を基に、良いアイデアが生まれる正しいブレインストーミングの方法と落とし穴を、永井氏に解説してもらった。

ウォンツアンドバリュー 代表取締役 永井 孝尚

ウォンツアンドバリュー 代表取締役 永井 孝尚

慶應義塾大学工学部(現・理工学部)を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。2013年に日本IBMを退社して独立、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供し、マーケティングや経営戦略の面白さを伝え続けている。さらに仕事で役立つ経営戦略を学ぶための「永井塾」も定期的に主宰している。 主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)ほか多数。

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問題の本質は、多くの企業が自由で新しい発想を呪縛していることだという
(Photo/Getty Images)

※本記事は『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』を再構成したものです。

誰でもクリエイティブだ

 企業の競争力は、社員の発想力やアイデア次第だ。「すごい発想力やアイデアなんて、天才でなければムリだ」と思うかもしれない。

 しかし「誰でもクリエイティブだ」と言うのが、著者のトム・ケリーだ。いまや世界を席巻するグーグルやアップルをはじめ、世界で成長する多くの企業は、本書から大きな影響を受けて組織づくりをしている。

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『発想する会社!』
トム・ケリー&ジョナサン・リットマン
※画像をクリックすると購入ページに移動します
トム・ケリーは多くの一流企業の製品開発を請け負い、そのすぐれた製品のみならず、それを生み出す企業文化までもが注目されているIDEO社のゼネラルマネジャー。兄で会社創立者のデイヴィッド・ケリーとともに経営に携わり、主にビジネス開発、マーケティング、人事、オペレーションの業務を担当。IDEOの方法論であるブレインストーミングやプロトタイプ製作を実践している。
 ケリーはデザインコンサルティング会社IDEO(アイデオ)のエグゼクティブだ。IDEOは多くの業界で新商品開発プロジェクトを支援してきた。アップルの最初のマウスも、ジョブズの依頼でIDEOが関わった。

 「デザインって、要はいかに製品をカッコよくつくるかでしょ? 自分には関係ない」と思うかもしれないが、そうではない。デザイン手法をビジネスの現場でも使える問題解決方法に発展させたのが「デザイン思考」なのだ。

 本書はIDEOが持つ4000件余りの経験を基に、2001年に出版された。ここではケリーが4年後に出版した『イノベーションの達人!』の内容も含め紹介する。

 IDEOの方法論をひと言でまとめると、(1)人がどんな課題で困っていて、(2)実際にどのように使うのかを観察し、(3)アイデアを重視して解決策を生み出し、さらに(4)解決策が本当に役立つかを確認する、という実践的なものだ。重要ポイントを見ていこう。

関連記事

デザイン思考で、発想の呪縛を解き放て!

 ハナコさんは夫の実家で、(塩辛いなぁ。ちょっとムリ)と思いながら食事中。そこへお義母さんがニコニコしながら聞く。

「ハナコさん、お味はどう?」
「とってもおいしいですわ。お義母さま」

 実は顧客もハナコさんと同じである。IDEOはあるソフト会社の依頼で、新アプリのユーザーの反応を観察した。部屋に集められた人たちは操作しにくいアプリを、顔をしかめ、ため息をつきながら不器用に使っていた。終了後にソフト会社から「改善点は?」と聞かれた彼らは、こう答えた。

「何の問題もない。改良すべき点は1つも考えられない」 

 まさに「とてもおいしいですわ。お義母さま」のハナコさんである。顧客は何がどう悪いのかをうまく説明できないのだ。だから顧客に聞くだけではダメだ。自分の目で顧客を観察し、実際に確かめるのである。

 P&Gの「クレスト」という練り歯磨きは、キャップのネジに練り歯磨きがついて乾き、キャップが閉まらなくなるのが悩みだった。そこでワンタッチ開閉式で解決を図った。しかしこれだけでは解決できなかった。顧客を実際に観察すると、昔通りの方法でキャップを何回もひねって開けようとして、逆に開けられなくなってしまったのである。

 折衷案として1回ひねるだけで開けられるキャップにしたら大好評。ヒット商品になった。現場で顧客を徹底的に観察し、何が問題なのかを見極めることが大切だ。

ブレインストーミングでアイデアが生まれない理由

 多くの会社で、アイデアを生み出すためにブレインストーミングを行っている。しかしなかなかアイデアが生まれないのも現実だ。やり方が間違っているのである。本書では「ブレインストーミングの6つの落とし穴」を挙げている。

●ブレインストーミングの6つの落とし穴

1.鶴の一声で始める
 冒頭で上司が「新しいアイデアがほしい。特許を狙うぞ」と発言したりすると、発想の自由が奪われ、部下は萎縮し、最初からアイデアは出なくなる。

2.全員に必ず順番が回ってくる
 強制してもアイデアは出ない。民主的な悪平等だ。

3.専門家以外は参加禁止にする
 凄いアイデアの多くは、素人発想だ。

4.社外(リゾートなど)で行う
 本来、その開放的な環境を自社につくるべきだ。

5.ばかげたアイデアを否定する
 奇抜なアイデアこそ、革新の種である。

6.すべてを書き留める
 書き留めている間は、アイデアは思いつかない。

 これらすべては、アイデアを生み出すブレーキだ。「ウチの社員、アイデアがないんだよなぁ」と嘆くマネジャーがいたとしたら、実はその人自身がダメな元凶なのである。

 本書では「ブレインストーミングを成功させる7つの秘けつ」も紹介している。

【次ページ】ブレインストーミングを成功させる7つの秘けつ

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