- 会員限定
- 2020/08/03 掲載
『発想する会社!』から学ぶ、デザイン思考のIDEOが「ブレスト」で大切にしていること
誰でもクリエイティブだ
企業の競争力は、社員の発想力やアイデア次第だ。「すごい発想力やアイデアなんて、天才でなければムリだ」と思うかもしれない。しかし「誰でもクリエイティブだ」と言うのが、著者のトム・ケリーだ。いまや世界を席巻するグーグルやアップルをはじめ、世界で成長する多くの企業は、本書から大きな影響を受けて組織づくりをしている。
「デザインって、要はいかに製品をカッコよくつくるかでしょ? 自分には関係ない」と思うかもしれないが、そうではない。デザイン手法をビジネスの現場でも使える問題解決方法に発展させたのが「デザイン思考」なのだ。
本書はIDEOが持つ4000件余りの経験を基に、2001年に出版された。ここではケリーが4年後に出版した『イノベーションの達人!』の内容も含め紹介する。
IDEOの方法論をひと言でまとめると、(1)人がどんな課題で困っていて、(2)実際にどのように使うのかを観察し、(3)アイデアを重視して解決策を生み出し、さらに(4)解決策が本当に役立つかを確認する、という実践的なものだ。重要ポイントを見ていこう。
デザイン思考で、発想の呪縛を解き放て!
ハナコさんは夫の実家で、(塩辛いなぁ。ちょっとムリ)と思いながら食事中。そこへお義母さんがニコニコしながら聞く。「ハナコさん、お味はどう?」
「とってもおいしいですわ。お義母さま」
実は顧客もハナコさんと同じである。IDEOはあるソフト会社の依頼で、新アプリのユーザーの反応を観察した。部屋に集められた人たちは操作しにくいアプリを、顔をしかめ、ため息をつきながら不器用に使っていた。終了後にソフト会社から「改善点は?」と聞かれた彼らは、こう答えた。
「何の問題もない。改良すべき点は1つも考えられない」
まさに「とてもおいしいですわ。お義母さま」のハナコさんである。顧客は何がどう悪いのかをうまく説明できないのだ。だから顧客に聞くだけではダメだ。自分の目で顧客を観察し、実際に確かめるのである。
P&Gの「クレスト」という練り歯磨きは、キャップのネジに練り歯磨きがついて乾き、キャップが閉まらなくなるのが悩みだった。そこでワンタッチ開閉式で解決を図った。しかしこれだけでは解決できなかった。顧客を実際に観察すると、昔通りの方法でキャップを何回もひねって開けようとして、逆に開けられなくなってしまったのである。
折衷案として1回ひねるだけで開けられるキャップにしたら大好評。ヒット商品になった。現場で顧客を徹底的に観察し、何が問題なのかを見極めることが大切だ。
ブレインストーミングでアイデアが生まれない理由
多くの会社で、アイデアを生み出すためにブレインストーミングを行っている。しかしなかなかアイデアが生まれないのも現実だ。やり方が間違っているのである。本書では「ブレインストーミングの6つの落とし穴」を挙げている。1.鶴の一声で始める
冒頭で上司が「新しいアイデアがほしい。特許を狙うぞ」と発言したりすると、発想の自由が奪われ、部下は萎縮し、最初からアイデアは出なくなる。
2.全員に必ず順番が回ってくる
強制してもアイデアは出ない。民主的な悪平等だ。
3.専門家以外は参加禁止にする
凄いアイデアの多くは、素人発想だ。
4.社外(リゾートなど)で行う
本来、その開放的な環境を自社につくるべきだ。
5.ばかげたアイデアを否定する
奇抜なアイデアこそ、革新の種である。
6.すべてを書き留める
書き留めている間は、アイデアは思いつかない。
これらすべては、アイデアを生み出すブレーキだ。「ウチの社員、アイデアがないんだよなぁ」と嘆くマネジャーがいたとしたら、実はその人自身がダメな元凶なのである。
本書では「ブレインストーミングを成功させる7つの秘けつ」も紹介している。
【次ページ】ブレインストーミングを成功させる7つの秘けつ
関連コンテンツ
PR
PR
PR