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  • 2020/10/24

“用済み”になる宗教、「人生110年時代」なんて誰も救えない

新型コロナウイルスの流行で、宗教行為は大きく制限されることになった。集団礼拝や集会は自粛され、神社からは柄杓が撤去された。葬式も規模が縮小され、会食を見合わせる場合も多い。「もしかしたら、コロナウイルスの流行は宗教にとどめを刺すことになるのでは」──『捨てられる宗教』を上梓した作家・宗教学者の島田 裕巳氏はこのように予言する。人生110年時代、人々の死生観の大転換が起こっている今、宗教は根本的な危機に直面している。

宗教学者 島田 裕巳

宗教学者 島田 裕巳

1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師。主な著書に、『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』、『葬式は、要らない』、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)などがある。とくに、『葬式は、要らない』は30万部のベストセラーになる。『プア充』(早川書房)、『0葬』(集英社)などは、タイトルがそのまま流行語になった。

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なぜ宗教は捨てられるのか?
(Photo/Getty Images)

私たちは長寿を持て余すようになっている

 2019年、年金だけでは老後2000万円が不足するという話が瞬く間に広がった。そこには誤解もあったようだが、その背景に老後の長さがかかわっているのは間違いない。

 100歳までどうやって生きたらいいのか。それが、110歳ということになれば考えようもなくなる。それまでどう生き延びていけばいいのか。とてもそのための手立てが思いつかない。誰だってそう感じてしまう。100歳になって働いて収入を得ることなど、不可能だ。

 今の私たちは、長寿を持て余すようになっている。人生のあまりの長さに、かえって不安を感じるようになっている。そんな時代は、これまで訪れたことがなかった。やっかいなことになったものである。人生があまりに長すぎるからといって、自ら命を絶つわけにもいかない。ただ、それを実践した人たちはいる。

 2016年3月、神戸市の海岸に女性の遺体が打ち上げられた。それは、兵庫県内の自宅で長く一人暮らしをしていた女性で、年齢は99歳だった。事故死ではなく、自殺だった。なぜ99歳の女性は自殺したのか。健康で、経済的にも恵まれていて子どもも立派に成長していた。一人で自殺ができるほど元気だったとも言える。それでも彼女は死を選んだのだ。

 女性は、死ぬ何年も前から、「100までなんて生きたくない」、「こんな長生きしてカッコ悪い」と言っていたという。周囲はそれを冗談と受けとっていたようだが、99歳になると、女性は身辺整理をはじめた。12月生まれなのに、ガスヒーターまで処分してしまった。女性は、日ごろ、「友だちがいない」というのが口癖だったという(『女性セブン』2016年4月21日号)。

 99歳にもなれば、友だちも皆、先にあの世へ行ってしまっている。たとえ生きてはいても、女性ほど元気ではないだろう。それでも、多くの人は、100歳を前に自ら死を選んだりはしない。

 人生110年時代は、徐々に生み出されたものである。急にそのようになったわけではない。それもあり、今の私たちは戸惑いを感じている。いつの間にか年を重ね、90歳になり、95歳になった。100歳になっているという人だって少なくない。

 2019年9月、厚生労働省は、100歳以上が7万1274人に達したと報じた。ほぼ9割が女性である(いったん7万1238人と発表されたがその後訂正された)。統計をとるようになった1963年に、100歳以上は全国で153人しかいなかった。それが、81年には1000人を超え、98年には1万人を超えた。それから20年で7万人を超えるまでになった。その時点で、男性の最高齢は112歳、女性は116歳だった。

 男性の方は、2020年2月12日に、ギネス・ブックに世界最高齢の男性として認定された。そのときにはガッツポーズができるくらい元気だったものの、同じ月の23日には亡くなっている。116歳の女性は、2020年1月2日に、無事117歳を迎えた。現状では世界最高齢で、やはりギネス・ブックに認定されている。117歳を迎えることができた人類は、確実な証拠のあるものでは彼女が10人目だという。日本人としては4人目で、日本がいかに長寿国であるかがわかる。

 これまでの世界最高齢はフランスのジャンヌ=ルイーズ・カルマンという女性で、122歳と164日まで生きた。120歳は、「大還暦」とも言われるが、大還暦を迎えた人類は彼女だけである。ただし、途中で娘と入れ替わったのではないかという疑惑もある。あまりに長寿だと、はっきりしなくなるのだ。

 確実な記録があるのは、第2位のアメリカ人の女性で、彼女の場合には119歳と97日だった。人類が120歳を超えられるかどうかは必ずしも確実ではないものの、110歳を超えて生きた人たちはいる。人生110年時代の到来は、可能性として考えられるのだ。

死がスケジュールに組み込まれた

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100年を超え、「人生110年時代」が到来するかもしれない
(Photo/Getty Images)

 もちろん、こうした事実に接しても多くの人は自分が110歳まで生きるとは考えられないだろう。ただ、100歳となると、相当に現実味を帯びてくる。90歳となれば、別に珍しくなくなった。80歳は、すでに平均寿命を下回っている。80歳で亡くなって、「まだお若いのに」と言われる時代が訪れている。

 今の私たちは、いつ死ぬかわからないとは考えられなくなっている。もちろん、病気や事故で亡くなることはある。けれども、90歳くらいまで生きることの方がはるかに確率が高い。そのため、それだけの長さの人生を前提に生きるようになってきている。いつまで生きるかわからないという旧来の死生観に立つことはもう不可能なのだ。90歳くらいまで生きることを前提に人生設計をしなければならない。

 それが新しい死生観である。新しい死生観においては、人生はスケジュール化されている。人生の終わりを90歳頃に想定し、そこから人生を逆算して考えるようになった。新しい死生観の世界では、誰もがそうした発想をする。いつの間にか、宗教の根底にある死生観が大きく変容してしまったのだ。

【次ページ】創価学会でさえ信者が減る…新宗教は人生100年時代において機能しない

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