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- 2025/07/25 掲載
YouTubeやネトフリなど注力も…アマゾンが断トツで「ポッドキャスト」を重視するワケ
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

(出典:YouTube)
「観るポッドキャスト」が月10億人視聴の巨大市場に
広告業界では、新たな広告メディアとして「ビデオポッドキャスト」への注目が高まりつつある。ポッドキャストとは、「定期購読される長尺のトーク番組」。これまでは音声のみのコンテンツがSpotifyなどで配信されるのが一般的だった。しかし、動画コンテンツへと変貌を遂げ、最近ではSpotify以外のプラットフォームで配信されるケースも増加し、多くの視聴者を惹きつけている。特に、ビデオポッドキャストプラットフォームとして存在感を高めているのがYouTubeだ。
2025年初頭、YouTubeは月間10億人以上がポッドキャストコンテンツを視聴していることを明らかにした。このうち毎月約4億時間のポッドキャストがテレビで視聴されており、リビングルームでの大画面視聴が定着しつつあるという。
人気ポッドキャストの中には、従来のテレビ番組をしのぐ視聴者数を誇るものも出現。たとえば、ケルス兄弟の「New Heights」はYouTubeで約260万人の登録者を持ち、「Call Her Daddy」は130万人の登録者を獲得している。
2024年秋時点の調査でも、週次ポッドキャストリスナーの3人に1人が動画付きポッドキャストを好み、ホストやスタジオの様子を画面で見たいと回答。さらに、週次ポッドキャストリスナーの約13%は動画のみでポッドキャストを視聴し、音声のみのバージョンは聴かないと回答するなど、ビデオポッドキャスト人気の高まる兆候が報告されていた。
2024年後半の時点で、米国におけるストリーミング視聴は全テレビ視聴時間の約43%を占め、放送やケーブルテレビを上回る規模となった。
2025年2月には、YouTube単体で全テレビ視聴時間の11.6%という過去最高のシェアを記録。65歳以上の高齢層でさえ、テレビでのYouTube視聴時間が2年間でほぼ倍増するなど、世代を問わず視聴行動が大きく変化。この流れも注目を高める材料となっている。月間10億人が視聴するメディアとなったビデオポッドキャスト。しかし広告主が注目するのは、規模だけではなかった。
テレビを超える存在にも?商談イベントの変化
ビデオポッドキャストへの注目度の高まりは、米テレビ業界で毎年5月頃に開催されるイベントUpfrontsの変化からも見て取ることができる。Upfrontsとは、テレビや動画プラットフォームが、次シーズンのコンテンツと広告枠をあらかじめパッケージで売り込む大規模な商談イベント。「先払い(up front=前払い)」に由来し、番組放送前の段階で広告枠をまとめて買い付けてもらう仕組みを指す。
もともとテレビ業界向けのイベントだったが、最近では、ストリーミングプラットフォーム、音声パブリッシャー、テック大手まで参加するイベントへと進化。テレビ広告予算の獲得を狙って各社さまざまなコンテンツをアピールする場となっている。
たとえば、2022年後半には広告を導入したネットフリックスが参戦。2024年5月14日には、広告付きプランの月間アクティブユーザー数が9400万人に増加したことを発表し、広告媒体としての存在感を一層強めている。また2025年5月には、アマゾンが2回目となるUpfrontsプレゼンテーションを開催している。
CNBCによると、このUpfrontsイベントでメディア企業は新しいテレビシリーズに加え、ポッドキャストを広告主への売り込み材料として積極的に取り上げているのだ。5年前のUpfrontsではほぼ考えられなかった光景だとされる。
この変化の背景には、視聴者がプラットフォーム間で分散している現実がある。この分散により、プライムタイムのテレビ番組だけではなく、YouTube、Spotify、アマゾンのPrime Video、Tubiなど、あらゆるプラットフォームで視聴者にリーチすることが広告主の課題になっているのだ。
こうした動きの中、ビデオポッドキャスト分野で先行する企業の1つがアマゾンだ。
【次ページ】アマゾンがポッドキャストを最重要コンテンツに位置付けたワケ
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