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- 2025/07/17 掲載
Netflixがほぼ「毎年値上げ」でも絶好調、解約すら歓迎…「脱DVDレンタル」級の大変革
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

値上げを続けても「純利益61%増」など絶好調
動画サブスクのインフレが止まらない。Netflixでは1月に価格改定を行い、広告付きスタンダードプランの価格が、以前の広告なしのベーシックプラン(現在は新規受け付けを終了している)の価格とした。一方で広告なしプランはその2倍に値上がりしている。具体的には、広告付きスタンダードが1ドル上昇して7ドル99セント(約1,171円)、広告なしスタンダードが2ドル値上げで17ドル99セント(約2,637円)、プレミアムも2ドル上げて24ドル99セント(約3,663円)だ。なお、日本では2015年9月から2024年10月の値上げで、料金が約1.5倍となっているが、2025年中に再び値上げされる可能性も指摘されている。

こうした中でも、Netflixは絶好調だ。まず、高額予算がついた強力なオリジナルコンテンツの人気により、会員数が2024年末で3億200万人に達した(図3)。2位の競合Disney+の1億5360万人と比較してほぼ2倍を誇ることが挙げられる。

加えて、広告付きプラン導入と並行してパスワード共有の取り締まりを行い、新規加入者を増やしてきた。特に、米国を含む広告付きプラン提供国では新規加入者の55%が広告付きを選択するという。
さらにNetflix会員の解約率は、2022年末の広告付きプラン導入後に1ポイント超ほど上昇して一時3%に近づいたが、2024年7~9月期におよそ2.5%へと低下(図4)。会員は、コンテンツ力で劣る競合を解約しても、Netflixだけはやめない傾向が見える。ライバルから顧客を奪い続ける、圧倒的な強さがNetflixにはある。

日本においても、Netflix(など特定の配信サービス)は継続しつつ、他のサービスは気になる作品がある時だけ加入する、という利用方法は珍しくなさそうだ。
このように、Netflixでは値上げが毎年のように行われているにもかかわらず、直近では会員の解約率の上昇は見られない。逆に会員数が全体で増え、さらに売上が2024年に前年比15.65%増の390億ドル(約5.92兆円)、純利益は61.09%伸びて87.12億ドル(約1.32兆円)に達するなど、悪影響が認められないのである。
そしてNetflixのさらなる値上げの可能性について、多くのアナリストの答えは「イエス」であるようだ。ではなぜ、これだけ強気に値上げを続けても好調を維持できるのか。その背景にはビジネスモデルの変革が挙げられる。
【次ページ】「ビジネスモデル大変革」の中身
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