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  • 2021/01/19 掲載

「DXレポート2」を解説。“2025年の崖”から2年、国内企業の現状とこれからは?

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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経済産業省は、2018年9月に「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を公表し、以降、DX推進ガイドラインやDX推進指標を策定、DX推進に資する施策を展開してきました。同レポートの発行から2年が経過する中で、新型コロナの世界的流行などにより、企業を取り巻く環境の不確実性は高まっています。こうした中で経済産業省は、日本のDXを加速していくための課題、及び対策のあり方についての議論を重ね、その中間報告「DXレポート2」を2020年12月28日に公表しました。これらのレポートから見られるDX政策の結果や今後企業が取るべき戦略について考察しました。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

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記事前半では2018年発表の「DXレポート」を振り返り、後半から「DXレポート2」に踏み込んでいく
(Photo/Getty Images)

2018年9月、「DXレポート」が訴えた危機感

 2018年9月に経済産業省が発表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』には、多くの経営者が、将来の成長・競争力強化のためにデジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの創出などを推進するDXが必要であること理解しているものの、それを阻むものとして以下のような課題があると記されています。

  1. 既存システムが、事業部門ごとに構築されているため、全社横断的なデータ活用ができていない。

  2. 既存システムが、標準システムに過剰なアドオンやカスタマイズをして構築されているため、複雑化・ブラックボックス化されている。

  3. データ活用を実現するための既存システムの改修や、データ活用のための業務の見直し要求に対する現場の抵抗が大きい。

 そして、この課題を克服できない場合、DXを実現できないだけでなく、2025年以降大きな経済損失が生じる可能性があることが「2025年の崖」として記されています。同レポートではDXを実現するために必要なこととして、次の2点をあげています。

  1. 既存システムのブラックボックス状態を解消し、データをフル活用できる状態にすること。

  2. デジタル技術を導入し、デジタルネイティブ世代の人材が中心となり、新ビジネス創出とグローバル展開を進めること。

 欧米のプラットフォーマーがデータを活用したビジネスを進める中、日本のデータ活用への取り組みが遅れた場合、日本はデジタル競争の敗者になってしまうという強い危機感がこのレポートの背景にあったと思われます。



目安としての「DX推進指標」と「DX銘柄」

 DXレポートの発行後、経済産業省は企業におけるDX推進を後押しすべく、企業への働きかけ、市場環境整備の両面から策を展開してきました。

 企業内への働きかけとしては、「DX推進指標」による自己診断の促進やベンチマークの提示、市場環境整備としては、デジタルガバナンス・コードやDX認定、DX銘柄によるステークホルダーとの対話の促進、市場からの評価などが実施されています。

 2019年7月に発表された「DX推進指標」は、DXレポートにおける指摘などを踏まえ企業がDXの推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供するものとして策定されています。

 各企業が簡易な自己診断を行うことを可能とするものであり、各項目について、経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などが議論をしながら回答することを想定しており、DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する定性・定量指標と、DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する定性・定量指標から成り立っています。


 DX推進指標ではDXの成熟度レベルをレベル0~5の6段階で定義をしています。

画像
成熟度レベルの基本的な考え方

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2020年に発表した「DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート」によると、全企業における全指標の平均現在値は1.45となっています。

 また全企業の平均目標値は、全指標3.05であり、一般的な企業は、レベル3の全社戦略に基づいて部門横断的に推進できるレベルを目指しており、現状ではレベル2の全社戦略に基づく一部の部門での取り組みにも至っていないことがわかります。

 一方、全企業の5%にあたる先行企業の平均現在値は全指標3.40であり、レベル3の全社戦略に基づくDX推進の取り組みが定着されてきていると推察されます。

 先行企業の平均目標値は全指標4.62となっており、グローバル市場でも存在感を発揮し、競争優位を確立できるレベル4を目標としている企業が多く含まれることがわかります。DXへの取り組みが進んでいる企業とそうでない企業の間には大きな差が生じているといえます。

 また、経済産業省は2020年から、デジタル技術を活用してビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくDXに取り組む企業を、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定し、DXへの取り組みに向けたモチベーション向上をはかっています。

DXレポートが生んでしまった「誤解」

 一方、このDXレポートの内容が本来の主旨と異なる受け止められ方をし、一部において「DXとはレガシーシステムの刷新である」といった誤解を生んでしまったと言われています。

 また、「現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である」と解釈した企業もあったようです。

 新型コロナの世界的流行という誰も予測できなかったパンデミックが到来する中、企業には環境変化に対し、素早く変化し続ける能力を身に付けることが求められており、デジタル技術やITの活用を目的とするのではなく、本来のDXの目的であるビジネスモデルの変革が求められています。コロナ禍においては、変化に迅速に適応できた企業と、そうでない企業の差は従来に増して開きつつあります。

【次ページ】「DXレポート2」での見直しは?見えてきたDXの本質

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