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  • 2021/08/04 掲載

APM(アプリケーションパフォーマンス監視)とは?15社比較、アマゾンはなぜ使うのか

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DXプロジェクトに共通する最終成果物は、ほとんどの場合「アプリケーション」だろう。ユーザーから見ると、このアプリの動作が速いか遅いかが、使い勝手を左右するし、ビジネスの結果にもつながる。世界最大のECサイトを運営するアマゾンは、サイト表示が1秒早くなれば、売り上げが1割伸びるという。ここではアプリの体験を向上させる「アプリケーションパフォーマンス監視(Application Performance Monitoring :APM)」を基礎から解説しつつ、シスコ(AppDynamics)、Dynatraceなど業界の主要プレイヤーも紹介していこう。

執筆:友永 慎哉

執筆:友永 慎哉

製造業向け基幹系システムの開発を経験後、企業ITの編集、ライター業に従事。ファイナンス、サプライチェーンなど、企業経営の知識を軸にした執筆に強みを持つ。インダストリー4.0など新たな技術による製造業の世界的な変革や、Systems of Records(SoR)からSystems of Engagement(SoE)への移行、情報システムのクラウドシフトなどに注目する。GAFAなど巨大IT企業が金融、流通小売り、サービスといった既存の枠組みを塗り替えるなど、テクノロジーが主導する産業の変化について情報を収集・発信している。

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アプリケーションパフォーマンス監視(APM)を基礎から解説する
(Photo/Getty Images)

アプリケーションパフォーマンス監視とは

 アプリケーションパフォーマンス監視(以下、APM)とは、システムやアプリケーションの性能を管理、監視するツールを指し、アプリケーションパフォーマンス管理とも呼ばれている。

 調査会社のガートナーは、APMを「アプリケーションの動作とそのインフラの依存関係、ユーザー、アプリケーションのライフサイクル全体にわたるKPIの監視を可能にするソフトウエア」と説明している。

 監視できるアプリケーションは、ERPなどのパッケージソフトウエア、SaaS、自社開発ソフトウエアなど多岐にわたっており、アプリケーションのパフォーマンス悪化をもたらす要因を全体的な視点から把握できる。障害が発生した際は、迅速にアラートを通知し、原因を特定する。

 現代の企業におけるシステム環境は、過去から継承したオンプレミスシステムや仮想化システムに加え、IaaS、PaaS、SaaSなどのクラウドサービスなどが混在しており、それらが連携して構成されている。これらのシステムの稼働状況を横断的にまとめて管理することで、パフォーマンス悪化によるビジネス面の損害を防ぎ、運用負荷を軽減するために導入するのがAPMである。

 APMの主要機能は次の通りである。

  • ビジネス的なKPIとユーザー体験の分析
  • アプリケーションとそのインフラコンポーネントの自動検出、マッピング
  • クラウドアプリケーション監視
  • HTTPS/アプリケーショントランザクションの動作の監視
  • モバイルやデスクトップブラウザーで実行されているアプリケーションの監視
  • 自動化、サービス管理ツールとの統合
  • CPU利用率/帯域消費率の監視
  • ミドルウェア/ランタイム管理
  • パフォーマンス問題の根本的な原因とビジネス成果への影響を特定

 このほかに、ユーザー体験とそれがビジネス成果に与える影響を把握するためのエンドポイント監視や、仮想デスクトップ(VDI)監視なども含まれる。

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APMの主要な機能一覧

APMを活用するメリット

 通常の運用管理では、ネットワーク、サーバ、データベースなどのシステムに付属する管理ツールから出てくるログを基に問題点を把握し、アプリケーションのパフォーマンス悪化の原因を把握する。だが、これでは個別の事象が全体に影響を与えていることを把握するまでに時間がかかることがある。

 一方で、APMではエンドユーザーの視点からアプリケーションを監視するのが特徴だ。「ウェブが遅いな、なぜだろう」といった感覚に沿って原因を究明できる。いわば監視専門のエンジニアが24時間365日画面を見つめているようなイメージで、監視を継続できるわけだ。

 それを踏まえて、APMの特に注目しておきたいメリットを整理する。

1.売り上げの増加
 アマゾンは2007年「サイト表示が0.1秒遅れると、売り上げが1%減少する。1秒速くすると1割向上する」という分析結果を公表した。Kissmetricsは2017年に「47%の消費者は2秒以内にウェブページが読み込まれることを期待し、40%のユーザーは読み込みに3秒以上かかるとウェブサイトから離脱する」と示すなど、ウェブサイトのパフォーマンスが売り上げに直結することが古くから指摘されている。

 遅延によるユーザーのストレスを解消することは、顧客満足度を高めて新旧のユーザーを引き込むだけでなく、競合他社への流出を防ぐ意味もある。攻めと守りの両面で、継続的に売り上げに寄与するわけだ。さらに、評判の低下など、派生的な要因が絡む損失を回避できる。

2.迅速な障害対応
 すでに指摘している通り、APMによりユーザー視点で複雑な情報システム環境を横断して監視し、パフォーマンスの悪化など不具合の原因を迅速に測定できる。これが障害対応の迅速化を促す。これにより、システム管理者の負担が軽減することに加え、ビジネスのダウンタイムを小さく極力抑えることができる。

APMのデメリット

1.アプリケーション管理が複雑化することがある
 APMによってアプリケーションのパフォーマンスを管理しようとするため、管理者は企業が持つ複数のアプリケーションを理解する必要が出てくる。さらに全体的な視点でシステムの状況を分析するなど、管理自体の難易度が上がる。優れたAPMツールが多く提供されているものの、アプリケーション管理者にとってハードルの高い仕組みになる可能性がある。

2.高コストになる可能性
 APMを実施するためには専用ツールが必要となり、高額なものも多い。今後、機械学習や振る舞い検知などの最新テクノロジーを採り入れる場合は、さらにコスト負担が増える可能性も考慮しなくてはいけない。

【次ページ】クラウドシフトでAPM導入を検討する企業が増加

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