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  • 2021/08/23 掲載

KPIとは何か、メリットや設定方法を『KPI大全』著者に聞いた

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現代のビジネスにおける目標を達成する上で重要な役割を担う「KPI(Key Performance Indicators/重要業績評価指標)」。KPIの設定・活用によって、さまざまな事業活動やプロジェクトを定量化・可視化でき、企業全体や部署、従業員一人ひとりの現状と目標のギャップの確認や、目標達成までに必要な具体的な施策に活用することが可能になるという。どうすれば、自分の業務にKPIを取り入れることができるのか。『KPI大全―重要経営指標100の読み方&使い方』の執筆者である、嶋田 毅氏に、KPI設定のノウハウを聞いた。

執筆:翁長潤、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

執筆:翁長潤、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

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KPIの本質を、グロービスの教員が解説する
(Photo/Getty Images)


KPIとは何か?定義と具体例

――2020年に執筆された『KPI大全』では、計100種類のKPIを取り上げられています。あらためて、KPIとはそもそも何か、教えてください。

嶋田毅氏(以下、嶋田氏):KPIとは重要業績評価指標のことで、かみ砕くと「経営がうまくいっているかどうかを見える化した数字」と言えるでしょう。

 「KPI」という言葉が日本でも導入されたのは、1990年代ごろのことです。私は2000年頃にも企業経営のさまざまな指標に関する書籍を執筆しましたが、「出店エリアの人口」「失業率」など外部環境や経済的な側面に関する内容等も多く、当時を振り返ると、対象を広げすぎたという印象でした。しかし近年はKPIへの関心度が高くなり、一般的なビジネス用語になりました。そこで今回は主に企業内で使われるKPIに絞って1冊の書籍にまとめました。

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グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長
嶋田 毅氏

――KPIによって「経営がうまくいっているかどうかを見える化」する、とはどういうことでしょうか。

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『KPI大全』
(画像をクリックすると購入ページへ飛びます)
嶋田氏:「経営」とは、目に見える形があるものではありません。従業員の活動状況や顧客の反応などを数値化することで、そこから施策を打ち出せるようになります。KPIを使うことで、何か問題が起こったときにすぐにそれが発見しやすくなるのです。

 たとえば「売上」の状況を知りたい場合、単に総金額が分かるだけではあまり意味がありません。「顧客単価」「顧客数」などのKPIへとブレークダウンして分析すると、より分かりやすくなります。

 あるいは顧客満足度の場合、単に顧客の表情を見ただけでは分かりませんから、「顧客アンケートによる満足度」や「リピート率」、あるいは、いわゆる「ネットプロモータースコア(NPS)」をKPIとして取ることで、実際の顧客満足度をより緻密に理解できるでしょう。

『KPI大全』で紹介された100の指標

■マーケティング
売上高/市場シェア/顧客内シェア/認知率/使用経験率/市場カバレッジ/配架(配荷)率/既存顧客維持率/NPS/客単価/坪当たり売上高
■セールス
営業担当者1人当たり売上高/新規顧客数/問合わせ数/SQL数/RFP数/成約率/受注期間/営業担当者のコンピテンシー/価格維持率
■Webマーケティング
CPA/LTV/継続率/流入数/平均セッション時間/直帰率/クリック率/コンバージョン率/ユニークユーザー数/ダウンロード数/有償転換率/翌日再訪問率/送客数/フォロワー数/シェア数
■オペレーション
スループット/稼働率/納期遵守率/提供スピード/不良品率/カイゼン提案数/トラブル件数/ヒヤリ・ハット報告数/プロジェクト予算超過率/ロボット化率/商品ロス率/売上高物流費率
■イノベーション
売上高研究開発費率/特許数/新製品数/開発案件数/社外シーズ比率/開発期間/新製品の売上高比率
■組織
従業員1人当たり売上高/従業員1人当たり人件費/労働分配率/従業員の平均年齢/従業員増加率/離職率/本社費率/正社員比率/中途採用数/階層数/従業員満足度/カルチャーサーベイ/1人当たりの人材開発投資/女性比率/有給消化率/内定辞退率/社外取締役比率/SDGsへの貢献
■会計
売上総利益率/売上高営業利益率/売上高経常利益率/売上高税引後利益率/包括利益/ROA/ROE/自己資本比率/当座比率/在庫回転期間/CCC/固定費/限界利益率/損益分岐点売上高/製造原価/EBITDA
■ファイナンス
フリーキャッシュフロー/WACC/NPV/ROIC/EVA/実効税率/株価/売上高成長率/1株当たり配当額/海外売上高比率/銀行預金残高/バーンレート

KPIを利用することの4つのメリット

――KPI活用によって、どのようなメリットがありますか。

嶋田氏:第一に、KPI設定によって、問題の早期発見や解決が可能になります。たとえば、顧客満足度の調査では、これまでは5点満点中の「4.6」で続いていたのに、急にその数値が「4.1」に下がっていたとしましょう。これまでと違うことが数字でも明らかとなっているので、すぐに「何か問題が起きたのでは」と気がつくのではないでしょうか。KPIによって計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルをしっかり回すことができる点は重要なポイントです。

 第二に、KPIはメンバーの日々の業務への意識を高めます。人間には、「測定できないものには意識を向けない」という性質があります。逆に言えば、測定されたものには、人間の意識が向くということ。さらに、それに紐づく形で評価による賞罰があることで、モチベーションにつながります。

 第三に、リーダーがKPIの指標を定めること自体が、メンバーへのメッセージとなります。たとえば経営者が「今年度の我が社は“顧客満足度”の向上に徹する」と打ち出し、それを従業員が見える場所に数値化して張り出したとします。これにより、従業員の多くが、顧客満足度について意識することにつながります。反対に、企業の経営層や事業部門のリーダーが、KPIを特定したり、明確に示したりできなければ、メンバーはチームがどこに向かっているのか分からず、迷走する可能性があります。

 第四に、自社の強みや改善点も見いだすことにもつながります。なぜなら、実際にKPIを使う場合は、比較による分析が重要となるためです。たとえば、時系列や対前年比、部署別、競合他社との比較などは定番です。競合他社との比較は難しいケースもありますが、NPSでは自社と競合企業に関するアンケートで測ることも可能です。そのようにKPIを用いて比較することで、自社のどこが弱点なのか、競合に比べたときの優位性は何かなどを特定することができます。

【次ページ】KPIを設定する方法、まずは結果指標から逆算すること

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