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  • 2022/04/05

AWSが「とどめを刺した」メインフレームの終焉、市場を巡る富士通、IBM、NECの思惑

富士通は2030年度末(2031年3月)にメインフレームの製造・販売から撤退することを明らかにした。60年以上に及ぶとも言われるメインフレームの歴史が幕を閉じることになる。日本のコンピュータ業界の中心であり続けたメーカーの国産メインフレーム事業の終焉に期日が切られた格好だ。コンピュータ黎明期から築き上げられてきた“歴史あるシステム”から、時代の流れを受けてスムーズにクラウドに移行することは、基本的には建設的な話である。しかし、近年クラウド化によるメリットが強調される中、その流れに乗ることのできない事情を抱える業界も多くあるようだ。

執筆:友永 慎哉

執筆:友永 慎哉

製造業向け基幹系システムの開発を経験後、企業ITの編集、ライター業に従事。ファイナンス、サプライチェーンなど、企業経営の知識を軸にした執筆に強みを持つ。インダストリー4.0など新たな技術による製造業の世界的な変革や、Systems of Records(SoR)からSystems of Engagement(SoE)への移行、情報システムのクラウドシフトなどに注目する。GAFAなど巨大IT企業が金融、流通小売り、サービスといった既存の枠組みを塗り替えるなど、テクノロジーが主導する産業の変化について情報を収集・発信している。

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メインフレームの歴史はおよそ60年におよぶ

メインフレームの余命に「とどめを刺した」AWSの発表

 メインフレームの2018年に経産省が示したDXレポート「ITシステム2025年の崖の克服とDXの本格的な展開」の中で既に問題視されていた。コンピュータ黎明期から築き上げられてきた「レガシーシステム」は、日本がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実施する上で障壁となっているとの指摘である。

 では、DXの障壁となり得るレガシーシステムとは、具体的にどのような業界のどのようなシステムなのか。それらの業界は、今後どのような施策を取ろうとしているのか。

 富士通のメインフレーム事業からの撤退が明らかになったおよそ3カ月前、関連する動きがあった。それが2021年11月30日のアマゾン ウェブ サービス(AWS)の発表である。メインフレームとレガシーワークロードをより迅速にクラウドに移行できるという新サービス「AWS Mainframe Modernization」を発表したのである。

 メインフレーム上で動いているCOBOLなどのアプリケーションワークロードを、AWSのサービスを使ってマイグレーション(移植)するための専用サービスと、それをAmazon EC2で動作させるためのランタイムがセットになっている。

 クラウドシフトを強力に推進するAWSが、レガシーシステムから脱却できずにいるメインフレームユーザーを明確なターゲットとしたことは明らか。AWSの新サービスの登場は、国内外のメインフレームメーカーのビジネスに大きな影響を及ぼすと考えられる。

 クラウドでは代替できないメインフレームの機能は数多く存在すると言われているが、同時にそれがDX実行のボトルネックになっている面がある。

 そのメインフレームが担っていた機能をAWSのサービスによってモダナイズ(現代化)することが可能になるというのが先のAWSの発表と同社の主張だ。

 メインフレームの領域に、クラウドならではのスピード、セキュリティ、回復力、弾力性、コスト効率などのメリットを導入できるという。

 市場関係者は、「聖域」とも呼ばれるメインフレームからの移行というターゲットを絞り切ったサービスに、AWSが本気で挑んでくるとは想像していなかったと考えられる。

 金融やインフラ系などのミッションクリティカルな領域では今も十分に「現役バリバリ」であるメインフレームだが、ついに「聖域なきモダナイゼーション」の波が押し寄せようとしている。

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「過去の技術的負債が解消されないシステムを保有しているため、IT関連費用の80%は現行システムの維持管理に使われ、ビジネス競争領域への投資は十分でない」という
(出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討」)

国産メインフレームの動き

 今後を展望するために、日本でのメインフレームの動きをおさらいしておく。

 富士通は、1980年代、IBMに対抗するために互換機を作るなど、メインフレーム市場では今なお国内最大手のメーカーである。

 また、東京証券取引所の株式売買システム「arrowhead」や世界最速のスーパーコンピュータ「京」(2010年)、「富岳」(2020年)など、オープン化、ダウンサイジング化を経た今でも、国内のコンピュータメーカーとして常に話題の中心になってきた。

 その富士通も世界シェアでは4.7%。IBMは93.4%と、20分の1にまで追い込まれている(ガートナーの2020年メインフレームの世界売上高シェア調査)。

 そして、メインフレームのユーザーの多くは、国内トップのそうそうたる企業が並ぶ。

 しかし、複雑化、ブラックボックス化したレガシーシステムを今すぐにDX化できない状態にあるのも事実である。富士通の撤退が10年後に設定されているのも、そのための猶予期間と言えるだろう。

 もともと長期的にメインフレームの存在感が薄れていくことは予想されており、従来から富士通はクラウドサービスへかじを取ろうとしていた。同社が持っていたクラウド関係のサービスを「FUJITSU Hybrid IT Service」というサービスに集約、コンサルティングから移行・運用など一連のソリューション事業を展開している。

 一方、国内のメインフレーム事業を行うメーカーとして残ることになるNECは自社のウェブサイトで「ACOSシリーズ継続宣言」をしている。2032年ごろまでのメインフレーム製品ロードマップを公表し、メインフレーム開発を継続する構えだ。

 共通点は、メインフレームユーザーが持つソフトウエア資産の延命である。クラウドシフトすることが決して簡単ではないことを示しているとも言えそうだ。

【次ページ】IBMの対抗策

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