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  • 2022/07/15

次世代の食事はこうなる。録食と3Dフードプリンターでのサイバーとフィジカルの融合

「代替肉」や「培養肉」で盛り上がるフードテック。しかし、新しいテクノロジーで生み出された新しい食品が消費者に本当に受け入れられるかどうかは、また別の話だ。『「食」の未来で何が起きているのか 「フードテック」のすごい世界』などの著書を持つ宮城大 石川伸一教授自身も、フードテックで作られた新しい食品がどうやって社会や消費者に受け入れられるのかという社会実装に関心を持っているという。そこで後編では、同氏の最新の研究内容をもとに、新しい食品が受け入れられる条件、人と人がともに食事する「共食」の変化などについて話を聞いた。

執筆:井上健語、聞き手:編集部 松尾慎司、構成:編集部 玉田萌

執筆:井上健語、聞き手:編集部 松尾慎司、構成:編集部 玉田萌


目指すのはサイバーとフィジカルにおける「食の融合」

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宮城大学 食産業学群 教授
石川 伸一 氏
東北大学大学院農学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、北里大学助手・講師、カナダ・ゲルフ大学客員研究員(日本学術振興会海外特別研究員)などを経て、現職
 私の専門は分子食品学、分子調理学、分子栄養学です。これは、分子レベルで食品の成分、調理方法、栄養などを研究する学問であり、特に「おいしさの研究」を行っています。食品中のおいしさに関わる構造は何か、人はなぜおいしいと感じるのかなど、そのメカニズムを研究しています。

 いま個人的に関心があるのは、フードテックで作られた新しい食べ物が、最終的にどうやって社会に受け入れられていくのか、どうすれば消費者に受け入れられるのかという社会実装の部分です。

 たとえば、遺伝子組み換え技術で作られた培養肉は受け入れられるのか、ロボットが作った食べ物を人は本当に食べるのか、どういう技術が受け入れられて、どういう技術は受け入れられないのかに関心があります。

 また、さまざまな方法で食を記録する「録食(ろくしょく)」にも取り組んでいます。いま私の研究室では、CTスキャナを使ってさまざまな料理をスキャンしてデータ化しています。集めたデータはサイバー空間にアップロードし、離れた場所でダウンロードして3Dフードプリンターで食べ物を印刷することを考えています。

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石川教授が目指す「食品・料理のサイバーとフィジカルの融合」
(出典:石川教授提供資料)

 3Dフードプリンターとは、たとえばペースト状にした食材などを使って、デジタルデータに基づいて、食品そのものを立体的に造形する3Dプリンターのことです。

 私が目指しているのは、サイバーとフィジカルにおける食の融合です。

「録食」の目指す未来

 たとえば、全国各地には失われつつある伝統料理があります。また、特別な職人にしか作れない料理もあります。こうした料理の形、色、味、食感、香りといったデータを記録しておいて、3Dフードプリンターでいつでも再現して食べられるようにしたいと考えています。

 あるいは、ある人が小学生のときに初めて作った料理を記録しておけば、数十年後に印刷して再現するといった使い方も考えられます。

 また、3Dフードプリンターは介護食の分野でも活躍します。介護食の対象はそしゃく力の衰えた高齢者なので、食べ物は柔らかくしなければなりません。その結果、どうしてもペースト状になり、食欲が湧かないという欠点があります。

 しかし3Dフードプリンターを使えば、本物の料理に近づけることができます。たとえば焼き魚であれば、身と皮で異なる素材を使うことで見た目だけでなく、味、食感も本物に近づけることが可能でしょう。

 食品をデータ化する「録食」と3Dフードプリンターによって、これまでになかったまったく新しい料理を作り出すこともできます。

 たとえば、録食したデータをデジタル編集し、いろいろな料理のおいしいところだけ抜き出した料理、その人に最適な栄養素を持つ料理など、この世に存在しない空想の料理を作ることもできるでしょう。

【次ページ】コロナ禍によって変わりゆく「食事」のカタチ

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