- 2023/10/19 掲載
アングル:株価乱高下の裏に海外短期筋、すくむ国内の機関投資家
[東京 19日 ロイター] - 「2日新甫(しんぽ)は荒れる」ーー10月の株式市場は、相場格言を地で行くような荒い動きをみせている。米金利や中東情勢の緊迫化という材料を前に海外の短期筋が積極的に売買を仕掛け、日経平均は大きく上下に振らされる展開が続く。一方、国内の機関投資家は、不透明感が強まる中でいったん手控え姿勢をとっている。
19日の東京市場でも「米金利の上昇が止まらず、手の出しようがない」(国内証券のストラテジスト)との声が漏れ聞こえた。
前日に16年ぶりの高水準に上昇した米長期金利は、時間外取引でも上昇し続け、一時4.96%を上回った。中東情勢や、それに伴う原油高への警戒感も継続し「ダブルパンチ」の様相で、日経平均は一時600円超安に下落した。
売買代金は3兆円を上回ったが、出来高は12億株と多くない中、取引の主体は海外短期筋を中心にした超高速取引(HFT)など、金利動向で売買する機械的な取引が主体との見方が多く「ごく短期的な上下動が強まっている印象」(同)という。
東証の前場と後場の間の立会外の「バスケット取引」は市場筋によると30億円弱だった。主に国内年金や信託銀行が利用し、100億─300億円程度となるのが通例とされ「国内機関投資家の手控えがうかがえる」(別の国内証券アナリスト)との指摘が聞かれる。
中間決算シーズンが近づく中、市場では「期待は高く、株価上昇に弾みがついてほしい。ただ、モヤモヤした中ではいい材料も吸収されかねない」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャー)との声がある。
「基調は崩れていないだろうが、地政学と金利が落ち着いてからでも買うのは遅くない」(藤原氏)という。
「金利に振り回される局面は続きそうだ」と、フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドはみている。この日の国内の長期金利は、海外金利の上昇を受けて0.840%と、2013年7月以来10年ぶり高水準を付けた。
前週は、イスラム組織ハマスとイスラエルの紛争が伝わる中でも、半ば無視する形で株高になった。FRB高官らのハト派寄りの発言が相次いだことで、米金利が低下基調にあったことが好感された。
前日は、米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、政策金利を当面、高水準で維持する必要があると発言し、金利上昇に弾みがついた。米市場の時間外取引では、決算が好感されたネットフリックスが買われ、東京市場でもグロース株が支援されてもよさそうなところだったが、ほとんど織り込まれなかった。
31日から11月1日に開催するFOMCを前に、当局者が経済や政策見通しに関する発言を禁じられる「ブラックアウト期間」に入る。
値動きが不安定な中、「水先案内」を失うことにもなる。「FOMCにかけてはボラティリティが高まりそうだ」と、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストはみている。
今晩に講演が予定されるパウエルFRB議長は市場に落ち着きを与えられるか、発言の重みが増しそうだ。
(平田紀之 編集:橋本浩)
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