- 2025/05/01 掲載
見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=日銀総裁
Takahiko Wada Kentaro Sugiyama
[東京 1日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は1日、金融政策決定会合後の会見で、米関税政策の影響で基調的な物価上昇率が2%に到達する時期は「やや後ずれ」するものの、2027年度までの見通し期間内に2%に達するとの見通しは維持されているとし、利上げ路線は変わらないと説明した。新たな見通しの実現に「自信がかなり持てれば、利上げになる可能性は十分にある」とする半面で、米国の関税政策の帰すう次第で見通しそのものが変化する可能性があると話した。
日銀はこの日、金融政策の現状維持を全員一致で決定。展望リポート(経済・物価情勢の展望)では、米国の関税措置を含む各国の通商政策の影響を踏まえ、成長率と物価の見通しを引き下げた。
総裁は会見の冒頭、展望リポートの前提を説明した。各国間の関税交渉がある程度進展することや、グローバルサプライチェーンが大きく毀損(きそん)されるような状況は回避されることなどを前提に作成したと述べた。「それでも無視できないレベルの関税が残るということを前提にした見通しだ」と話した。
植田総裁は、現在の実質金利は極めて低い水準にあり、日銀の見通しが実現していくとすれば経済・物価情勢の改善に応じて利上げしていくことになると述べた。一方で、各国の通商政策を巡る不確実性は極めて高く、見通しが実現していくか予断を持たずに判断していくことが重要だと指摘した。経済・物価の中心的見通しの確度は「これほどまでには高くない」とも述べた。
基調的な物価上昇率の経路について、植田総裁は「これまでのように割と単調に基調的物価が2%の上昇率に収束していくという姿から、いったんちょっと足踏みするようなところを経て、また上昇するという姿にやや修正している」と説明。その中のどこで見通しの確度が高まったか判断できるかは「なかなか難しい問題だ」と語った。
基調的な物価上昇率が2%に到達する時期はやや後ずれしたものの、利上げ時期が同じように後ずれするかは「必ずしもそうではない」とし、「2%に到達する可能性が高いと判断すれば利上げする」と語った。
米国の関税政策の影響については、海外経済の減速、日本企業の収益減少、不確実性の高まりによる支出の先送りなどを通じて、経済の下押し要因になると指摘。物価に対しては、成長ペースの鈍化などを通じて押し下げ方向に作用するとの見方を示した。
植田総裁は、関税政策などで大きな動きがある場合には中心的な見通し自体も変わり得ると指摘。それが将来の金融政策の動向にも影響を与えると述べた。
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