- 2025/05/16 掲載
再送金融政策は当面現状維持が適当、米関税の影響を懸念=中村日銀委員
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Takahiko Wada
[16日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は16日、福岡市で行った講演で、現時点では米国の関税政策の影響が広く懸念され、企業業績や設備投資、賃上げの状況などを丁寧に把握していく必要があるとして、金融政策は「当面は現状維持が適当」と述べた。
不確実性が極めて高くなっている状況下では「経済の回復状況に応じた慎重な金融政策運営が適当」とし、成長率が鈍化する中で利上げを急ぐと、タイムラグを伴って消費や投資を抑制しかねないと警戒感を示した。
中村委員は1月の利上げ時に唯一反対票を投じるなど、政策委員の中で最もハト派に位置づけられる。
講演では、米国の関税政策発動により、日本経済への下押し圧力が「強まってきている」と述べた。「国難にもなりかねない米国の関税政策の不確実性の高まり」と表現し、関税の影響次第では「積極化してきた賃上げモメンタムが低下する可能性がある」と述べた。米中の通商交渉に一定の進展がみられたものの「今後の経済動向に注意が必要な状況は変わらない」と話した。
また、物価上昇や節約志向の影響などにより、個人消費は「力強さに欠けている」と述べた。
<粘着的な賃金インフレのリスクは「まだ高くない」>
中村委員は、米国の金融・通商政策、海外経済、為替の動向などは日本の経済・物価に影響を与えるので考慮する必要があるが「産業構造の変化や人口動態によって低成長・低収益化した経済の回復状況に応じて、中長期的な視点でわが国のファンダメンタルズの向上に資することが、金融政策運営にとって大変重要」と語った。
大企業は、1人当たり営業利益がバブル期の約2倍に増加するなど好調で、今後も高い賃上げ率を継続すると見込まれるものの、多くの雇用を抱える資本金1000万円以上5000万円未満の「小さめの中小企業」では、1人当たり営業利益が大企業より大幅に少ないなど「稼ぐ力」の強化が遅れており、「持続的な賃上げのハードルは引き続き高い」と話した。
物価面では、一般サービス価格が2%を約半年下回っているなど「物価をスパイラル的に押し上げる粘着的な賃金インフレの状態に陥ってしまうリスクはまだ高くない」と述べた。
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