- 2025/11/19 掲載
アングル:米政府閉鎖解除で統計発表再開、12月利下げ正当化は困難か
[ワシントン 18日 ロイター] - 米政府閉鎖解除に伴って、一時停止していた公式統計発表が再開される。12月9-10日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げすべきかどうかタカ派とハト派の意見が割れている連邦準備理事会(FRB)にとっては、待望の新たな判断材料を入手できる。
このFOMCまでに雇用や物価、消費、経済成長などに関するデータをどれだけ得られるかはまだ分からない。17日時点で労働省労働統計局が9月雇用統計を20日に公表すると述べたが、ホワイトハウスは10月雇用統計には一部の項目が盛り込まれない可能性があると説明。11月雇用統計も政府閉鎖の影響で集計が遅れている。
ただ金融政策運営を巡る論点は明確になっており、19日に発表される10月FOMC議事要旨は、物価高止まりが依然顕著で当面利下げを見送るべきか、それとも雇用の伸び鈍化を理由に金融緩和を優先すべきか、というFRB内で浮かび上がった対立の構図をより詳しく示してくれるだろう。
ウォラー理事は17日に「インフレ加速、もしくは期待インフレの著しい上振れを心配していない。私が重視するのは労働市場で、数カ月にわたる軟化を経て、9月雇用統計や今後数週間のデータが(12月FOMCでの)追加利下げする態勢が整っているという私の考えを覆すことはない」と発言した。
一方ジェファーソン副議長は、現在の3.75-4.00%という政策金利は経済物価に刺激的でも抑制的でもない「中立金利」に近づいている公算が大きく、利下げは「ゆっくり」進めるべきだと主張している。
FOMCメンバーを見渡すと、トランプ大統領に指名された数名の理事が追加利下げを唱え、何人かの地区連銀総裁がインフレ退治に強硬な姿勢を見せる構図が鮮明だ。もっともそうした対立を強調すると、利下げの具体的なタイミングや経済物価の方向性を確認する上であとどの程度のデータを見極めたいかといった点の各メンバー間のより小さな差異を覆い隠してしまうかもしれない。
<来年に持ち越し>
パウエル議長が10月FOMC後の会見で、12月の利下げは既定路線とは程遠いと述べたことや、最近のデータを受け、市場では一時かなり確率が高いと想定していた12月利下げに懐疑的な見方が広がっている。
9月に公表されたFOMCメンバーの見通しでも年末の政策金利は3.50-3.75%と現行を25ベーシスポイント(bp)下回っていたが、それ以降一部の政策担当者の物価上振れ懸念が増大した。
来年FOMCの投票権を持つクリーブランド地区連銀のハマック総裁は先週、物価の高止まりに改めて言及。「(物価上昇率を)2%に戻すことがわれわれの信頼性にとって重要だ」と語った。ハマック氏は最近、インフレリスクを理由として追加利下げを急ぐべきでないとの論調を一層強めている。
パウエル氏にとっては、こうした内部の溝や公式データに非連続性が生じる可能性を踏まえると、FOMCの合意形成は難題になる。そこで妥協の産物として、12月FOMCで利下げを決める代わりにその後しばらく政策変更しないと示唆するか、12月の利下げを見送って追加利下げはデータ次第だと指摘する方針になるかもしれない。
12月FOMC後に公表される最新の経済物価見通しは、どちらの道を選んだ場合もその裏付けになる可能性がある。
とはいえ政策担当者が今はっきり目にしているのは。物価上昇率が過去1年ほとんど変化せず、引き続き目標の2%を1ポイント前後上回っている光景だ。
SGHマクロ・アドバイザーズのチーフ米国エコノミスト、ティム・デューイ氏は「FOMC内のタカ派や中間派、また以前のハト派からさえ(12月FOMCまでに入手可能な)データは利下げを正当化してくれる公算は乏しいとみなす声が増えつつある。彼らは物価上昇率が目標に回帰するとの確信を得たがるとわれわれは考えている」と記し、追加利下げは来年に持ち越されそうだとの見方を示した。
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