- 2025/11/21 掲載
鴻海とOpenAI、AIデータセンター向けハードウエアの設計・開発で協力
米国内サプライチェーンの強化とトランプ政権の関税回避の狙いも
ビジネス+IT
鴻海によれば、この初期合意にはハードウエアの購入義務や具体的な金銭的コミットメントは含まれていない。一方でOpenAIは、鴻海が設計・製造するシステムに早期にアクセスし、その性能を評価できるほか、必要に応じて購入できるオプションを持つ枠組みとなっている。
この提携により、世界最大のEMSである鴻海は、大手AI企業が必要とする計算資源の規模や仕様に関する知見を得て、高度な大規模言語モデル(LLM)の要件に合わせたサーバーラックや周辺機器の製品設計に反映する方針を示したと報じられている。
製造は鴻海の米国内工場で行われる予定であり、対象にはケーブル、電源装置、ネットワーク機器などのデータセンター用コンポーネントが含まれる。ロイターは、米国内で生産することでサプライチェーンの強化と、トランプ政権による追加関税の可能性を回避する狙いがあると伝えている。
鴻海は同時期の取材で、今後3?5年間にわたり年間20億?30億ドルをAI関連に投資する計画を明らかにしており、年間およそ50億ドルと見込む設備投資の過半をAIが占めると述べている。またクラウド・ネットワーク事業(AIサーバーを含む)が2四半期連続で消費者向け電子機器事業の売上を上回っているとされ、AIインフラ関連事業へのシフトが進んでいる。こうした投資方針と並行して、OpenAIとの協業が進められている。
OpenAI側では、サム・アルトマンCEOが、同社が今後30ギガワット規模の計算資源を整備する計画を掲げており、総投資額は約1.4兆ドルに達するとの見通しを示していると報じられている。今回の鴻海との提携は、こうした大規模な計算インフラ拡張を支えるハードウエア設計・供給網の一部を担う位置づけとされている。
同じ20日、鴻海は米アルファベット傘下のロボティクス企業Intrinsic Innovationと、組立や検査、機械操作、物流など幅広い製造工程を対象に汎用ロボットと自動化ソリューションを展開するための合弁事業を立ち上げることも明らかにした。欧州委員会は既に両社の合弁会社設立を競争法上承認しており、今回の発表はその事業展開に関する具体的な動きと位置付けられる。
鴻海がNVIDIA向けサーバーなどを手がける主要サプライヤーとしてデータセンターブームの恩恵を受けており、今回の提携によりAIおよびデータセンター市場での役割をさらに強める可能性がある。他方でOpenAIにとっては、米国内製造によるサプライチェーンの安定化と関税リスクの低減を図りつつ、急速に拡大する自社サービスの計算需要に対応するためのハードウエアオプションを確保する動きとなっている。
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