- 2025/11/18 掲載
なぜPoCで断念…?「たった1カ月」で生成AI導入、パナソニックが教える「3つの秘訣」
連載:マスクド・アナライズの生成AI最前線
AIスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスについてSNSによる情報発信で注目を集める。現在は独立して、イベント登壇、研修・セミナー開催、書籍執筆、企業向け生成AI・ChatGPTの導入活用支援などを手掛けている。支援実績は北海道庁、日立製作所、JR西日本、シーメンスヘルスケアなど。著書に「会社で使えるChatGPT」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」がある。
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前編はこちら(この記事は後編です)
PX-AIを「たった1カ月」で提供できた秘訣とは
(マスクド・アナライズ)──生成AIを導入した企業では、導入後に利用が伸び悩む問題があります。パナソニックグループでは、どのような対策を行っていますか。パナソニック オペレーショナルエクセレンス 橋川 昌和氏(以下、橋川氏):まずパナソニック ホールディングスのグループCEOである楠見 雄規と、グループCIO、グループCTROの玉置 肇が「生成AIによる業務効率化やプロセス変革を進めていく」と社内外に向けて繰り返し発信しています。おかげで従業員としても「生成AIを使っていいんだ」という機運が高まっていると肌で感じます。
情報システム本部ビジネスITソリューション部 エキスパート
橋川 昌和氏
玉置はCIOとしてグループ全体の情報戦略をまとめる立場であると同時に、グループ全体の変革を指揮する新たな役職「CTRO(Chief Transformation Officer)」に就任しています。また、我々が所属するパナソニック オペレーショナルエクセレンスの社長でもあります。
生成AIを含めた経営改革を推進する姿勢を見ても、グループ全体から「まずは生成AIを使ってみよう」という意欲が現れています。また、PX-AIを開発から約1カ月程度という短期間で提供開始できたのも、玉置からの支援によるものです。
一方で、パナソニックグループを構成する各事業会社において、それぞれ戦略や独自性もあります。たとえばパナソニック コネクトは独自の生成AIとして「PX-AI」ではなく「Connect AI」を展開しています。Connect AIは安全性に加えてスピード感も重視しており、GPT-5を発表直後から使えるようにするなどの特徴があります(PX-AIも現在GPT-5を利用できます)。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス 井上 幸則氏(以下、井上氏):グループ全体で生成AIを利用してもらうには、従業員の理解度が異なる点も把握しなければいけません。その中で使いやすさを重視しつつ、意見を反映することが大事だとわかりました。そこで自動で作業を行ってくれるAIや調査依頼に基づいてレポートを作成してくれるといった機能を試験的に導入、体感してもらい、現場の反応を見たいと考えています。
──導入後の利用推進において、トップの意思表示が重要であることがわかりましたが、それ以外にはどんな点が重要になるでしょうか。
橋川氏:社内コミュニティを運営しており、現時点ではTeamsで1万8000人が参加しています。社内には幅広い人材がいますし、困っている人を助けてくれる人も多いです。その中でも、変革を推進するため自ら手を挙げてくれた社員が「PXアンバサダー」として活躍してくれています。自分のノウハウを惜しみなく提供しながら、グループ全体から寄せられた質問にも積極的に答え、現場の課題解決を支援してくれたりしています。
質問の内容は「どうやって使えばいいですか?」という初歩的なものから、生成AIの最新情報、業務における困りごとなど幅広いです。あくまでコミュニティは自主的に参加してもらう位置づけです。強制すると自分ごとではなくなります。この自発的に参加してもらうことは、コミュニティのこだわりでもあります。こうした気軽に質問できる環境を実現できたことが、導入推進において非常に役立っています。 【次ページ】生成AI導入で失敗しない「3つの秘訣」
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