- 2020/09/07 掲載
アングル:米シェール企業買収ブーム、コロナ禍で「負の遺産」
<さらに150社が破綻の可能性>
希望の光はほとんど見えない。突如として世界の移動を止めた新型コロナウイルス危機により、燃料需要はあまりに短期間で歴史的な急減に見舞われ、業界は今なおそのショックと格闘中だ。石油企業は予算を削ってキャッシュの確保と生き残りを図っており、企業買収どころではない。
つまり、ディストレスト資産(価値が落ちた資産)を買う資金力や意欲を持ち合わせた企業はほとんど残っていない。ライスタッド・エナジーによると、原油価格が現水準近くで推移した場合、2022年末までに北米の石油・ガス生産企業があと150社破綻する可能性がある。
シェール革命により、米国は世界最大の原油生産国となり、ピーク時の生産量は日量1200万バレルを超えた。生産の伸びは幾度も予想を上回ったが、投資リターンが予想を超えることは珍しかった。
それでも投資家は、将来のリターンを夢見続けた。第1次シェール・ブームが幕切れとなった14年から16年の石油価格急落の後には、また買収の波が押し寄せた。
そして今、16年から19年に買収されたシェール資産の多くが、今や原油価格の低落によって塩漬けになっている。買収・合併(M&A)に詳しい関係者6人が明らかにした。
<世界にあふれかえる燃料在庫>
エネルギー調査企業ウッド・マッケンジーによると、第2次シェール・ブームのこの間に実施されたシェール関連の土地買収およびM&A案件では、規模上位50件中少なくとも31件は、北海ブレント油の価格
生産量はにすでに日量100万バレル以上減っており、一方で価格の持続的上昇を見込める材料も乏しい。燃料在庫は世界中であふれかえっており、ロックダウン緩和後も燃料需要回復の足取りは遅い。
投資家はエネルギー株を敬遠。米S&P総合500種株価指数が今月、過去最高値を更新したのを横目に、S&Pエネルギー株指数<.SPNY>は年初から40%下落している。
英BP
オキシデンタルは昨年5月、米シェブロン
エネルギー関連M&Aの弁護士は「オキシデンタル(の財務)は健全で、自らが買収の標的になる可能性さえ秘めていたが、買収によってはるかに巨大で不健全な企業を誕生させてしまったようだ」と語る。
<見えない出口、資産投げ売りも>
お荷物となった資産と土地を抱える企業にとって、出口戦略は乏しい。オキシデンタルなど一部企業は資産を売って債務返済に充てようとしているが、買い手はほとんど見当たらない。損失覚悟で資産を処分せざるを得なくなる企業もありそうだ。
わずかながら成立した案件もある。その中での最大案件として、シェブロンは米ノーブル・エナジー
オキシデンタルは最近、360億ドルの債務を何とか減らすため、コロラド、ユタ両州の資産を売る方針を示した。
カール・マークス・アドバイザーズのマネジングディレクター、ブロック・ハドソン氏は「(企業は)実際に掘削して利益の出る実資産ではなく、成長性に注目し過ぎた。今のありさまを見ると、高い金額を支払い過ぎたと言うほかない」と語った。
今年後半には石油企業の破綻が加速しそうだ。法律事務所ヘインズ・アンド・ブーンによると、7月までに破産申請を行った石油・ガス企業は32社。以前は2014年の石油価格急落を受け、15、16年に約100社が破産申請を行っている。
(Jessica Resnick-Ault記者、Dmitry Zhdannikov記者、David Gaffen記者)
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